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高度リンパ節転移を伴う胃がんにおける術前DOS療法の短期成績(JCOG1704)

Gastric Cancer. 2024 Jan 5. Epub ahead of print.

日本における胃がんの術前療法はこれまで色々な治療が模索されてきたが、あまりぱっとしない成績であった。しかしそれは日本の胃がん手術の成績がそもそも海外と比較し良いため、術前治療が入らなくても手術と術後治療で十分ということの裏返しでもある。
JCOG 1704では予後不良とされる高度リンパ節転移症例(主にPALN, bulky N)胃がん症例に対する術前DOS療法の効果を探索したPII試験である。今回は短期成績として病理学的な奏効割合と有害事象の報告がなされた。


対象患者はHER2陰性、PALN(16a2, 16b1)転移あるいはbulky N (7a, 8a, 9, 11, 12, 13, 14, 15, 16b1のLN転移でφ3cm以上1個、あるいは1.5cm以上2個)転移を持つ胃がん患者。食道浸潤(≥3cm)と大型3型と4型、審査腹腔鏡でのCY1症例は除外されている。
治療はDTX (40mg/m2), L-OHP (100mg/m2) day1とS-1 (80mg/m2, day 1-14)を3サイクル。最終投与の4-8週以内にdistalもしくはtotal gastrectomyを施行。リンパ節郭清はD2 + 16a2, 16b1郭清を基本にR0切除を施行した。

試験の主要評価項目はJCGC 2a-3の病理学的奏効(pRR), 副次評価項目はOS, DFS, R0割合, 奏効割合, 治療完遂割合, AE。(JCGC grade 3は病理学的完全奏効, grade 2bは1/10未満の腫瘍細胞残存, grade 2aは1/10-1/3の腫瘍細胞残存) 同時にBecker退縮グレード (1a: 残存腫瘍無し, 1b: 10%未満の残存, 2: 10-50%の残存)も測定した。pRRの閾値 25%, 期待値 40%として統計解析を施行した。

結果

47例 (bulky N 20例, PALN 17例, 両方 10例) がentryし45例がDOSを施行。Relative dose intensityは約90%程度完遂。AE≥G3はNeu減少 11%, 食欲不振 16%, FN 9%, 下痢 9%であった。43例が手術施行。(2例はR0不能と判断), 42例がR0, 1例がR1 (CY1)だった。DOSの効果は、RECIST PR 30例, SD 12例, PD 2例で奏効割合は65%。pRR 60%, pCR 26%で主要評価項目はmetした。Beckerグレードでは 1a: 39%, minor pRR (1a+1b+2) 65%であった。


Discussionで筆者らは過去の試験と比べ本レジメンの病理学的奏効が良好であったこと、その理由としてレジメンとdose設定について言及している。

これまでの術前治療試験の病理学的奏効の比較

DCS→DOSでこんなに病理学的奏効割合が違うものだろうか、たまたま良いデータが出ただけではと疑ってしまうが、JCOG 1002ではS-1, DTXのdose intensityとコース数が少ないことがresponseが上がらなかった結果と考察されていたので、その点が改善され本研究結果に至ったのであれば研究者の努力の賜物ということになろうか。JCOG 1002の手術までの治療完遂割合は80.8%と報告されており、この点が本試験で改善されていたのもDOSが良く奏効したからという解釈になるだろう。
筆者らは症例数の観点からPIIIを組むのは難しいため、本データをもってDOSを標準的な選択肢の一つとすることを提案しており、今後本邦では本治療が中心に行われることが予想されるが、今回の臨床試験では手術の郭清範囲にも関わらず術後合併症が少なく、死亡例は1例も出ていなかった。この手術成績はJCOG施設だからこそなしえた可能性もあり、一般病院まで裾野を広げて実現可能かどうかはまた別の判断が必要となるだろう。


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