【PTA回想録(5)】副会長としての日々(3)

(前回)【PTA回想録(4)】副会長としての日々(2) より続く.

そういえば,子どもの学校の副会長を務めていたときのことで,もう一つ思い出したことがありました.

ある時,副会長や幹事を務めているお母さんとお話をしていた時のことです.何気なく,「皆さん,ご出身はどちらなんですか?」と聞いたら,「市内です」,「県内です」,「千葉です」,「横浜です」,「関東です」,「福島です」などなど.その時私は何気なく,「皆さん,ご出身はまちまちで,この校区内のご出身の方は案外いらっしゃらないものなんですね.」と返したように記憶しています.でも,よく考えてみたら,校区内の出身かどうかなんて気にすること自体,いささか奇妙なことなのかもしれません.

私は,PTAの役職を引き受ける際に,一番気がかりだったのが,「自分の後任のこと」でした.私のように,出身地が県外の遠く離れたところで,近くに身寄りがなく,起きている時間は仕事しかしない男性には,幼稚園や小学校での子どもを介した人のコネクションはほぼ皆無なのです.知人がいたとしても,ご近所さんか職場関係の人くらいです.そんな人間が,子どもの学校教育に関する公共性の高い団体の副会長になり,その公共性の高い団体はイメージ最悪,とくれば,後釜探しのことをどうしても心配してしまいます.そうなると,「もともと生まれ育った地域で暮らしているお父さん・お母さんの方がいいかなぁ」なんて,ついつい考えてしまいます.今考えてみれば,別にそんなことを考えなくてもよい気もします.現代のように核家族化も進み,進学も就職も本人の意思が尊重される時代では,生まれ育った地域から離れて生活することは珍しいことではないです.物事を難しく考えず,小学校のお母さん・お父さんの知り合いを増やし,楽しく人付き合いをしながら,人のネットワークを広げて,皆さんの力を借りて後任を探せばよいのですから.

ところで,PTAでは,良いか悪いかはさておき,役員をやってくださっているのは,多くの場合,お母さんに代表される女性です.わが国では,女性には,結婚とともに苗字が変わり,妊娠・出産にあわせて仕事を辞める方もいらっしゃるでしょうし,住まいも夫の仕事や結婚後の家庭の事情によっても変わる方も少なくないと思います.このことを改めて眺めなおしてみると,これまでのわが国の社会では,女性は大きなライフイベントにあわせて,自分のおかれた境遇やコミュニティ,人間関係などの「生活していくことの基盤」を大きく変えることを強いられ,そのことへの対応を求められ続けてきたことに気づきます.女性は,場面場面で人のつながりをつくり,生きるための情報を入手して,家族が困らないように対応する中で,コミュニケーション能力は自然と高くなっているのではないか,と.

そんなことをあれこれと考えるうちに,「PTAに対する批判や,PTAで直面する課題や問題は,私たちの社会における『女性』を取り巻く問題が根源にあるのではないか」と,思うに至ったのでした.

(次回)【PTA回想録(6)】副会長から会長へ へ続く.

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