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小さな会社が外国人採用に挑戦した#1 出逢い編

ダフトクラフトは常勤社員5名の小さい開発会社ですが、実は21卒と22卒のインド人学生の内定者が2名います。今回は1人目のインド人学生採用(21卒)について話していきます。

■全研本社(株)地頭さんとの出会い

まず2019年秋のCEATECに出展していた時まで遡ります。弊社展示ブースにいらっしゃった全研本社(株)地頭さんという方から「御社は外国人採用にご興味ありますか?」と質問され、「あります。」と答えたのがすべての始まりでした。

2020年の夏ごろにその地頭さんから、「以前外国人採用にご興味あるっておっしゃってましたよね?詳細を聞いていただけますか?」という電話が入り、話を聞いてみると「例年インドで開催している採用イベントがコロナ禍で開催できなくなり、リモート面接に対応できるような柔軟な会社をイメージしたら一番に花島さんの会社が浮かんだんです。」とのこと。営業トークだとしても嬉しいことを言ってもらい、気を良くして沢山お話をしました。

そこで話した内容を簡単にまとめると、

  • 南インドのバンガロールは特にIT産業が盛んで大企業からスタートアップまで数多くのIT企業が集まっている。(例、GoogleやSonyなど)

  • 初等教育からICT授業があり、基礎をしっかり学んでおり応用力がある。

  • 工学専攻の学生だけでも150万人以上の規模(対する日本は全学部で約43万人)

  • 国内の受け皿が少なく賃金も安いため、卒業後海外勤務を希望する学生が多い。

  • トランプ政権によりVISA発給が難航し、英語圏での就職が困難。

  • 日本への関心も高まっている。

  • 海外に行けるのは大学でも成績上位数十%の限られた学生

  • 日本と違い複数の会社の内定は持てない(人口が多いから)

上記の理由の中でも、「国内の受け皿が少なく賃金も低い」「工学専攻の学生だけでも150万人規模」という点から成績優秀な学生でさえ就職できずITとは全く別の仕事につく場合があるという話が印象に残りました。さらにその傾向は世界情勢とコロナ禍の影響で増加の懸念があるらしいと聞き、とても気の毒に感じました。

2020年5月から日本人学生のフルリモート長期インターンシップを開始していたこともあり、海外学生と日本人学生を比較してみたくなったのと、日本の上位の大学生と変わらない学力(むしろそれ以上)の学生の採用の可能性があるということに関心を持ったため、メンバーにも情報を共有し、インド人学生と座談会を開くことになりました。

ちなみに誰一人英語を話せないのに、外国人採用の話をしたら「面白そうですね」って誰も反対しなかったんですよ、と地頭さんに伝えると非常に驚かれました。

そして2020年9月末にRV College of Engineering, Bangaloreの学生10名と座談会を行いました。通訳を交えた2時間という限られた時間でしたが、弊社事業に関する質問への回答やインド人学生の日本に対するイメージや好きな日本のアニメについてなど、様々なキャラクターの学生と話ができて貴重な時間になりました。

この座談会後、「採用イベント、やりましょう」ということで、全研本社さんとの契約を締結しました。

■日本とインドの就活システムの違い

ここで、少し日本とインドの就活システムの違いについて触れておきます。

インドでは就職活動は秋に始まります。企業は採用解禁日までに大学に求人票(Job Discription)を提出し、学生は寄せられた求人を見て気になる会社にエントリーします。各企業は書類選考を行い、通過者を大学に知らせると、大学側が日程調整を行ってくれます。企業はいくつか伝えられた面接候補日から1日選び、面接となります。

日本の就職活動と大きく異なる点は下記2点。

1.学生は1社のオファーのみ受けられる。(人口が多いからという理由らしい)
2.企業は1日で採用を決断する必要がある。

日本の採用担当者はかなりビックリすると思いますが…。まさに面接日は企業も学生も一期一会の真剣勝負です。

■そしていよいよ採用イベントへ

コロナ禍以前は実際に企業担当者もインドに渡航して、実際直接会って採用イベントを行っていたそう。ですが、我々が行った2020年11月の採用イベントは、すべてオンラインで行われました。

今回我々は大学3校に求人票(Job Discription)を提出しました。するとどうでしょう…。

なんと!3校合計131名の学生のエントリーがありました!

本来我々のような知名度のない小さな会社の場合は、就活プラットフォームに多額の登録料を支払い、会社説明を丁寧に行い、合同就職相談会に参加して、地道なPR活動を続けてもエントリー0名なんてことが普通にあり得えます。そして仮に面接ができ、内定が出せても、内定辞退されてしまう可能性は0ではありません。

そんな前提が覆るほどの、エントリーの数。100名以上って、どんなに人気の企業だって勘違いしてしまいますが、さすがは人口10億人の国は日本とは違います。地頭さんから事前に伺っていたとおり、本当に100名以上の母数形成ができました。

面接の前にはメンバーと色々議論して、仲間になる人を限られた時間の中で見極める質問を準備しました。書類選考は数も多く大変でしたが、判断するための軸を決めていたので、スムーズに2校で11名まで候補者を絞り込めました。

書類選考から面接日までは少し時間が空きます。他の企業の面接を受けている学生もおり、弊社の面接日までに他の企業からのオファーを受け入れた場合は面談が出来ないので、面接日が来るまではドキドキしていました。

■131名から1名へ

1日目は座談会を実施したRV College of Engineering, Bangaloreの学生7名を1次面接しました。心配していましたが、幸いにも書類選考通過者全員と面談ができることに。1人30分の面談で通訳を交えると実際15分程度、それが7名分で約3時間かかる計算だったので、短時間で様々な質疑を行いました。

最終選考に残ったのは2名の学生。2名とも座談会で気になっていた学生で、ひとりは情熱を全面に出すタイプと、もうひとりは情熱を内に秘めているタイプ。最終面接では、カルチャーフィットを判断するためにじっくり時間をかけました。最終的に内定を決断したのは『情熱を内に秘めた学生』。決断の決め手になったポイントは主にこの4つです。

  1. エントリーした学生の中で一番成績が優秀であること

  2. 学生から社会課題の解決に取り組んでいること(大学の研究課題は「インドの交通渋滞解消のためのアプリ開発」)

  3. どんなネガティブな質問にも、全てポジティブな回答を返していたこと

  4.  他人を押しのけてまで自己主張したりはせず、傾聴力を感じさせたこと

面談の印象的なやり取りをひとつ紹介します。

2次面接を終えて、次は最終面接と伝えて待機してもらっていました。メンバー内で「合格」を決めたあとに彼女に再びZoomに戻ってきてもらい、

「私たちはあなたに最後の質問が一つあります。日本に来てもらえますか?」

と質問しました。その質問を通訳から伝えられたその学生は、ものすごく嬉しそうに「YES」と即答しました。

YESと即答したあとのみんなで記念撮影

本当に日本に行く心の準備ができてなければ即答できないと思います。「日本で仕事がしたいし、色々なところに行ってみたい。」「新しい技術を貪欲に学びチームの一員として貢献したい。」と面接のなかで聞いていましたが、その熱意や希望には真意があったのだと、即答の「YES」から感じました。

インド人学生は日本の就活生とは違い、良くも悪くも面接慣れしていません。そのため、言語が異なっても素の人間性が見えやすく、「正直な気持ちを話してくれているな」という点や、逆に「少し取り繕っていそうだな」という点はすぐに分かりました。採用に関することを1日ですべて決めるということは、お互いの根っこにあるものをぶつけ合うことなんだと学べました。

そうやって内定を出したインド人学生は実はまだ日本に来日出来ていません。なぜまだ来れていないのか?その理由は次回、「コロナ禍の影響」編で話していきたいと思います。


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