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【六本木ホラーショーケース-ARTICLE-】 #016 『ボーはおそれている』を生み出したアリ・アスターとA24のホラージャンルにおけるポジション

【六本木ホラーショーケース】

六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。


今回ご紹介するのは、『ボーはおそれている』です。

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『ボーはおそれている』

2023 | 監督:アリ・アスター

オフィシャルサイト

『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で一躍新世代のホラーを代表する存在となったアリ・アスター監督。
その新作が待望の日本公開となりました。
アメリカではすでに2023年の4月に公開されていたので、2024/2/16日本公開はほぼ1年越しということになります。

冒頭に“ご紹介”と書きましたが、今回は映画本編については殆ど触れるつもりはございません。
といいますのも、前作『ミッドサマー』の時もそうでしたが、アリ・アスター監督作品は全てを分かりやすく説明するという作風ではありません。
故に多くの考察というものを生み出します。
とりわけ今作は監督自身のルーツであるユダヤについての物語として、多くのメタファーやリファレンスを有する作品となっています。
既に解説や考察、批評といった文章や動画は様々なメディアで存在しています。
そして、監督自身も今作に影響を与えた作品群を発表しており、それらをご覧頂くことが何よりの作品理解になると思います。

では、ここでは一体何について書くべきなのか?
六本木ホラーショーケースでは常々ホラージャンルにおける映画人たちのコネクションについて言及してきました。
この繋がりや立ち位置を可視化することで、現代ホラー映画の輪郭を浮かび上がらせるというのが六本木ホラーショーケースの目指すところでもあります。
そういう意味では、『ボーはおそれている』という作品はもってこいの題材でもあります。
制作を手掛けたA24とアリ・アスター監督は、現代ホラー映画を語る上で、外せないポジショニングに存在していると考えます。
ちなみにここからはホラー映画とそれに隣接するジャンルも含む作品を中心に取り上げていきます。
コネクションを分かりやすくするために、都合のよい多少の取捨選択も行います。
狭義ではなく広義のホラーと捉えて、温かい眼差しでお付き合い下さい。

今や一般層にもその存在が浸透しつつあるA24という映画会社ですが、制作・配給など関わり方は様々ですが取り扱う作品にはいくつかの柱があるように思えます。
例えば、『スプリング・ブレイカーズ』から始まって『ブリングリング』『mid90s』『エイス・グレード』『Zola ゾラ』というような若者文化を切り取った作品群があります。
他にも『フェアウェル』『ミナリ』『パスト ライブス/再会』そして大ヒットした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』もアジア系のルーツの物語として括ることが出来ます。

そんな中でホラージャンルとしてはどのような作品を手掛けてきたのでしょうか?
創業当初はケヴィン・スミスの『Mr.タスク』やデイン・デハーン主演の『ライフ・アフター・ベス』など少しコメディ色の強いホラーを配給していました。
ターニングポイントとしては、2015年の『ウィッチ』と『クリシャ』ではないでしょうか。
A24の特徴として、新人監督をフックアップし数作組んでキャリアアップを共にするというのがあります。
『ウィッチ』のロバート・エガースはその後『ライトハウス』を、『クリシャ』のトレイ・エドワード・シュルツは『イット・カムズ・アット・ナイト』『WAVES/ウェイブス』をA24と制作し、その名を世界に轟かせました。
最近だと『セイント・モード/狂信』のローズ・グラスはクリステン・スチュワートを主演に迎えた新作『Love Lies Bleeding(原題)』を撮ったり、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』が特大ヒットを放ったフィリッポウ兄弟は既に続編『Talk 2 Me(原題)』の制作が決定しています。
これらの作品は監督の作家性を重要視したアート寄りになることも多く、A24作品は尖っているという印象の大きな要因とも言えます。

しかしそれだけではなく、ホラージャンルのお約束の展開を意識した王道作品やそれらを逆手に取ってひねりを加えた作品などしっかりとしたジャンル映画も実は手掛けています。
『スライス』『ファブリック』『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』あたりはブラムハウス作品にも勝るとも劣らないジャンル映画です。
そして、A24制作作品初の三部作となる『X エックス』『Pearl パール』『MaXXXine(原題)』は、鬼才タイ・ウェストを起用して伝統と刷新を同時に試みた記念碑的映画と言えるでしょう。

アリ・アスターはというと、長編デビュー作『ヘレディタリー/継承』でいきなり世界中から絶賛され、続く『ミッドサマー』『ボーはおそれている』と順調にキャリアを築いてきました。
新人フックアップのA24の王道路線とも重なります。
ホラーは横の繋がりが強いジャンルです。
監督たちは制作会社を立ち上げ、自らの作品だけでなく、プロデュース作品などでもシーンに影響力を発揮していきます。
ジェームズ・ワンにおける“アトミック・モンスター”、ジョーダン・ピールにおける“モンキーポー・プロダクションズ”が代表例です。
アリ・アスターは“スクエア・ペグ”という会社でプロデュースを行っており、この先は『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモスを監督として起用し、韓国映画『地球を守れ!』のリメイクをプロデュースすることが発表されています。

このようにホラーは作品単体の点で見ていくだけでなく、線の視点を持つとより楽しく掘り進めることが出来ます。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

『オンリー・ゴッド』
2013 | 監督: ニコラス・ウィンディング・レフン

今回の記事ではほとんど『ボーはおそれている』の内容には触れていませんが、近しい作品を上げるとすると『ドライヴ』の直後にニコラス・ウィンディング・レフンが撮った『オンリー・ゴッド』です。
圧倒的な支配力を持つ母親の元で右往左往する息子が描かれています。
様々なメタファーを用いた演出により、観客からは賛否の分かれる評価を得たところも似かよった歩みのように思えます。

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