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世界は救えないけど豚の角煮は作れる

最近、寝る前にエッセイを読むのを習慣にしているのですが、今読んでいるにゃんたこさんの「世界は救えないけど、豚の角煮は作れる」がものすごくものすごく良いのでぜひとも紹介したいと思って、久しぶりにnoteを開きました。(最近本当に書きたいことがなくて、筆が重いのです)

にゃんたこさんは、32万人以上のチャンネル登録者数を誇る人気youtuberです。顔出しこそしていないものの、アラサー女性のリアルな生態をありのままに配信して人気を博していらっしゃいます。ただ、その辺のアラサー売りの女youtuberみたいに、「マッチングアプリで出会った男のことを駄弁りながら料理作る」だけ…みたいなのとは一線を画していると思われます。(どんな動画なのか説明は割愛します。見てみてください)

にゃんたこさんの動画は、とにかくテロップの文学力がすごい。バラエティとかエンタメ系の動画って、企画ももちろん大事ですけど、テロップの持つ力って本当に大きいですよね。テレビの人気バラエティを思い起こしてみても、「月曜から夜更かし」だったり、「水曜日のダウンタウン」だったり、テロップによって笑わされていることって結構多いなと思います。

どういう経緯だったかはわからんのですが、にゃんたこさんもその言葉の力、文章力が評価されて、エッセイ本が刊行されることになったようです。

私がこの本の情報を知ったのは、美容室で読んだ雑誌の書評コラムでした。「なんと!ついに本書いたんだ!絶対面白いじゃん」と思って、すぐ本屋に向かい購入しました。(本は買っちゃう派でございます)

半年以上前に勢いよく購入したものの、1/3くらいまで読んでなぜか放置してしまっていました。すいません。それが、最近あまりに寝つきが悪いので、寝る前のスマホいじいじをやめて、読書に切り替えたことをきっかけに再開されました。

1エピソード2〜3ページと短くて読みやすいのに、くどくない程度に文章が個性的でエッジが効いていて楽しく、充実感があるんですよね。個性の強すぎる文章は短かろうが長かろうが胸焼けするし、かといって短い文章であまりに綺麗な文体だとあっさりしすぎてしまって、私は割と物足りないと感じちゃう派。人によるとは思いますが、私には本当に相性の良い文章量と文章スタイルで。ありがたい。

にゃんたこさんの身に起こる出来事や彼女の行動はいちいち別に特別変わったことのようには感じない(たまに絶対やらないな・・・みたいなことをされていることもあるけど、私自身どっちかというと変な人間なので、別に驚かないことの方が多いだけかも)のですが、その感性が特別だから、きっと普通の人だったら素通りしちゃうような出来事に意味が生まれて、彼女の中に大きな気づきが生まれて、それを独特な文章によって引き込まれた私たちも擬似体験できる。それが彼女のエッセイの面白みだと感じました。仮にもこうして、noteという、人に見られる文章を書いている人間としては、彼女のその凄まじい文章力に毎度毎度「なるほどねーー」って感嘆せざるをえないのです。

たくさん面白いお話があるのですが、まさに私が「なるほどねーー」と思わされた話は「カエル見に行かへん?」というお話です。

虫が好きだったにゃんたこさんは、小さい頃虫を手に乗せて遊んだり、ポケットに入れて持ち歩いたりするような子だったそうですが、転校生のゆうちゃんに誘われてカエルを見に行ったとき、ゆうちゃんがカエルに対して行ったある行動が「トラウマ」になって、それ以来虫で遊ぶことをやめたというそんな話。その中でこんな文章がでてきます。

「ある種の人間にとって、自分が他人につけられた傷よりも、自分が他人につけてしまった、もしくは、つけてしまうことになっていたであろう傷のほうが遥かに治りづらく、化膿しやすい傷なのではないかと。心臓に刺さって抜けない小さなガラスの欠片には、マキロンもオロナインも効かない。私たちはその欠片を、死んで灰になるまで抱えて生き続ける。」

あーすごい。
あの頃の些細な出来事を、こんなふうに自分だけの言葉で1つの読み物として昇華させることができるなんて。と思わされたエピソードでした。

私がnoteでやりたいのはこういう「なんでもない出来事から気づきを得たことを文章として残すこと」。なんだよなー、なのにできないんだよーーーとにゃんたこさんのエッセイを読みながら日々感じています。

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