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怖かったド深夜

 豆苗は順調に成長してるのだけど、なぜか昼間の方がよく伸びる。午前中に水を入れ替えるからだろうか。一晩経ってからよりも、夕方になってふと目をやった時の方が伸びてる気がするのだ。

 今日はマジで何も無かった。強いて言うならチョコレートを二袋も食べた。
 昼寝もしないしテレビも見ないのに、なぜか時間が過ぎていくことがある。大抵はちょっと考え事をしている時で、電車でぼーっと考えていていつの間にか終点に着いていることも多い。
 そのせいで各駅の反対ホームを素早く移動する機敏さと、タクシーの止め方を覚えた。

 一度だけ、真夜中に電車を乗り過ごして地図を見ずに二駅分歩いて帰ったことがある。その日はタクシーが捕まらず、運の悪いことにスマホの充電も切れてしまい、住宅地なので泊まれる場所もなく、仕方ないので1時間歩いた。

 途中でタクシーを見つけようと思ってなるべく大通りを選んでたのだけど、出払っているのか全然見掛けない。たまに見掛けても他に人が乗っていて走り去ってしまう。
 30分ほど歩いて、これはもう徒歩で帰ることになるなと思っていたら、視線の先でタクシーが止まり、表示が「支払」に変わった。

 私は内心喜びながらそのタクシーに向かったのだけど、様子がどうもおかしい。全然乗客が降りてこない。

 支払いに戸惑ってるのかと目を凝らすと、運転手と乗客がうっすら見えた。なぜか2人とも微動だにせず、じっと前を向いているように見える。何だろうなと思いながらそのまま歩いていたのだけど、ふとその2人が自分を見ているように感じた。

 そんなことは無いと思うのだけど、死ぬほどビビりの私は一気に怖くなり、それ以上タクシーに近づけなくなってしまった。立ち止まるのは変だと思い、近くの建物の陰に入って様子を伺う。
 正確な時間はわからないけど、少なくとも1分以上待っても乗客が出て来ない。いよいよ怖い。何か事件が起きていたのかもしれないけど、怪奇現象か何かかもと思うと足が竦んで動けなかった。

 そんな時、後方から自転車が走ってくるのが見えた。私はそれを見ると、建物の陰から飛び出して走り出した。タクシーの方を見ないように俯いて走ったので、後ろから来ていた自転車はさぞ驚いただろう。

 道を曲がるまで、後ろは振り向けなかった。なんならその後コンビニを見つけるまでひたすら歩き、コンビニで煙草を買って火をつけてからようやく自分の来た道を見た。
 夜道を歩いていてあんなに怖かったのは初めてだった。

 あんなのどう考えてもホラーゲームの導入である。

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