【漫才】『結成秘話』
○井上:あらどうもー井上ですー!
●端島:端島ですー。
二 人:井戸端会議ですよろしくお願いしますー。
○井上:井戸端会議、知ってるよーって人?
●端島:(だまってうなずきながら会場を見わたす。手を上げている人に向かって深めにうなずく)
○井上:あれれーちょっと元気がないみたいだぞ〜。
●端島:ヒーローショー形式なんですね。
○井上:あと38人(キャパ − 手を上げた人数)くらい手を挙げられるかなぁ?
●端島:残り全員に嘘をつかせないでください。
○井上:こらこら、そんなんじゃ出てきてくれないぞぉ〜。
●端島:(軽く斜め下に手を広げて舞台上を示しながら)すっかり出てますけども。
○井上:僕の元気が!
●端島:それもすっかりでてますけどもね。
○井上:(にこにこする)
●端島:すみませんね、僕らそんなに売れてないですから。気になるんです知名度が。
○井上:説明するとね、井戸端会議っていうのは奥様方が井戸のまわりにね、
●端島:うん、辞書的な意味の方訊いてたんですねー。さっき、知ってるよーって上げてくれたお二人がそっちのつもりで上げてないと願いたいですね。
○井上:(前をむいたままきょとんとする)
●端島:この、顔がやかましい男は井上と言いまして、僕は端島と言うんですけども。中学の同級生でね。
○井上:50音順で僕の前が端島くんだったんだよね。
●端島:世の中には僕の知らない50音があるんですかね。
まあね、彼は当時からこんな感じでしたから目立ってましたよ。お笑いが好きでね。
○井上:端島くんも昔からそ↑ん↓な感じだったよね。
●端島:「そん」のイントネーションに引っかかりを感じますけど、まあ僕の方はネクラなタイプで正反対でしたね。
○井上:なんで仲良くなったかっていうとね、普段は帰る方向が真逆だったんだけど、一回だけ帰り道一緒になったことあったのよ。
●端島:ああ、ありましたね、どうしてでしたっけ。
○井上:僕ね、あんとき忘れ物して学校に戻ろうとしてたのよ。その途中でたまたま合流してそこからしばらく一緒の道だったの。
●端島:……僕はそのとき下校中だったわけなので、あなた一回学校通り過ぎてますね。
○井上:(きょとんとした顔で端島を見る)
●端島:いいんですよ。ごめんなさいね(なぐさめるように背中をたたく)。
○井上:でね、最初は気まずかったわけ。あんまり共通の話題とかもなかったし。でもだからって黙ってんのもなーと思って、ためしにちょっとボケてみたの。
●端島:ええ。
○井上:(うれしそうに)そしたら意外にもしっかりつっこんできたわけよ!
●端島:ああ、僕が。
○井上:(うれしそうに)ううん、軽トラが!
●端島:意外ですね。
○井上:(笑顔のまま)思わず飛び跳ねちゃったよ(体をまっすぐ伸ばして後ろ方向に飛び、右半身から床にたおれる)
●端島:(井上を眺めながら)跳ねられて飛んでましたけどもね。再現が忠実ですね。
○井上:(起き上がる)いやー、あんときはびっくりした。魂抜けるかと思った。
●端島:肉体の方は植え込みに頭から刺さって抜けなくなってましたけども。
○井上:(痛そうに右腕を掴む)未だに残ってるもん、さっきの痛み。
●端島:さっきの痛みならそれはそうでしょうね。
○井上:(起き上がりながら)あれはわすれられないな。
●端島:わすれられませんよ。仲良くもないクラスメイトが隣を歩いてきて急にボケたと思ったら次の瞬間植え込みにツッコんでたわけですからね。
○井上:……(端島を見る)
●端島:……(井上を無視する)
○井上:まあね、そんな僕たちなんですけども。
●端島:ええ。
○井上:今日はぜひ戒名だけでも覚えて帰っていただければと。
●端島:まだ無いですから名前にしといてくださいね。
○井上:井上(右手で自分の胸を指す)、端島(右手で横の端島を指し示す)、エターナルペインオブザクラッシュ(右腕を目の前にかっこつけて掲げ、いい声で言う)で、井戸端会議、です!
●端島:自分の相方にだけは痛みに名前付けないでいてほしかったですね。
○井上:いいんだよ!お前にはいつ見捨てられるかわからないけど、痛みとは一生の付き合いなんだから。
●端島:おだまりなさい。
あら5時の鐘。もういいかしら。
○井上:夕飯作らなきゃ!もういいわ。
二 人:ありがとうございましたー。
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