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舞台『こと〜築地寿司物語』@築地ブディストホール

築地の老舗寿司店を軸に、昭和・平成・令和へと変わりゆく街の姿や、変わらない人々の情けを描き出すこの物語。平成29年に第一作を発表してから早いもので5作目になる。今回は3代目から4代目に引き継いだ頃をきっかけにして、戦前(関東大震災後)から高度成長期の終わりまでが語られている。


この時代設定だから当然登場するのは第2,3作に寿司屋の主人、栄蔵を演じた山本圭壱。1作空いただけとはいえ、コロナ禍もあって久々にこの作品に参加したわけだが、恰幅も心根も幅広い親方役がすっかり馴染んだ感じがした。おそらく山本なりのアドリブもだいぶ盛り込まれていると思うのだけど、あまりに自然なのですんなりと受け入れることができる。そしてゲストも含めて全作品に参加している市川美織は、鳳恵弥が演じる主人公・ことの娘で3代目社長・孝二朗を励ます弥生を演じるが、時代や役柄に寄せるのではなく、そのままの市川で押し通している感じが、変に力が入らなくてかえって面白かった。そして孝二朗役の林剛史は、攻めの経営で一時は華を咲かせたものの、その後の失敗で苦悩する3代目社長を好演。長身でキリッとした外見が、挫折の表現にもいい効果を出していたと思う。

そして主人亡き後、そして戦後の混乱期に寿司屋を背負ったことを演じる鳳。言うまでもないけれどライフワークとしてこの作品を背負う姿がハッキリしたと思う

。正直初期の頃には力が入りすぎている印象を受けたが、特に今作ではいい具合の力加減。まさに口に入れるとシャリがほろりとほぐれるような、上等の握り寿司のような加減が身についたと思わされた。

今作では子供の頃に急逝した長男のエピソードや太平洋戦争から空襲(モチーフは東京大空襲だろう)のシーンが挿入されたことで、またひとつ物語に幅を与えたといえるだろう。さすがにひとつの家族や寿司店を軸に5作目となるとマンネリに陥っているのでは、と意地悪をいう向きも居るかもしれないが、そんなことはないことを見せつけてくれた。 30日まで。

築地玉寿司4代目 中野里陽平氏もゲストで登場

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