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この街の向こうのその向こう

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ひとりの少女の成長と再生の物語。
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記事一覧

この街の向こうのその向こう【22の話】少女と少女

「うぜえ。って顔には書いてあるみたいだけど。」 透き通った声がした。 声のする方を振り返…

この街の向こうのその向こう【21の話】雑踏

どれくらい時間が経ったのだろう。 夢中になって、あっちの棚、こっちの棚と次々に本を手に取…

この街の向こうのその向こう【20の話】本をめくりながら

久しぶりの本屋は、少しだけ心がおどった。 雑誌も、分厚い新刊も何もかもがザワザワとして落…

この街の向こうのその向こう【19の話】外の世界

長いことぼんやりしていた気がした。 時計は11時を少し回ったところだ。 (ずっとここにい…

この街の向こうのその向こう【18の話】生きる選択

疲れているんだ。 何に疲れているのか、何だかいろいろグチャグチャで雪美にもわからなかった…

この街の向こうのその向こう【17の話】独りごと

最初から行くあてもなかったが、こういう時に頼る人間がいないことを確認する。 手持ち無沙汰…

この街のむこうのその向こう【16の話】行くあて

油断すれば雪美自身も映像の中へとかき消されてしまいそうで、もっと深く痛めつけなければ、こちら側に自分を繋ぎとめてはおけなかった。 傷つけていなければ、もっと酷いことに襲われるような気がしていた。 (追われている犯罪者みたい…) そんなことを思いながら、うっすらとオレンジの味がしている水をストローからするするとすする。 氷が解けたのと同様に時間が過ぎてくると、家を飛び出した高揚感は薄まってくる。 (面倒くさ…) 面倒くさい、という感覚はとてもやっかいだ。 面倒くさ

この街のむこうのその向こう【15の話】思う

携帯は多分このまま使える。 今までだって2日くらい家を空けることは良くあった。 このまま…

この街のむこうのその向こう【14の話】下車してみれば

いつもは早朝から都内へと向かう学生やサラリーマンで溢れている電車も、隣の車両にひとり人が…

この街の向こうのその向こう【13の話】生まれた日

雪美。 雪の降る日に生まれたから雪美。 それがあたしの名前だった。 「雪美が生まれたのは…

この街の向こうのその向こう【12の話】旅立ち

「お世話さまでした」 会計の受付で申し訳なさそうな素振りで頭を下げていた母は、病院を出る…

この街の向こうのその向こう【11の話】出会い

その日は、手にしたカッターで、いつもより深く深く腕の皮膚をなぞったらしい。 らしい…とい…

この街の向こうのその向こう【10の話】欠けているなにか

傷痕が消えていく前に またその傷をなぞる。 いつしか同級生の間では あいつはキモいが あい…

この街の向こうのその向こう【9の話】行き詰まりのなかで

あたしは 傷だらけだった。心も身体も。 中学3年になる頃、初めて売りをした。 それは別にどうということもなく私は相変わらず何も感じなかった。 むしろ、丁寧にあたしの身体を扱って、その後にお金をくれるおじさんたち…おじさんと呼んでいいいのか迷うくらい若い男もたまにいたけど、は私を傷つけようとしているわけではなかったので、かえって息抜きな時間だった。 一回で5万くれる人もいて、割のいいバイトだと思えば何てことなかった。売りで稼いだお金は貯めていた。一日も早く家を出られる