【PTA回想録(6)】副会長から会長へ

(前回)【PTA回想録(5)】副会長としての日々(3) より続く.

私がわが子の小学校のPTA副会長を務めていたのは,ちょうどコロナ禍1年目のことでした.皆さんの記憶も鮮明だと思いますが,3月1日から全国の小中学校が一斉休校となり,国からマスクが配られ,オリンピックが一年延期になった,あの年でした.首都圏を中心に大都市部の感染拡大により何度もクライシスがやってきましたが,私の暮らす街では,COVID-19の感染者はまだまだ少なく,ポツポツと感染者が出て緊張しつつも,感染が急拡大する様相ではありませんした.

ただ,私の仕事のほうは,もう「てんやわんや」でした.私の専門が理系で数式を繰り出すことの多い分野でもあり,それまで担当するすべての授業を黒板とチョークでやっていたところに,2週間遅れの新学期開始+全面的なオンライン授業,への対応を急遽求められることになりました.担当する授業の説明をすべてパワーポイントに切り替えるために,毎日毎日空いている時間は授業のパワポづくりに充てざるを得なくなり,今思い出しても,あの日々は本当に大変で,「当分パワーポイントなんて作りたくない」と思ったものです.オンライン授業では,受講する学生に対し,「感染症対策なので,申し訳ないけれども理解してほしい」「自らの健康を第一に,感染拡大防止のために節度ある行動をお願いしたい」などと,話をしていたことを思い出します.

一方で,PTAの活動といえば,人を集める行事は軒並み実施できなくなり,学年行事は自宅でも実施できる代替の企画で実施していました.今考えてみれば,このとき「すべて休止」としなかったPTA執行部の判断は,間違ってはいなかったと思います.当時ちまたでは「PTAは何もやらなくても,誰も困らなかった」という記事などを目にすることもあったのですが,よくよく考えてみれば,それは当たり前のことなんだと思います.もしPTAがやってきたことがコロナ禍でできなくなって,日常の学校教育が成り立たなくなったとしたら,それは本来,学校教育の中でやらねばならないことのはずです.PTAは学校教育の責任を負う立場にはなく,学校に寄り添う社会教育団体です。そのため,PTAの活動は「学校教育の実施上,必要不可欠」なものとまでは言えず,基本的には「よりよい学校教育を実践するために『あったほうがよいこと』」に取り組んでいるはずなのです.もしPTAの活動で学校教育上必要不可欠なものがあったとしたら,それを公的部門で責任をもって実施するよう,教育の実施義務を負っている文部科学省や教育委員会に対して,PTAという公共性の高い団体が強く働きかける必要があると思っています.この点は,その後にPTAでのさまざまな活動を考える上で,大事な気付きとなりました.「よりよい学校・よりよい学校教育を実現するために,『子どもを見守る大人』が取り組むこと」を探して,その活動の質と負担のバランスをとることが成功の鍵なのかな,と考えたことを思い出します.

ちょっと前置きの話が長くなりました.
そんな副会長暮らしも一年になろうとしたころ,当時の会長も当初予定の在任期間となり,後任探しの中で,私にお鉢が回ってくることになりました.私自身は,会長になってもさほど困ることもないだろうな,と思っていたので,どちらかと言えば,「どんなものなのか,新たな体験がちょっと楽しみだなぁ」と感じていました.ただ,会長に就任することになっても,それほど期待やお願いをされることもなく,「神輿に担がれる人」がAさんからBさんに代わるだけ,くらいの,ちょっと冷ややかな空気を感じたことを覚えています.

その一方で,私が会長を引き受ける際には,やはり「せっかく会長になったからには,会全体を見渡して,時間軸も考慮して,安定した組織運営を実現させたいなぁ」と思っていました.これまでの一年間,PTAをずっと眺めてきて,ある程度は問題点や課題が見えてきていました.インターネットの記事にも目を通して,世間でのPTA批判やPTA改革の成功事例も頭に入れていました.ただ,それだけではすぐに「自らが為すべきこと」は見えてこないですし,当然副会長以下,保護者の皆さんの理解と協力が必要なわけですから,ひとまず学校や関係者にもう少し話を聞いて,自分の状況判断と問題の抽出が妥当なものなのか,よく考えてみよう,と思いました.要するに,会長1年目は,これまでの前例でやってきたことを,会長という立場で近くから定点観測することに決めた,というわけです.その中でやれそうなことが出てくれば,そのために「増えた仕事」を私が処理することで,他の役員の負担をこれ以上増やさないようにしながら,自分の色を出していこう,と考えたわけです.

(次回)【PTA回想録(7)】会長になって最初にやったこと へ続く.


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