【学童野球を愉しむ日々(2)】足を踏み入れてわかったこと

(前回)【学童野球を愉しむ日々(1)】野球ストーリーは突然に より続く...

野球ストーリーは突然にやってきました.

早速,入団申し込みの電話をかけて,すぐに練習に行かせることにしました.練習着もまだ準備していないので,最初は普段着のままで平日練習に一人で参加させました.今考えてみれば,お世話になるコーチにきちんとご挨拶すべきだったのでしょうが,ちょうどその日は仕事で手が離せなかったことと,もう5年生で仲の良い同級生もいるし,そんなに野球をやりたいのなら,自分で指導者やチームメイトに挨拶をして,野球のチームに参加させればよいか,と思っていたのです.

休日になり,練習グラウンドまで車に乗せて,練習に参加させたのち,当時の保護者代表のお母さんと少々お話をしたことを覚えています.このときはまだ,息子の野球はまだ他人事で,「お父さんも協力的で,試合の準備や審判などでお手伝いいただいています」と言われ,思わず「子どもの野球にはそこまで興味はないので...」と口を濁すような,ちょっと残念感漂う父親だったと思います.

前回でもお話ししたように,私自身は小・中・高と野球をやってきました.その中で一番嫌だったのが,中学・高校時代に上級生の練習試合で審判をやらされることだったんです.ミスジャッジをしようものなら,両チームのベンチから「ウーン?」「なんだそれ!」などのヤジが飛び,グラウンドの中で居場所がなくなるんです.とっさに昔の記憶がよみがえって,反射的に「審判,いやだなあ...」と思ってしまいました.とはいえ,子どもが野球をやっているので,「ひとまず今どきの野球を眺めてみようかな」「お父さん,お母さんはどんなことをしているのかな」と思い直して,グラウンド脇で練習を眺めてみよう,と思いました.

眺めてみて,最初に印象に残ったのは....
「野球をやっている子の少なさ」でした.
私が子どものときは,同学年のチームメイトだけで紅白戦ができるほどの人数がいましたが,今は同学年の子どもだけを9人並べるのがやっと.チームが活動するのは小学校3校の校区で,こどもは一学年で250人近くになるでしょうか.それでも,他チームに比べれば,まだ多い方,ということでした.これには大きな衝撃を受けました.確かに,近所でもボールやバットが自由に使えないですし,放課後に野球をやっている子どもなんて,ほとんど見かけません.近所の公園ではキャッチボールくらいしかできないでしょうし,屋外の遊び場の少ない都市部では,広いグラウンドでも自由に投げて・打って,とは簡単にはいきません.そんな環境では,チームに入団して野球をやってみよう,なんて思うのは,なかなか難しいのかもしれません.

二つ目に印象に残ったことは.....
「練習に来ているお母さん・お父さんの姿」でした.
練習や試合の参加に,親の同伴が求められているわけではないのですが,
子どもを送ったついでに,そのまま練習を観ているお母さんや,練習のお手伝いをするお父さんの姿も多々見かけました.だんだんと暑くなってくる季節にも関わらず,です.正直に白状すると,最初は「忙しいし,暑いのに,なんで皆さん帰宅しないんだろうか?」と思っていたんです.ただ,観察していると,暑くなれば熱中症に注意せねばならないことに気づきますし,子どもがケガをしたときの対応も必要となることもわかります.こんなことをボランティアで対応してくださっている指導者にお願いするのは,ちょっと申し訳なく思います.また,ライン引きや大型の練習用具の搬送,日蔭を作るためのテントの設営・撤収なども,限られた時間で練習してもらうためには,大人のお手伝いがちょっとだけ必要なのも事実.そのことに気がついて,「他の保護者に申し訳ないので,自分も何かやらねばならないな」と思ったことを記憶しています.

実際のところ,「わが子のプレーを見ていたい」という思いを抱いて練習を見ている方も少なくないのかもしれませんが,私自身は今現在でも,野球をしているわが子の姿を見ていたい,という思いはほとんどありません.何か思ったとしても,「やっぱり自分が野球をうまくできるようになりたかったなぁ」「チーム全体としての野球のパフォーマンスはどうだろうか」くらい.どうやら,「野球をやるのは自分」,「野球を見るのはわが子も他人もプロ野球も,一貫して『他人事』」のようなのです.不思議なものです.

そんなこともあって,最初は「感じの悪い父親」でしたが,週末を経て一転して,「お手伝いする,協力的な父親」に豹変したのでした.私自身は,30年前に野球をやっていたわけですから,お手伝いすること自体は,それほど苦痛なことではありませんでした.ただ,30年の年月は,肉体を老化させるのに十分な時間であることを痛感させられることになりました.

(次回 【学童野球を愉しむ日々(3)】30年の歳月の意味をかみしめる へ続く...)


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