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#東京 「議員面会プロジェクト」の一環で、外務省と面会しました

面会日:2021年9月7日 13:00~14:00
担当:徳田悠希、本間のどか、住田奈津子、高橋悠太、中村涼香
ルポ作成者:高橋悠太

オンラインにて、外務省軍縮不拡散科学部軍備管理軍縮課と面会を行いました。担当者は、小金修さん(課長補佐)と、 田中聖さんです。

*今回の面会は、先日対話した議員事務所がつないでくださいました。
*小金課長補佐の発言内容は、必ずしも所属組織(外務省)を代表するものではない点、予め御了承ください。

20210907_外務省面会3 (2)

NPTについて

日本の方針は、核兵器廃絶をNPT内で目指していくことだ。NPT第6条には、核兵器国も、誠実に核軍縮交渉を行う義務が明記されている。核保有を5ヶ国のみに認める意味で不平等条約ではあるが、1968年当時の現実の中でギリギリ合意することができた条約だった。

核軍縮が、期待されているほどには、進んでいないのも事実。それに対するフラストレーションを背景に、核兵器禁止条約が生まれたのは事実だが、粘り強くNPTという枠内で成果を出していかないといけないと思う。


日本政府の取り組み

日本政府は、毎年11月~12月にかけて行われる国連総会第一委員会に「核廃絶決議」を提出している。これは、来年の1月のNPT運用検討会議の下敷きになるものだ。立場の異なる国々から賛同が得られるギリギリのラインを私たちは追求している。その意味で、核廃絶決議は、各国の反応を見定めるリトマス紙のようなものだ。

また、外務省は、「賢人会議」や、日豪を中心とした非核兵器国12カ国で形成される枠組み「軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)」でも様々な提言を行ったり、中長期的な課題について議論を進めてきた。


核兵器禁止条約について

核廃絶というゴールは共有しているが、日本政府としては、核兵器禁止条約とは考え方が異なる。

核軍縮は、安全保障環境、現実の状況を踏まえて進めていく必要がある。実際に核兵器を持っている核兵器国が乗ってこれる道を追求したい。

20210907_外務省面会1


質疑応答

20210907_外務省面会のどか


本間)日本政府が言う「橋渡し」が具体的に何を意味していますか?

小金)
現在、世界には隔たりが存在する、という認識だ。それは核保有国と非核保有国間だけでなく、核抑止を安全保障政策として採用している国とそうでない国(核兵器禁止条約推進国など)の間にも存在する。立場の異なる双方が共通してのれるような基盤を作る。
核兵器禁止条約は、被爆者の声の結実だ。他方で、まだ具体的に核兵器国を含めて、進展をもたらす基盤にはなっていない。



20210907_外務省面会ゆうき


徳田)核廃絶決議について、昨年は賛成国が減っています。これは核兵器禁止条約に触れていないからではないのでしょうか?

小金)
よくそういう指摘がされるが、実際はそうではない。一昨年から昨年への変化という意味では、核兵器禁止条約への言及について変わりはない。



徳田)核兵器国の中には、核戦力を増強しようという動きも見られます。NPTは現在も有効に機能しているのでしょうか?

小金)
NPTの中での核軍縮が期待に応えられていないことは事実。他方で、核兵器禁止条約には、現に核兵器を持っている国が入っていない。地道だが現実的な道(NPT)を信じている。
実際、米ソ・米露間では、軍備管理条約を通じて核兵器数を減少させてきた。



20210907_外務省面会涼香

中村)
NPTには、既に不平等さが存在します。それをどうフラットにしていきますか?

小金)
NPTは、「グランドバーゲン」の下で成立した。構造上の不平等さはある。NPT発効は1970年、95年に期限を迎え、無期限延長した。その中で、核兵器国と非核兵器国のバランスが変化しているのも事実。
核不拡散や原子力の平和的利用も含めたNPTの重要性を、核兵器国・非核兵器国を含め、国際社会に対してきちんと訴えていくことが必要だ。



中村)核兵器廃絶には、長いスパンでは核抑止からの脱却が求められます。いつ頃の時期を目途に、脱却を考えていますか?

小金)具体的な時期を示すのは難しい。



中村)NPTは保有国のイニシアティブで、核兵器禁止条約は非保有国のイニシアティブだと思います。日本は、うまく双方の調和をとれるのでしょうか?

小金)
そのような二分論は賛同しない。NPTは普遍性の高い条約だ。NPTのフォーマットの中で核兵器禁止条約推進派も含めて、各国の共通の基盤を見出す努力をしていきたい。


参加しての感想

特に今回の面会では、「現実を生きる私たちが追求するべき道」と、日本政府の取り組みの根本にあるNPTを表現されていたことが印象的でした。
核兵器禁止条約は、「代替案になりえていない」「時期尚早」「理想のもの」というような言葉に日々直面します。今回お話いただいたように、現時点で選択可能なものをよりよくしていこう、という取り組みを、理解することはできました。
しかし、未来は、時間の経過とともに現実になります。いずれ来る未来のため、目の前にある選択肢だけではなく、未来に理想を描き続けなければ、好転することは無いのではないでしょうか。今までの手段に固執するのではなく、少しでもより良い未来のために理想を描く。そして、そのために必要なロードマップを、真剣に考えることが必要な時期であると強く思いました。今後も、より未来に力点を置いた議論を持てるよう、取り組みを続けていきます。(徳田悠希)
外務省の方との面会の機会が得られたことでプロジェクトが進んでいるなと嬉しく思っていました。一方で、面会を始める前に意見は違うけれどと前置きがあり、はじめから意見が違うこと前提なのが悲しかったです。核兵器をなくすというゴールは共有しているとはおっしゃっていただけに、もどかしく思いました。核兵器禁止条約に今は署名できない、いずれ条約の内容が変われば署名もありうるというスタンスだと予想していましたが、、検討の余地はないように見受けられとても残念でした。でもだからこそ、このプロジェクトを通して議員さんに私たちと一緒に核について考えてもらうことに意味があると感じました。(本間のどか)

20210907_外務省面会なつこ

今回の面会で、個人的にはNPTの政策に関しての発言がとても印象的でした。NPT運用検討会議のための核軍縮決議案をあらゆる国が賛同できる、ぎりぎりを詰めていくことの難しさを面会を通して改めて感じました。またNPTの枠組みの中で地道だが核軍縮に取り組んでいくともおっしゃられていました。しかしNPTが地道で確実だとしても、同時進行で核兵器禁止条約の批准に向けて前進し、核軍縮に拍車をかけていくことも重要だと考えます。そして日本政府はその核兵器禁止条約は安全保障の観点が不十分であると考えていますが、そこをぜひ核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加をして訴えかけていただき、核保有国も核の傘の下にいる国も賛同できるような基盤づくりを進めていただければと思いました。核軍縮を進めていくための一つの補強として、核兵器禁止条約も視野に入れていただけるよう、私たちもこれからの活動に精進していきます。(住田奈津子)

20210907_外務省悠太

これまでの世界の核兵器廃絶への蓄積の上に、「新たな何か」を積み上げようという気概が感じられませんでした。それをとても残念に感じています。小金さんがおっしゃった通り、「加盟国がNPT合意を履行すること」、そして「日本がそれを呼びかけること」は繰り返し確認する必要があります。その上で、これまでの「積み上げ」が限界に到達し、核兵器禁止条約が生まれたという現実を、政府も、そして私たちも改めて真剣に受け止めなければならないと感じています。これまで、「安全保障」は無機質な大きな主語で語られてきました。しかし、積み上げるものの質を変えなければ、現代の「安全保障環境の悪化」には対処できない。核兵器禁止条約の成立は、それを意味しています。固定観念から脱却し、現状維持ではなく、「なぜNPTが限界に達したのか」を考えるところから、議論は始まると思います。それが被爆国の役割です。私たちはその視点に立って、政府や国会と対話し、核兵器問題を争点にしていきます。(高橋悠太)
現状の核兵器をめぐる安全保障や国際情勢には明らかな不平等さと矛盾があります。唯一の戦争被爆国であり、先進国である日本はまさにこの不平等さと矛盾を是正できる立場です。日本政府が主張する「橋渡し役」の考え方には全く異議はありません。しかし、その「橋渡し役」の質は見直すべきだと思います。現行のNPTを軸にした日本の核軍縮政策をもとに、NPTの枠内で核軍縮の必要性を核保有国に迫るためには核抑止から脱却する具体的なビジョンと目処を少なくとも立てておくべきでしょう。そして、NPTのフラストレーションから生まれた核兵器禁止条約が成立した事実を冷静に受け止め、話を聞く。つまりオブザーバーとして参加することは最低でも必須条件です。何より、いつ、誰が、再び被爆者になるか分からない緊急性の高いリスクをこれ以上看過することはできません。(中村涼香)


外務省のみなさま、丁寧にご対応いただき、本当にありがとうございました!

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