ピースオブエイトの距離適性について(谷川岳S更新版)

谷川岳Sで1年1か月ぶりの勝利、おめでとうございます。多くの方から「口取りして浮かれてんじゃねぇ、win5外してざまぁ」等のご声援をいただき、ありがとうございます。約束どおりマイルで勝ったからnote書きます。
初めて読んでいただく方もいるかもしれないので言っておくと、ピースオブエイトに関しては衝撃のデビュー戦以来、かなり熱い熱量を持って、その強さをブログやnoteに書いてきたんですね。(過去記事は以下のとおり)

1 新馬戦ラップ考察

2 アルメリア賞ラップ考察からの距離適性推測

3 ダービー前に再度距離適性についての考察(2とほぼ内容同じ)

出資馬ピースオブエイトについてここまで掘り下げているマニアックな人間はおそらく日本で私だけだと思われる。一応書いた側にも責任があるとは思っていて「ピースオブエイトはマイルの馬です。ダービーでは記念馬券しか買いません」と言っておきながら、マイルでまさかの3連敗。GⅡ4着、GI9着はまだしも、洛陽S(リステッド)で5着となり「ありえない、弱い、嘘つき」と多くのお叱り、叱咤激励をいただいた。
まずは谷川岳S更新の前に、私がダービー前に書いていた(もっと言うとアルメリア賞勝ち後に書いていた)「【コラム】ピースオブエイトの距離適性について」の一部を引用する。私自身のピースオブエイトの距離適性の見解は当時から何も変わっていないので、当時読まれていた方は読み飛ばしていただきたい。
----------------------------------------
期待どおり、ピースオブエイトがアルメリア賞を勝ってくれたので、この記事を出すことができる。

まずはアルメリア賞の回顧から。
レースは見ていただくとして…
ゲートは不安があったとおり、やや立ち遅れたものの新馬戦よりはマシだった。新馬戦と同じで二の足が早く、楽に前に取り付けた。岩田望来騎手も語っていたとおり、「本当はもう一列前で競馬したかった」が、先行争いが激化し、共倒れになることを避ける形で、騎手が下げて、新馬戦より後ろの5番手追走となった。この下げた判断により馬が掛かる仕草を見せ、しばらく騎手が抑える格好となっていた。新馬戦とは違う競馬で鞍上が我慢させたこともあり、確実に次に繋がる内容となったことは好印象だ。

次にラップを見ていきたい。

12.7 - 10.7 - 11.7 - 12.2 - 12.1 - 12.0 - 11.6 - 11.2 - 12.1

勝ちタイムは1.46.3。11R大阪城Sの勝ちタイム1.44.8はかなり早く、そのレースと単純にタイムのみ比較すると9着相当。斤量56kgを考えれば、それなりに能力を裏付けた一戦といえる(できれば勝ち負け級の時計が欲しかったがあの掛かり方では厳しい)。道中59.4は少頭数にしては流れた方で、59.4-46.9の平均ペース。位置どりの有利不利ないフラットな流れ、直線向かい風、イン有利馬場でやはり好位勢が有利なレースだったと言える。ここで5/7番手からの差し切り勝ちは見事と言うほかない。個人的にはやや不利のあったジュンブロッサムとの着差はもっとつけてほしかった思いがあるが、8か月ぶりもあったし、道中掛かっていたことも影響しただろう。岩田望騎手も「調教の感じからもっとビュッと切れるかと思ったが〜」と語っている。まあ共同通信杯0.6差4着馬なので、それなりに敬意を表すべきだろうか。


さて、今回の本題はピースオブエイトの距離適性についてだ。アルメリア賞を勝ち、一躍クラシック候補と書かれている方も多いが、私は前回のブログでも書いたとおり、ピースオブエイトの距離適性はマイルにあると思っている。理由はいくつかあるので列記していこう。


①新馬戦→アルメリア賞のレース内容
新馬戦は前半5F63.4というスローペース。ここで末脚の持続力を繰り出し加速ラップで快勝。この一戦だけで距離適性云々は語れないが、次走アルメリア賞は前半5F59.4とそれなりに流れ、前走から4秒も早くなっているが、このペースに難なく対応し、更には掛かって前に行きたがる素振りを見せるほどで、スピード能力は相当に高いものがある。一方で、上がり3Fは11.6-11.2-12.5とラストの坂を考慮しても明らかにラップを落としてしまった。視覚的に見ても坂でジュンブロッサムと明らかに差を詰められている(坂上ではまた同じ脚になっている)ので、坂が苦手ということもあるかもだし、8か月ぶりで前半掛かった影響もあったかもしれないが、個人的にはL1の12.5は気に入らない時計だった。


②血統
父は言わずと知れたスクリーンヒーロー。アルゼンチン共和国杯からJCを勝ち、代表産駒はモーリス、ゴールドアクター、ウインマリリンなどがいる。中長距離で実績を残している産駒も多いので、距離適性はそこそこ持つと思われている方も多い。しかし、ピースオブエイトに最も血統背景が近い活躍馬は母系にSadlersWellsを持つモーリスである。出資の際もかなり意識したが、モーリスとはノーザンダンサークロスが同じ15.63%、HailtoReasonクロス6.25%も同じ。ピースオブエイトはそこにDanzigクロスも内包しているというところで、モーリスより更にスピードの増強が強い印象だ。また、母の全兄Approveは英国で芝1000、1200の重賞勝ち。母父が名スプリンターOasisDreamで半姉のZendaはかのスーパー種牡馬Kingmanを生み出している超一流のスピード一族である。母系はとにかくヨーロッパのスピード色が満載の血である。


③馬体
少し馬体を見れる人なら、ピースオブエイトが決して中長距離向きの馬体ではないのは分かっていただけるはずだ。スクリーンヒーローには似ておらず、首差しは太く、筋肉質な馬体であり、母系の血が色濃く現れている。走法も首が高い分、ストライドがそこまで伸びず、機動力に優れたピッチ走法である。なので、小回りのコーナーリングでも減速せず、小倉1800で加速ラップが踏める。今は相手が弱いので、能力でカバーしているが、将来的には確実にマイル前後だと思うし、これ以上距離が伸びて良さが出るかは個人的には疑問符だ。


というわけで、今後ピースオブエイトにはマイル路線を極めていただきたいと思っている。サドラー持ちスクリーンヒーローのモーリスをノーザンファームしがらきで鍛えていたのは非常に心強いし、晩成血統なのでまだまだ伸び代も十分だ。
(抜粋ここまで)
----------------------------------------

見解については何も改変しておらず、おそらく、「ピースオブエイトのベスト距離はマイル前後、坂は苦手」という内容をアルメリア賞勝ち後の時点で言及していたのは日本で私だけだと思う。
コラムではこの後に「ピースオブエイトにはダービーよりNHKマイルが向いている」という内容を書いた。ダービーの結果はご存知とおり、距離云々の前に初輸送による馬体減、デシエルトによる空前絶後のハイペース、ジャスティンパレス(デムーロ)による派手な進路妨害などもあり、最後は藤岡佑騎手も追うのをやめ(私は好判断をしてもらったと思っている)、しんがり負けを喫した。

さて、今回はピースオブエイトのダービー後のレースを振り返りたい。ただ一走一走ラップやら道中の動きを振り返ると途中で私が力尽きるし、読者の方も仲良くさせていただいている一部の熱狂的フォロワーさんすら読まない状況になるので谷川岳S以外は短評とさせていただきたく。

小倉記念 5着
私としては平坦◎、距離×としていたし、何よりピースオブエイト53、ジェラルディーナ54の斤量では勝てるわけないと思っていたが、中団からレースを進め、かなり頑張った5着だった。実はこの小倉記念はかなりのハイレベル戦で、2着ヒンドゥタイムズは小倉大賞典勝ち、3着ジェラルディーナはエリ女勝ち。その2頭に離されたとはいえ、距離が長いながら0.5差は高い平坦適性を再認識した結果となった。

富士S 4着
当時の見解から府中マイルは非急坂○、距離◎でドンピシャの条件かつ、「ダービーよりNHKマイル派」だった私はNHKマイル覇者を倒して自身の理論を証明するべく、単勝50倍近かったが過去最高の自信度で馬券勝負を敢行した。スタートは遅くなかったが、激しく右にヨレてしまい出脚がつかない格好になった。短縮効果もあり、控えても折り合いを欠くことなく最後の直線を迎えたが、セリフォス、ソウルラッシュにはキレ負け、ダノスコには出遅れの差がそのまま着順に反映された形となり、0.4差の4着。この時のピースオブエイトの上がり3Fは驚異の33.5。自身最速の上がりで、折り合えて急坂がなければ、とんでもない末脚が発揮できる証明にもなった。ちなみに筆者の「NHK出たら勝ってた論」は完全に論破され、SNSには罵詈雑言の嵐かと思いきや、「本当にマイルベストだったんですね」「ピースのマイル適性を見抜いていて凄い」などと優しい言葉をかけてくださって、ピース会員さん達は最高だなぁとすっからかんになった財布を眺めて涙を流した記憶がある。この時のトラウマで富士山を見ると富士Sの負けを思い出し、ゴルフの最中に動悸が止まらずOBを打ったこともあった。

マイルCS 9着
前走先着された3頭に加え、シュネルマイスター、ソダシ、ジャスティンカフェなど自身も評価している馬達がこぞって出走しており、あまり大きな期待はしていなかった(できなかった)。調教でCデムーロがヤリすぎてしまい、過去最高時計を計時。競馬予想tvでおなじみの井内さんなど調教派の予想家が激変した調教内容をこぞって高評価。しかしその調教ヤリの結果、当日パドックで前進気勢がみなぎりすぎていて、ゆったり歩けていた富士Sとは雰囲気が一変。入れ込みがキツく、正直ダービーの二の舞も覚悟した。結果は、抜群のスタートで先頭も、途中でファルコニアに絡まれ力んでしまった。坂下までは粘っていたが、苦手な坂で力尽きた格好の0.5差9着。完敗ではあったが、無抵抗敗戦ではなかったので、この結果でいよいよ「ピースオブエイトってマイルなら結構強いのでは」という評価が世間に知られることになってしまった。(未だ回収できてない焦り)

洛陽S 5着
478kgと過去最高馬体重更新。GI9着が評価され、重賞勝利の実績もあってか、大して賞金積んでないのに57.5のトップハンデ。レースは2番手追走も直線やたらとシャイニーロックが左に張ってきて、その影響で外のジャスティンスカイにぶつけられるなどスムーズさを欠き、苦手な坂で離されるという残念なレースとなった。結果論だがシャイニーロックがマイラーズC4着となったように普通に強く、その馬に妨害、接触、坂苦手、斤量など、悪条件が重なりすぎた。

谷川岳S 1着
ダービー卿CT除外でここへ。直線平坦◎、距離◎と斤量は+1ながら、これ以上ない条件が揃ったので、筆者も自信を持って馬券大勝負+新潟口取り遠征を敢行。ゴール前絶叫。

【ラップ】
12.5 - 11.0 - 11.7 - 12.2 - 12.3 - 11.7 - 11.4 - 12.6

チーク着用。抜群のスタートも直後にアナゴサンに並ばれたとこで馬が反応し、吉田隼騎手が抑える動き。やはり前進気勢が強くなっていて、マイルCSと同じだったが、アナゴサンが控えてくれたことにより、入りの3Fを35.2に抑えられたのは大きかった。ファルコニア不在のマイルCSと考えてよく、道中一人旅の持続ラップでこれに開幕週重馬場+直線向かい風とあっては後方勢はなす術なし。他馬に追い込まれなかったので、止まってないように見えたが、L1は12.6もかかっており、ペースと馬場負荷、そして直線向かい風でほぼ全馬止まっていたと考えていいだろう。更に上を目指すにはL1が物足りない時計で、抜群スタート+インベタ逃げ競馬で着差0.4秒は個人的には不満なパフォーマンスであった。(まだ上があるという意味で)

【馬体重】
466kg(-12kg)は少々面食らった。輸送減りする馬であり、ここ2戦は阪神での競馬だったが、470→478。輸送で減った(と思われる)富士Sの馬体重と同じではあるが、3歳→4歳の成長分もあると考えていたので、2桁減はどうなのかと思っていた(私がパドックで見た限りは問題なかったので、馬券は大勝負したが)。奥村豊先生は5/3付更新で「毎日杯や富士Sと同じだったのでこのくらいがベストなのかも」と発言しているが、個人的には成長分込みで470台〜がベストではないかと思っているし、まだまだ成長する余地はあるはず。

【関係者コメント】
クラブコメントは転載ができないので、箇条書きでまとめる。
吉田隼人騎手
・ハナに立つプランではなかった
・チークPをつけて前向きさが出てた
・まだ若く、ゲートでソワソワする。そのあたりが安定すれば、レースでも安定して走れる
・勝ちにいく競馬で勝てたし、大きいところでもやれる

奥村豊調教師
・チークPを着けたが、返し馬から効果がありすぎた
・絶対勝たなければいけないと思っていた
・輸送減りして466kgだったが、過去見てもこのくらいがベストか

吉田隼人騎手の大きいところでも発言は嬉しいが、この馬GⅠ9着なんで、すでに大きいところでもやれているという感覚を私は持ってしまっている笑

【今後について】
谷川岳SのL1の減速を見ても、成長してより母系の血(短距離色)が出ている印象はある。今回は勝つために放棄したが、やはり折り合いを覚える競馬を今後は試してほしいし、チークも外してほしい。前向きさに任せた一本調子な競馬は再現性が低く、ラップの加減速に対応できなければ、更に上のクラスでは通用しない。調教では我慢ができている内容を繰り返しているし、今後もそれを馬に教え込んでいくスタイルで更に上を目指してほしい。過去には短縮ショックがあったとはいえ、折り合って3F33.5を出した馬である。希望ローテは関屋記念→富士SorスワンS→マイルCSといったところか。もう急坂阪神は使わなくてよいかなと思う。何はともあれ、奥村豊大先生の神采配により、出資馬ピースオブエイトが更なる高みへ到達してくれることを祈っている。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?