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その「IT企業」には、知識集約型企業の自覚はあるか──社員待遇と研修制度について

ITエンジニアの会社選びについての記事の11回目です。今回の記事では、社員待遇についてとりあげたいと思います。これまでの記事はこちら。

社員待遇は、そのまま企業の実力を表す

ITエンジニアの会社選びでは、社員待遇もかなり重視すべきです。給与、福利厚生、残業時間などの条件は、決して劣悪なものに甘んじるべきではありません。

なぜなら、社員待遇の良さは企業の実力を示すからです。給与と福利厚生の良さは、企業の収益性の現れ。残業時間の少なさは、開発管理と稼働管理が上手な現れ。拍子抜けするほど当たり前のことを言って恐縮ですが。

その企業は、その応募者スキルに対する給与の一般的な相場よりも、なぜ高い給与を提示できるのか、または、なぜ低い給与しか提示できないのかその理由を情報収集し、そして採用面談で問うてみてください。高い給料を払える理由、それこそが、企業が持つ差別化要因ということになります。

給料を低く抑える、というのは労働集約型産業の発想

もしかしたら、エンジニア給与を低く抑え、大きく利益をあげることこそが経営手腕であり、企業の実力だと考えている会社があるかもしれません。私はこの価値観、だいぶズレていると思います。

というのも「資本集約型産業」「労働集約型産業」、なんていう分類がありますよね。私なりの理解はこうです。

・資本集約型 ・・・ 製品やサービスを、主に設備により生み出す企業。投資は設備に向かう。社員に払われた給料は、主に販売及び一般管理費として消える。

・労働集約型 ・・・ 製品やサービスを、主に労働力により生み出す企業。投資は少ない。社員に払われた給料は、主に製造原価や売上原価として消える。

・知識集約型 ・・・ 製品やサービスを、主に無形資産(知財や社内ノウハウなど)により生み出す企業。投資は研究開発に向かう。社員に払われた給料は、(会計上みえなくても)会社の無形資産として残る。

企業をこの3類型にかっきり分類するのは難しいとは思いますが、企業の営みはこの3側面から成り立つ、とは言えるはずです。企業はそのうちどこかの側面に、自社のアイデンティティを定義づけているはずなのです。

そして、エンジニア給与を抑え利益をあげる、という発想は、労働集約型産業としてのアイデンティティを持つ企業のものだと言えるでしょう。事実、日本の多くのIT企業の実態(私も前回の記事では社員給与を原価として捉えましたし)なんだから、仕方ない。でも、その実態に甘んじる態度の企業は、どうも先が思いやられる。

中途採用社員の研修制度

会社選びでは、社員研修制度についても確認しましょう。なぜなら、社員研修こそまさに、減らすべきコストではなく、無形資産への投資に他ならないからです。

会社が社員研修の制度を持つべき理由。それは、ITエンジニアはアサインされた案件での業務だけで充分にスキルを身につけられるとは言えないからです。
・エンジニアが成長機会に恵まれた案件にアサインされ続けるとは限らない。案件運(記事)とか、会社の事情(記事)とかがその要因。
・実業務だけでは、知識に穴が空きやすい。実業務では、ある領域の知識や技術を、体系的、網羅的に把握する視座にどうしても欠けるため。

面接では、中途採用社員の研修制度の有無のみならず、その具体的な内容や方法について仔細に聞き出すことが肝要です。

技術系の研修が「無い」「少ない」「外部研修のみ」ですという会社は、自社で持っているノウハウがありませんと言っているに等しい。昇格時研修などと称して、マネジメント領域の研修を科しても、技術系の研修は特に準備していませんという会社も多いのです。つまりは残念ながら、これらは労働集約型企業から脱しようとしていないわけですね。

小手先のトリックが放つ「悪臭」には敏感に

さて記事の最後に、私が見たことのある、悪臭を放つトリッキーな社員待遇の制度の例を挙げたいと思います。優れたITエンジニアであれば、トリッキーなコード、設計、等々が放つ「悪臭」には敏感であろうと心掛けるもの。転職活動においても、嗅覚を働かせましょう。

みなし残業制

社員の稼働管理のコストをケチるためのトリックです。残業へのコスト意識をなくし、社員の生産性やモチベーションの管理を疎かにすることで払う代償が分かっている企業は、このトリックは使いません。

手厚い手当金と、不当に低い基本給

社会保険料の会社負担分をケチろうとするトリックです。まあ、そもそも「社会保険料の労使折半」というトリッキー極まりない制度があるせいで、こんなことをするヤカラが湧いて出るのですが。

まとめと次回予告

今回の記事では、社員待遇や研修制度にこだわることは、企業の実力を測る意味もあることを見ました。次回は転職活動の方法についてポイントを書いていきます。

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