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経験とか才能とか強みとか得意とかを、余すことなく持て余す。

滋賀に来て一年が経った。
「任期を終えたら何をするの?」
と聞かれることも増えた。

何も決まっていないけれど、
何をするかを考える上で心がけていることはある。

今までの経験。
強みだねと言ってもらっている部分。
あるかもしれない才能。
それらを活かそうとは考えないようにしたい。
自分が何を持っているかと、何を選ぶかはまた別だ。

誰かから一度でも認められた才能とか資質とか経験とか強みとか得意なこととかは、その瞬間はとても嬉しい。
でもそれを「さあ活かしましょう!」となった瞬間に煩わしくなることが私の場合はほとんどだった。

これから先何をしようかと考える時に、経験や強みや特技などが頭をチラつくと、選択肢が急に狭まる感じがする。
未来が選びやすい世界は、効率的で不自由だ。

「よし、私の持っている右の肺を活かそう」とはならないように、これらは私の中にある時点で私のからだの一部だ。

無理に活かそうとせずとも、お酒を飲みすぎた翌日に力量が試される我が腎臓のように、生きているだけで、必要な時に自然と出番がやってくるように思う。 

堂々と言えたことではないのかもしれないが、世の中に還元するために学んだことや経験したことは一度もない。
学んだ責任、経験した責任がそこに発生するならば、裸足で逃げ出していたと思う。

私の好奇心を前にして「もったいない」ものなんか何もないのだ。その好奇心がどんな些細なものであっても。

自分を分析して世に活かすよりも、まだ見たことのない自分の感覚や感情に出会いたい。
それが苦しみでも喜びでも言葉にならないような思いでも。
(ただ、こればかりはどうしようもないが、別れだけは耐性がないから嫌だなぁ…)

なんて色んなことを言ってみたけれど、

これだけ今、時間に食材にスペースに建物に、廃棄物とされているものであっても、なんとか資源として活かそう、輝かそうと頑張っているのだ。

人くらいはいいじゃないか。活かそうとしなくたって。なんならもったいなくたって。

必要ないことにすぐ傷ついて、
あれこれ考えても仕方がないことに長時間思いを巡らせ、
お腹が空いた時にコンビニに入ってジャンキーなものをたくさん買っては胃を痛めたり余計な脂肪を蓄えたり、
断ることができた集まりに顔を出して帰ってから死んだように眠り、
やらなきゃいけないことに取り掛かることが嫌で、したくもないゲームをし始めたり、さほど続きの気にならない漫画を読みはじめたり、
ゴシップ記事の誘惑に負けて気が付けば半日を終えていたり、
愚痴を吐きながら飲む酒が美味いと思ったり、
周りと比べて「え、自分ってなんか…!」と落ち込んだり。

ざっと挙げただけでも、私にはこれだけやらねばならないことがあるのだ。
誰かや何かやこれまでに費やした時間に操を立て続けるほど人生は長くない。

こんなにめんどくさくて楽しい時間を、自ら「非効率だ、無駄だ」とぶった斬るなんてそれこそもったいない。

私はきっと、効率よくは生きれないし、
生きようとも思っていないのだ。

とりあえず今日のところは、自分のことを余すことなくもてあまして「次は何しよっかね」とか「運動なし&食事制限なしで短期間で痩せる方法ないかね」とか「ある日目が覚めたら、お金持ちになってたりして」とか思いながら平気で生きていきたい。

おわり

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