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毎日がハロウィンな楽しい我が家、などと言ってる場合ではなかった



①出すのは赤ん坊ではなくてそっちだから


ワタシが妊娠中に「産まれる~」って叫んだ話、聞く?


臨月の頃、つまりもうお腹がパンパンに大きくなっていた頃。

ワタシ達夫婦は大阪の田舎の古いハイツで暮らしてたんだよね。

ほら、お金ないじゃない?若いから。

家賃の安いところを求めてズルズルと行きついた先が田舎だったのよ、
割と都会で育ったのに。

田舎だからトンボやカエルやカナブン、カブト虫、でっかい蜘蛛・・・なんでもいる感じ。


ハイツつったって、ぶっちゃけアパートに毛が生えた程度の建物で。
正面に面した和室には大きな窓が付いててね。
窓の上の部分の小窓っていう部分も大きくて。
昼間はいつもそこを開け放ってた。


ある夜、さあ寝ましょうかってことで布団に入ったのね。

今じゃ寝室別々で快適生活だけど、当時はそんなに部屋がないからねぇ。
ダンナもまだオヤジじゃなかったから今ほどイビキかかんしね。

じゃあ電気消すよーってことで。

消灯。


急に暗くなると目が慣れるまで少し時間かかるよね。

やっと目が慣れてきたワタシの上をビュン、ビュンと何かが飛んでいる。

何?ワタシの魂?抜けた?


それにしても凄いスピード。

でかい蚊だなぁ。

って多分刺されたら死ぬレベルやな。

なんだろうなんだろう?


そしてワタシはついにわかったのです。


コウモリや。


わかった瞬間ワタシは叫んでたね。


わあああああああああ!


すでにまどろみかけていたダンナが飛び起きる。


なんやなんや!産まれるんか!!

ワタシのお腹を手で押さえるダンナ。

いや、アンタにとり上げてもらおうと思わんから。
てか、お腹おさえても出てくるのを阻止できないから。


そうじゃなくて。
コウモリ飛んでる!

出して!早く出して!


いつもならなんでもワタシがやる担当なのよ、うち。
アンタって何ができるん?っていつも聞いてるくらい、なんでもワタシが担当。

でもほら、ワタシ妊婦だから。
自由に動けないから。


この時ばかりは頑張ったね、ダンナ。


最初、野球帽で追い払おうとするんだけど、コウモリが向かってくるとひーーってなるからうまくいかない。


早く!早く出して!じゃないと・・・産まれる~~~!


叫ぶ妊婦。


産むなよ!出すからな!すぐ出すから!ひーーーっ!


戦うダンナ。


すいません、ちょっとだけ笑って見てました、妊婦。


で、コウモリがね、時々ふすまの桟に停まるのよ。

知ってる?コウモリってほんとに逆さまにぶら下がるのよ。

昔の家だから桟が低くてね。
ぶら下がると丁度ワタシの顔のあたりに来る。

目が合うんだよっ、コウモリと。


ひゃああああああああ!産まれる~~~!


コウモリってちゃんと目の前で見たことある?

そもそも動物園にコウモリっている?


こんな可愛い感じを想像しているアナタ。

甘いよ。

実際こんな感じだからね。
てか、これでも可愛すぎるけどな。


ただね、ワタシ、歌劇とか舞台とかが好きなもんだから、どうしても黒燕尾に見えちゃって。

後で思い出す時、どうしても蝶ネクタイしてたようにしか思えなくて。
いや、してなかったと思うんだけどねぇ(当たり前)


まあいいや。

その日はとにかく夜中に汗水振り飛ばしながらダンナが外に追い出してくれて事なきを得たわけです。


なるべく、もう小窓も開けなくなった。


②まさか後日談があるなんて


で、その数日後。
ちょっと出かけたワタシたち。
帰宅はかなり夜遅くなってからだった。


玄関のカギをガチャリと開けながら言ったさ。


「またコウモリ飛んでたりして。」
「コウモリがお帰りーとか言うてたりして。」
「こうもり傘をお忘れですよとか言うたりして。」
「こぅもりのおばちゃまよとか言うたりして。」
「とにかく居てたらその時はもう引っ越しますんでよろしく。」


扉を開けた瞬間。

真っ暗な家の中に

ビュン!ビュン!

と飛び交う黒い影。


我が家ってエブリデイ・ハロウィンなの?


早く!早く追い出して!産まれる~~~!


ふりだしに戻る。


その後、引っ越しました。
これほんとの話。


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