ワタベシンヤ

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ワタベシンヤ

ライター/舞台写真家です。ライター業はタワーレコード発行の雑誌intoxicate(イントキシケイト)、JAZZ JAPAN、演劇・ステージ情報誌 カンフェティなどに書いています。写真は音楽、演劇、ダンス、パフォーマンスなどが守備範囲ですが、その他商業写真も手がけます。

最近の記事

イベントレポート CP+2024「学生vsプロ写真家のフォトバトル」

2月24日までパシフィコ横浜で開催されているCP+(シーピープラス)は、写真機材メーカーなどが一堂に揃い、全国の写真愛好家や関係者が集う展示会。出展する主催者やメーカーのブースではプロ写真家や開発者によるセミナーが開催されているが、その中で「学生vsプロ写真家のフォトバトル」と題されたイベントが(一社)日本学生写真部連盟(以下、FUPC)、(公社)日本写真家協会(以下、JPS)によって開催された。 筆者もJPS会員、つまり写真を生業にしていて、十数年会員資格を継続しているのだ

    • 舞台 『天使の群像』 鵺的 第17回公演

      劇作家・高木登が主宰する演劇ユニット鵺的。まだほんの数作を観ただけなのに生意気かもしれないが、高木の手による人心の底に澱む“なにか”を赤裸々に暴き出す物語に凄く惹かれている。17回公演として発表した新作『天使の群像』は、ある高校を舞台に、臨時的任用教員(正しくはこう称するらしい)として着任した女教師を巡る物語だが、ともかく期待通りの作品だった。 ある男子生徒が不登校になり、それをきっかけに担任教師が辞職。主人公はそんな状況で着任する。しかし彼女はたまたま採用試験に受かってい

      • 第3回 池上亜佐佳・山本亜美 デュオリサイタル

        二十五絃箏と十七絃箏。どちらも伝統楽器としての箏(十三絃)の範疇には入っているものの、西洋音楽が入ってきた明治以降の、さらにいうなら二十五絃箏は昭和期に生まれた楽器だから、それらを使った作品を演奏することは、伝統音楽の新たな地平を開拓する行為に他ならない。ところがそういったいわば“新しい作品”は、「現代音楽」とカテゴライズされると同時に「難解でよくわからない」というレッテルが貼られてしまう。確かにこれまでの常識や概念を打ち破って、思わぬ音遣いや奏法を盛り込んだ作品も数多いが、

        • 舞台『BARON』 Actors Tribe Zipang

          女優としてだけでなく、昨今は演出家としても活躍している鳳恵弥が主宰するActors Tribe Zipangの新作公演は、実際に起きたペットの医療過誤・詐欺事件を元にした物語。これまでも鳳は主演を務める『こと〜築地鮨物語〜』や『シーボルト父子伝』で家族の絆や愛情を描き続けてきたが、本作も飼い犬を失った家族と、それを囲む仲間達の絆を描き出す作品だった。 鳳が演じたのは主人公ならぬ主人犬のバロン。この配役にはともかく驚かされたのだが、無邪気に明るいバロンのキャラクターが存分に表

        イベントレポート CP+2024「学生vsプロ写真家のフォトバトル」

          舞台『こと〜築地寿司物語』@築地ブディストホール

          築地の老舗寿司店を軸に、昭和・平成・令和へと変わりゆく街の姿や、変わらない人々の情けを描き出すこの物語。平成29年に第一作を発表してから早いもので5作目になる。今回は3代目から4代目に引き継いだ頃をきっかけにして、戦前(関東大震災後)から高度成長期の終わりまでが語られている。 この時代設定だから当然登場するのは第2,3作に寿司屋の主人、栄蔵を演じた山本圭壱。1作空いただけとはいえ、コロナ禍もあって久々にこの作品に参加したわけだが、恰幅も心根も幅広い親方役がすっかり馴染んだ感

          舞台『こと〜築地寿司物語』@築地ブディストホール

          舞台『シャボン玉の欠片を眺めて』TOKYOハンバーグ合同企画Vol.5+グランツ@下北沢・駅前劇場

          このところなるべく足を運ぶようにしているTOKYOハンバーグ。主宰であり座付作家の大西弘記は、現代社会のすき間に潜り込んでしまいそうな。それでいて決して無視できない事柄をゆっくり掘り起こして物語へと紡ぎ上げる。孤独死、不妊治療、里親・養子縁組、孤独死等々、エキセントリックに採り上げることもできる話題を、あくまでもゆっくり触り、見つめ直す。ここしばらく数作品を拝見した結果、そんな印象にまとまりつつある。 今回の作品。舞台となるのは夫を亡くした老いた母親が独居する一軒家。窓の外

          舞台『シャボン玉の欠片を眺めて』TOKYOハンバーグ合同企画Vol.5+グランツ@下北沢・駅前劇場

          ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』@日生劇場

          元々はイスラエル・フランス・アメリカ合作のコメディ映画。それが舞台化されてブロードウェイに進出して2018年のトニー賞を10部門独占した話題作。実はとあるレコーディングの同行取材で2018年4月にNYを訪れた際、評判が高く在NYのエンジニアにも推薦されたので、ブロードウェイ版を観ていたのだった。その時はまさかホリプロが資本参加しているなどとは知らなかったので、日本での上演が発表されたのには結構驚かされた。 というのも、ある意味一般的なブロードウェイ・ミュージカルの印象からはだ

          ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』@日生劇場

          『ライカムで待っとく』@KAAT神奈川芸術劇場

           衛星放送の沖縄音楽チャンネル向け選曲の仕事をきっかけに、沖縄を気にするようになってからずいぶんになる。「音楽の背後には社会や時代が横たわっている」と思っているので、いつしか沖縄戦や基地問題などについて興味が深まり、機会がある度に関連本を読んだり、ニュースに目を通すなどしてきた。  沖縄市生まれの劇作家・兼島拓也が、長塚圭史が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場に書き下ろした『ライカムで待っとく』は、おそらく知らぬ間に沖縄通を気取っていた自分の頭をぶん殴るような衝撃を与え

          『ライカムで待っとく』@KAAT神奈川芸術劇場

          ミュージカル『東京ラブストーリー』@東京建物Brillia HALL (東京・池袋)

          『東京ラブストーリー』といえば、柴門ふみによる原作漫画も、織田裕二と鈴木保奈美のテレビドラマもリアルタイムに体験してきた世代だけに、今回のミュージカル版に対してはあの長い恋愛物語をどのようにして2時間少しの舞台作品に、さらにミュージカル仕立てにするのか、期待と不安が半々というのが正直な気持ちだった。結果としてほぼ原作通りに物語を綴って見せたものの、全体を通して駆け足な印象は拭えず、漫画で言うならバラバラと斜め読みをした気分だった。  だからといって作りが雑だったというわけで

          ミュージカル『東京ラブストーリー』@東京建物Brillia HALL (東京・池袋)

          舞台『DOWN TOWN STORY』@赤坂RED/THEATER

          テレビドラマや映画で多くの脚本を手がけている羽原大介が、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」という大仕事を終えて、ライフワークだという演劇の現場に戻ってきた。それ以前の昭和芸能舎は劇団の形だったのが、今回旗揚げ公演を行った羽原組は公演の度にキャストを集めるプロデュースユニットの形で、今回のキャストもしるさ、浦島三太朗、田久保宗稔などの旧劇団員や稲村梓のように劇団作品の常連がいる一方、オーディション組も取り混ぜた顔ぶれとなった。 物語は平成元年の東京下町で暮らす3姉妹(しるさ

          舞台『DOWN TOWN STORY』@赤坂RED/THEATER

          舞台『ガマ』@東京芸術劇場シアターイースト

          劇団チョコレートケーキ、2022年夏の新作は、太平洋戦争末期に起こった沖縄戦を取り上げた『ガマ』。ガマというのは沖縄本島南部に数多く点在する洞窟で、その数は2000ともいわれている。戦時中は日本軍の陣地や傷病兵を収容する病院壕として、さらに民間人の避難に使われたが、物語は海軍司令部壕があった首里から少し北に行ったところにあるガマを舞台に進められる。 脚本の古川は修学旅行で訪れたガマでの平和学習で体験した“暗闇”を表現したかったとインタビューでも話してくれた。演出の日澤はそれ

          舞台『ガマ』@東京芸術劇場シアターイースト

          ミュージカル『ピピン』@東急シアターオーブ

           1972年にボブ・フォッシーの演出・振付で初演され、40年ほど経った2013年にブロードウエイに再進出、リバイバル・ヒットしたミュージカル『ピピン』。2019年には日本人キャストによって日本初演を果たし、まるでコロナ禍を挟み込むかのような今夏の再演が決まり、8月30日にめでたく初日を迎えた。  再演に当たっての大きな変化は、主人公ピピンを演じるのが城田優から森崎ウィンに変わったところ。主なストーリーは不自由なく育った王子ピピンが、人生の本当の意味を探し求めて彷徨い……。そ

          ミュージカル『ピピン』@東急シアターオーブ

          舞台『シーボルト父子伝 〜蒼い目のサムライ〜』@築地本願寺ブディストホール

          幕末から明治初期にかけて、日本に諸外国の知識をもたらした外国人の1人、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(通称 大シーボルト)。世に言う“シーボルト事件”で知られるがその後に国外追放を解かれ、長男アレキサンデルを連れて再来日。さらに次男のハインリッヒも来日して、近代日本の礎になる仕事をいくつも遺した。 そんなシーボルト父子の活躍を舞台化したこの作品。早いものでもう3度目の再演となるが、今回は主演でもある鳳恵弥が脚本に手を入れ、総合演出の木村ひさしのもとで演出も手がけた

          舞台『シーボルト父子伝 〜蒼い目のサムライ〜』@築地本願寺ブディストホール

          小濱明人尺八リサイタル@代々木上原 MUSICASA

          クラシックや和楽器の奏者が年に一度催すリサイタルは、一種の研究発表という意味合いがあると思うし、そうであるべきだと思っている。その点で尺八奏者の小濱明人によるリサイタルは理想に近い出来映えだったと思う。昨年までは若手奏者である小濱が巨大な尺八世界の岸壁に立ち向かい、果敢に挑んでいく姿を見せられている印象だった。しかし今回は小濱の尺八を通して観ている側にいくつもの気づきがあるリサイタルだった。 前半は正倉院の時代から現代まで、長い尺八の歴史を4曲で辿るプログラムで一曲目は雅楽

          小濱明人尺八リサイタル@代々木上原 MUSICASA

          舞台『うっすら浮かぶ白い月の下で』 TOKYOハンバーグProduce Vol.33 @サンモールスタジオ

          濃厚な人間ドラマを得意とするTOKYOハンバーグを主宰する大西弘記が、団体を旗揚げした16年前に書いたのが本作。つまり劇作家としての処女作だという。登場する6人の男女は全員が自殺願望を抱き、富士の樹海で練炭自殺を図るために車に乗り込んでくる。自殺の道行きを企画者で元は医者だったという“せんせい”が参加者たちが乗り込む度に“死”への覚悟を問い質すと、全員が当然覚悟の上だと語気を強める。しかし話が進むにつれて彼らの決心はほころび初め、“死”へ向かっていたはずの意識が迷走し始める。

          舞台『うっすら浮かぶ白い月の下で』 TOKYOハンバーグProduce Vol.33 @サンモールスタジオ

          舞台『ナビゲーション』@サンモールスタジオ

          人間にはどうもひねくれたところがあって、世の中を拗ねるとすぐに自分を孤独なのだと思い込みたがる。しかしながら世の中それほど捨てたものでも無く、どこかで誰かしらが想ってくれているものだ。 『ごくせん』『ナースのお仕事』などで知られる人気脚本家、江頭美智留による新作舞台『ナビゲーション』を観ていてそんなことを考えた。ACTOR'S TRIBE ZIPANGを主宰する鳳恵弥が職場で急死した先輩を故郷の山形まで車で運搬することになった後輩を。俳優としてだけでなく人気声優としても知ら

          舞台『ナビゲーション』@サンモールスタジオ