【PTA回想録(13)】子どもたちを応援する活動を創る―「わたしの好きなこと・興味のあること展」の思い出(その1・企画編)―

(前回 【PTA回想録(12)】PTA会長として考えたことを整理して校外活動に臨む より続く...)

前回の記事で,私がPTA会長になってみて,これからも小学校の子どもたちの教育を応援するために,現在および将来のために考えていることをお伝えしました.考えたことは多岐にわたりますが,やはり「私たちの会は,これ!」といった,柱となる活動を固めて,次の人たちにこの会を渡したい,と思っていました.そこで目を付けたのが,「小学校のPTA会長として今考えていること」の項目(9)だったのです.

(9) 子どもや大人が自信を持てるような行事や活動に関すること
 学校でも家庭でもない組織の特性を生かして,子どもたちが自信を持ち自己肯定感を高めてくれるような行事や活動を企画・実施できないだろうか.学業やスポーツ以外にも,子どもたちが活躍したり,役割を果たしたりしている場面はあるはず.そのような子どもたちの姿を親でも先生でもない大人が称えることで,自信をもってくれないだろうか.また,自信が必要なのは,保護者や教職員も同様である.「小さな勇気づけ」を通して,大人にも自信をもってもらえるようなことができないのだろうか.

「小学校のPTA会長として今考えていること」メモ,より

ただ,会長の私が最初から「これをやろう!」と言って進めてもつまらないので,私自身はできるだけ多くの皆さんと「創り上げる楽しさや喜び,そのプロセス」を共有したいと思っていました.「真剣に,一から作り上げるおもしろさ」と呼べるようなものを,善意でPTAに関わってくださっているお母さん・お父さんと味わえたらすばらしいな,という感じでしょうか.その一方で,子どもたちを会として応援する活動は,その意義は誰からも受け入れられやすいものであるだけに,活動の実質的な負担を軽視して企画してしまうと,将来に大きな不幸をもたらします.そこで,会長・副会長・幹事の数名からなる少人数の「担当チーム」を作って,まずはチーム内で企画を検討することにしました.

私たちのPTAでは,長らく,小学校の作品展(文化祭)にあわせて「活動展示ブース」を設けていました.コロナ禍以前では,体育館でのステージ発表と,スポーツ少年団や地域の小学生ブラスバンド,PTAなどの活動展示を実施していました.ただ,コロナ禍に突入し,大人数を集めた対面接触を避けることになり,ステージ発表ができなくなっていました.そのため,学校内のクラブ活動での作品を展示する企画を,従前の各団体活動展示に加えて実施していました.子どもたちのクラブ活動の作品展示は妙案でしたが,それ以外は数も少なく,何かしらのてこ入れが必要な状況でした.そこで私は,この「PTA展示ブース」のてこ入れのために,私がぼんやりとイメージしていた「子どもや大人が自信を持てるような行事や活動」を会の幹部役員の皆さんとともに考えてみることにしたのです.

まず,担当チームでアイディア出しをしてみました.その際に,制約条件として私が考えていたことは,次のようなものでした.

(1) 執行部(会長・副会長・幹事)だけで企画・準備・実施できること.
(2) 次年度以降も継続して実施できること.
(3) 実施に際し,先生方に大きな負担とならないものであること.
(4) PTAでしか実施できない活動,またはPTAで実施することが相応しいと思える活動であること.

(1)は,執行部以外の役員の皆さんにとって新たな負担となるような活動は,どんなにすばらしい活動であっても現状では受け入れてもらうことは困難だと思っていました.「Benefit」だけではなく「Benefit/Cost (B/C)」で考える必要があり,昨今のPTA批判の中では,「C」を小さくして B/C を大きくすることも考えねばなりません.

(2)については,私のこれまでの経験からの教訓です.私も若い時は,その瞬間だけを見て「良かれ」と思ってやってみることもありましたが,やはり,「本当にインパクトのあること」は,「良い理念・哲学」のもとで「目的が明確」であり,「意義」が大きく,かつ「持続可能なこと」だと感じています.成果を出すことに焦るあまり,持続可能性の低いことに今のメンバーの貴重な時間を割くことは避けたいと思っていました.

(3)は,PTAは学校ではないので,学校の教育活動に悪影響を及ぼしたり,先生に大きな負担を強いることは,やはり避けねばなりません.

そして最後の(4)については,(1),(2)とも関係しますが,PTAは保護者と先生方が参加する会で,保護者も先生も活動負担に対する余力がさほど期待できない状況では,「PTAとして活動するにふさわしい内容」を追求することは重要だと考えていました.その一方で,何か新しい活動を考えようとすると,実施することの具体的な内容にばかり目が向いてしまい,自分たちの会が実施することの合理性がなおざりになってしまいがちです.そのため,PTAでしかできないことかどうか,PTAで活動を実施した方が効果が期待できるかどうか,をよく考えてみることにしました.

この制約条件を意識しながら,「作品展(文化祭)での展示ブースの継続」を前提として,皆さんからアイディアを出してもらったところ,次のようなものが出てきました.

(A) 校外クラブ等,これまでの出展者による展示
(B) 希望する児童(4年生以上)によるクラブ活動の成果物の展示
(C) 学年部の学年行事や総務部・専門部の活動の報告を兼ねたポスター展示
(D) ステージ発表に代わるものとして,事前収録動画のyoutube等での閲覧(出展者が希望する場合)
(E) 保護者からの情報発信. 例えば「わが家のペット自慢」「よく遊びに行くスポット」など
(F) 子どもや保護者の投票によるランキング(つきたい職業,好きなおかず,など)
(G) 古着回収
(H) 児童の「好きなこと(知識)自慢」展示・「子ども博士」の授与

上記(A)~(C)は前年度まで実施していたもので,(D)~(H)は,このときに新たに出てきたアイディアでした.(D)は,やはり児童が出演する動画を一時的にでもyoutubeで公開することに対する個人情報管理に関する懸念が消えなかったことや,動画撮影からweb公開管理までのスキルを持った人材を継続して確保することの難しさから,実現を断念しました.(E)と(F)は,PTAが保護者や児童の交流・親睦を目的としていることもあり,実施してもよいかな,と思っていましたが,ちょっとインパクトに欠けることは否定できません.

(G)の古着回収は,体育着や学用品等の回収・譲渡の潜在的ニーズが保護者の中にあるだけに,手を付けるならば慎重に進める必要があると思っていました.「実施するならば,確実に成功させねば」という感じです.個人間の物品の譲渡にPTAがどのように関わるのがよいのか,回収物品の保管スペースの問題や,譲渡する物品に質のばらつきがあることが予想される中で不公平感を出さないような工夫など,持続性まで視野に入れたときに解決が必要な課題が山積していました.私自身は,「せっかく実施するのなら,本当に必要な人の手に渡るような仕組み」を実現させたい,とも思っていました.

実際の提案では,子どもの成長とともに不要となった衣類を回収して福祉作業所等に引き取ってもらう,旨の内容だったと記憶しています.古着回収による社会貢献は否定しませんが,その「社会貢献」の意味を,実際に作業に時間を割く役員(保護者)が許容できるかどうか,PTAとして実施すべき活動かどうか,と考えたときに,準備期間の短さを考えても,ちょっと難しいかな,と思っていました.ただ,古着回収は,その後PTAが一切関与することなく,偶然にも簡単に実現してしまいました.このことは,後の記事の中で触れたいと思います.

それで,最後の(H)なんですが,これは,私自身がいつかやってみたい,と思っていたことでした.仕事柄,これまでたくさんの学生と接してきて,一人ひとりに「すきなことの世界」があって,その「世界」の話をしてもらうと,聞いていて面白いと感じていたのです.学生が専門分野や仕事を選ぶ際には,そんな「すきなことの世界」が影響することも少なくありません.そこで、子どもたちに「すきなことの世界」を少しだけ見せてもらう代わりに、出展してくれた子どもたちに「こども博士」の学位を授与してはどうかな,と考えたのです.PTA会長として日常的に小学校の子どもたちを見ている中で,「すべての子どもたちに,意思さえあれば賞状を手にすることができる機会を作って,賞状一枚が自信につながってくれたらうれしいなぁ」とも思いました.そのため私は,「学業ではない,子どもが生きていることそのものにスポットライトをあてて,それをほめたり認めたりすること」を活動として実施することを,私たちの会の活動の柱に据えることを考え始めていました.実施する側にとっても,集まった展示物を掲示するだけで済み,学位記や表彰状の作成には手間もコストも要しないことも利点でした.

ただ,この年は学校の周年行事の実施が予定されていました.周年行事は内容次第で保護者の負担が大きくなるため,私個人としては,無理して難しいことをやらずに,周年行事とあわせてささっと終わらせることを考えてもよいかな,と思っていて,執行部の役員の皆さんに対して,実際にそのようなことを口にしてもいました.

そんなときに,PTA執行部の担当チーム内で企画のとりまとめをやってくれていたお母さんと,LINEで作品展の企画の話をする中で,こんなメッセージが届きました.

"子どもたち"にスポットを当てた企画、私はやってみたいんです。年に一度のことですし、役員として果たしたいと思ってるところもあるので、多少無理してもやりたいな、って私個人的に思ってみたり。けど、チームメンバーの皆さんの意気込みや参加意識の違いはあると思うので...しかも、周年イベントもあると無理しない方が良い、という選択もその通りだと感じます。

私はこれで腹を固めました.私はすぐにこんなメッセージを返しました.

私は、基本的には、子どものためになる、と理解してもらえることを、やりたい人がやったらいいと思うんですよね。なので、あなたがやりたいと思うのなら、"子どもたち"にスポットライトを当てた企画、一緒にやりましょう。

自分と同じチームの仲間が,「大人がせっかく時間を使うのなら,多少の負担があったとしても,子どもたちのためになることをやりたい」と,勇気を持ってシンプルに伝えてくれたことには,今でも本当に感謝しています.このメッセージがなかったら,表題の「わたしの好きなこと・興味のあること展」は実現できませんでした.また,たくさんのお母さん・お父さんが,さまざまな思いを抱いて,わが子の学校のPTA活動に参加していることを,改めて学ぶことができました.今振り返ってみれば,このくらいの時期から,子どもたちや学校を見守り応援する活動の「おとなにとっての意味」を意識するようになっていたように思います.

次回は,作品展のPTA展示ブースの中で,新たに取り組んだ「わたしの好きなこと・興味のあること展」が出来上がるまでについて,振り返りたいと思います.

(次回 【PTA回想録(14)】子どもたちを応援する活動を創る―「わたしの好きなこと・興味のあること展」の思い出(その2・準備編)― へ続く...)


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