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パラサイトな私の日常 ①再会

8:30〜17:15きっかり就業
終業の合図と同時に席を立ち
1時間かけて、終点2つ前の田舎駅、
家路につく。
最寄り駅から徒歩5分。
今日も18:21ピッタリに玄関を開ける。
夕飯の支度中の母の「おかえりー」の声
「ワンッワンッ(おかえり!おかえりっ!)」と出迎えてくれる愛犬。
部屋着に着替えたら、愛犬の散歩(家の周辺)に行き、
夕飯を食べて、お風呂に入って、23時までネットか小説を読む。
仕事が休みの日は、ほぼほぼひきこもり。
ここ数年の私のルーティーンだ。
昨日も今日も明日も…同じ毎日。
「なんか…なんかないかなぁ…」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈

翌朝ーーー
いつもの時刻にいつもの駅。
田舎の無人駅から乗る乗客は、私を含めていつも3人。
・・・じゃない。今日は4人いる。松葉杖の男子高校生だ。
3つ先の駅近くに、私も通った地元の高校がある。
この距離だと、大抵は徒歩通学か自転車通学なのだが、
足の怪我で電車通学を余儀なくされたのであろう。
電車がきた。私の前を慣れない松葉杖を駆使して乗車する。
「危ないっ」乗車口でバランスを崩した男子高生を咄嗟に私が支えた。
「すみません…」と恥ずかしそうに俯きながらお礼をいうと、そそくさとまだガラ空きの乗車席にゆったりと座った。
『あ…私のいつもの定位置…』
起点から3つ目の車内はガラ空きで、いつもの乗客はいつも決まった場所に座る。私もその一人だ。男子高生にまんまと定位置を占拠された私は仕方なく、…そして何となく彼から離れた席に座った。
席に着くとイヤホンと小説。お決まりの1時間の通勤タイムの始まりだ。
小説に集中する私に、チラチラと目をやる彼にも気付かずに…。
◈◈◈◈◈◈◈◈

17:30 終業後いつもの電車に乗る。
イヤホンと小説。いつもなら18:15到着に合わせて降りる準備をするのだが
今日はその3つ前の駅「○☓高等学校前」で顔を上げた。このガラ空きの電車内にわざわざ私の前に立ちはだかる影があったからだ。
「今朝は…ありがとうございました。」
松葉杖の彼が、遠慮がちに挨拶をする。
私は慌ててイヤホンを外し
「いえいえ…。その後大丈夫だった?」
「はい…。あの…間違ってたらアレなんですけど………、ユウちゃん…さん??」
「……………。」
確かに私の名は「悠(ゆう)」だけど…。ナゼ、歳の離れた男子高校生が、私の名を知っているのだ??
瞬時に様々な可能性を弾き出したが、答えに辿り着けず
「はぁ…」と鳩が豆鉄砲を食らったような腑抜けな顔で答えた。
「やっぱり!!」そう言って、私の隣に座った彼は、嬉しそうに話し始めた。

→【②12年前】





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