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持たざる者たち

オーストラリア、フィジー、インド、サモア、ニュージーランド、そして、日本。この試合、三菱重工相模原の登録メンバーは多種多様な出身地で溢れていた。アジア国籍枠や帰化選手をフルに活用して揃えた選手たち。彼らはトップイーストを首位通過し、久々の表舞台返り咲きに燃えている。

そんな相手と対峙したのが、オール日本人選手の九州電力だった。かつてはトップリーグで活躍した九州の雄も、2011年以降は社会情勢の大きな変化によって、ラグビー部の強化になかなか乗り出せずにいる。それでも、大学時代に活躍した非凡な才能を揃えて、トップキュウシュウを首位通過したのであった。

異なる地域の、異なるバックグラウンドを持ったチーム通しの交錯。この結果は戦前の予想を大きく覆す、持たざる者たちの奮戦が光ったゲームとなった。

九州電力が三菱重工相模原より優れていた点。それは3つにまとめることができる。

①タックル

②SO荒牧のロングキック

③モール(攻守両面で)

裏を返せば、それ以外で優れている要素を見つけるのは難しかった。個の力の総和であれば、間違いなく三菱重工のポイントが高くなる。

しかし、試合は一方的にはならなかった。九電の選手たちの低いタックルが、敵のペネトレーターたちの前に立ちはだかる。繰り返される落球に、緑色の応援席からのため息が相次いだ。

前半終わって0ー7。予想外のロースコアは、九電の選手たちに自信を植え付けるには充分だった。

前半は相手のボール支配率が圧倒的だったこともあり、なかなか攻撃に転じられなかったが、後半に入ると九電は持ち味を発揮し始める。荒牧のロングキックを効果的に用い、敵陣でプレーする時間を増やす。オーソドックスに外へ展開する戦法も、これならば有効度が増す。後半9分に磯田がトライを挙げると、20分には強力なモールでインゴールゾーンを突き破る。遂に逆転。アップセットまであと一歩。

焦りだした三菱重工も強引な突破を繰り返す。必死に九電も対抗するが、次第に陣地は後退。特にロドニー・デイヴィスの執拗なゲインには手を焼いた。後半30分過ぎ、インゴール・ゾーンに突入したデイヴィスに見舞った一撃(結果はノックオン!)は熱かった。

しかし、奮戦もここまで。九電自陣5mのスクラムはアーリープッシュとなってしまう。三菱重工はここで得たスクラムをしっかり活かし、最後はWTBの椚がトライ。残り4分でスコアは12ー12。流れは変わってしまうのか?

いや、弱者はしたたかだった。守備で奮闘していた早田がこの日最大のゲインを見舞い、一気にチャンスを作り上げる。素早い集散で攻撃ラインを築き、最後はFB加藤がポスト中央に飛び込む。電光石火のノーホイッスルトライ。最後まで自らの武器を信じ、それをピッチで具現化し続けた九州電力に、勝利の女神は微笑んだ。

有する数少ない資源を最大限活かし、少ないチャンスを全てものにする。九電が我々に見せたものは、教科書通りの「弱者のラグビー」だった。

「弱者のラグビー」にはいずれ限界が来る。より強いチームに当たれば当たるほど、厳しい現実が待っている。

それは理解しつつも、僕は九州電力はぜひトップリーグに上がって欲しいと思っている。彼らがこの試合で見せた、統一された熱と意識は、目先の強化に浮かれている多くのチームに何かを与えてくれるはずだ

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)