幸せを編む
ある朝目が覚めると、スマホには1件のLINEの通知。
あなたからだ。
なんだかいまだに、どこか現実味を帯びない毎日。
わたしのことを好きでいてくれる人が存在する世界、そんな世界にわたしが生きていられることが、幸せである反面、どこか非現実的な日々だった。
寝起きのうつろな目をスマホに向ける。
今日はあなたとお出かけする日だ。
ここ数日、なんだかわたしの心はもやもやしていた。
どこかLINEの返信がそっけない気がして、「なにかしたかな」「冷められたかな」とすこし不安だった。
あなたに会える嬉しさの傍らで、なんとも言えない複雑な感情が渦巻いていた。
駅に向かうバスの中は、街の中心に向かうにつれて混雑していったが、ある時ひと組のカップルが乗ってきた。
男の子も女の子も大人しそうな子で、なにか話す時にはお互い顔を近づけて話していた。
その姿がわたしの目にはとても幸せそうに写って、愛おしくも感じた。
バスを降りて駅に向かい、駅であなたを待つわたしの心は、いつもとそう変わりなかった。
バスで出会ったカップルのおかげだろうか。
不安は褪せていたが、まだ少しその色を残していた。
あなたと合流して、駅に向かう。
そんな不安の中でも、あなたの姿はとても愛おしかった。
そんなあなたと過ごす休日は、ありふれているけれど煌めいている。
そんな気がする。
あなたは、わたしの心の感情の渦を消してくれた。
あなたの気持ちはなにひとつ変わっていないと、わたしに態度と行動で教えてくれた。
あなたがわたしの手をぎゅっと握る強さも、温もりも、変わっていなかった。
あなたとのLINEのトークルームをピン留めしているのも、あなたの写真を集めてフォルダをつくっているのも、わたしだけだと思っていたのに。
あなたは言葉にしないけれど、あなたもそうしてくれていたんだね。
そんなありふれていて、ちっぽけな幸せばかり。
それでもきらきら輝いていて、少しづつそんな小さな幸せを編んでいけば、いつか大きなわたしたちだけの幸せに編みあがるのかな。
そんなことを考えながら、わたしはあなたに「またね。」と手を振った。
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