【歌詞考察】Aimer トリル 悲しみに寄り添う子守唄

■はじめに

Aimerさんの歌、「トリル」の歌詞とMVについての考察を行います。
私は歌の解釈は聴いた人それぞれが思ったことが正解だと思います。
ただ、私はAimerさんの歌詞を考察して垂れ流すのが趣味なので、気にならない人だけ見て下さい。

トリルのMVは公開されているので、↓に載せておきます。

よい曲、よいMVですね。

トリルは悲しみを愛する(肯定する)曲であるという話をしていきます。

先に注意なのですが、この考察は歌詞の解釈と、MVの解釈がどちらもでてきて特に分けていません。MVがとてもAimerさんの世界観の理解度が高く、MVの解釈と歌詞の解釈が同時並行で同じゴール(主張)に辿りつくためです。

では考察していきます。

■補足

この考察を初回に書いたのは、2021/04/13で、夜の国1話が公開される前のやつです。
夜の国が公開されていって、修正できそうな部分は修正していくつもりです。

1話最高でしたね。ただ、ヨルさん何者なのか結局まだよくわかんなかった。
↓の「鳥さん」と説明してる、ヨルさんあたりの修正は今保留してます。

■1番の物語は別れを受け入れる物語

・歌詞の「君」は失った存在

「かすれた声のまま消えた君は帰らないから  冷たい夜空のよう闇の中沈んでゆくこと」
と歌詞にあるように、トリルは失った存在「君」の悲しみを歌っています。

「10日前からこんな毎日過ごした程度で怖がって」
「10日前から」と言及があるようにその存在を失ってからあまり間がない様子です。

画像1

MVでは犬が失った存在にあたります。(多分犬は亡くなっています)

フリーペーパー『別冊Va』にも、トリルがそういう歌であるという言及があるので気になる方は全国のTSUTAYA RECORDSでもらって下さい。
2021/4/13現在ならまだ間にあう可能性があります。


・思い出による慰めと別れの受け入れ

「揺れるトレモロのように囁く言葉が 失くした記憶の灯火を」
「そっと胸の奥で揺らめかせて 平気なんて嘘ばかりで」
「君は幻の翼で空に浮かんで 得意げな顔でおどける」
「ふいにふりしぼる その笑顔が さよならの合図なんだと わかっていた」

1番のサビの歌詞は、ふと囁いた言葉から「君」との思い出を思い出し、その思い出に慰められながらも、その「君」との別れ(死)を受け入れたのだと、私は捉えました。

06_幸せそうな女の子を見つめる女の子

07_女の子の涙

MVでは、鳥さんや犬のぬいぐるみ達との冒険を通して、犬との思い出を思い出し、犬の死を受け入れているように見えます。


09_寄り添う鳥さん_丸の説明

「さよならの合図なんだとわかっていた」の歌詞の部分では2つの寄り添っていた点が離れ離れになるのが印象的です。別れを象徴していると思われます。


・実はMVのストーリーがSleepless Nights⇒Midnight Sun⇒DAWNの物語?

Sleepless Nights⇒Midnight Sun⇒DAWNは、Aimerさんの1st、2nd、3rdアルバムの事です。
1st、2nd、3rdのアルバムは、夜の3部作と呼ばれ、Aimerさんが「夜」(悲しみ)をテーマに作ったアルバムとなっています。
以下に示すように、MVではそれらのアルバムの物語と思われる描写がいくつも登場します。

これらのアルバムの物語を引き合いに出すことで、暗に過去の悲しみの物語という事を示唆しているのだと思われます。

04_Sleepless nightsの観覧車

「Sleepless Nights」のアルバムのジャケットを思わせる観覧車がでてくる。


03_真夜中の太陽

「Midnight Sun」のアルバムタイトルを思わせるような、真夜中に存在する太陽のようなものがでてくる。

アルバム「DAWN」の最後の方の曲の並びは、「Brave Shine」⇒「キズナ」⇒「DAWN」⇒「MOON RIVER」です。

05_BraveShineを思わせる光

MVでは、「Brave Shine」を思わせる大きな光が。

05_崩れ落ちる星座

そしてその後に星が降ってきます。
「Brave Shine」の歌詞「崩れ堕ちてゆく星座が 傷つけあう夜」とあるように、Aimerさんの1st~3rdまで続いた夜は、最後に星が墜ちてきて終わります。
そして、星が墜ちる事により「DAWN」の歌詞「何より暗いのはそう夜明け前」に繋がります。

06_幸せそうな女の子を見つめる女の子

また、「Brave Shine」を思わせる光の後には、犬と女の子の思い出が映し出されます。
それは犬と女の子の「キズナ」ともとれます。


■この歌における「星」とは

2番の話に行く前に、この歌における「星」とは何かという話をします。
この歌において私は「星」を「思い出」と捉えました。

・トリルの歌詞での星

1番の星についての歌詞「散らかったおもちゃや 吐き捨てた泥んこさえも 美しく輝く星屑を探してたんだね?」

「散らかったおもちゃ」や「 吐き捨てた泥んこ」は「君」との思い出を象徴するものだったのではないかと思われます。
「散らかったおもちゃ」は一緒に遊んだこと。「 吐き捨てた泥んこ」は暴言を吐いたと解釈して、喧嘩したこととかですかね。
「星屑を探してた」は、私は「素敵な思い出を作っていた」と捉えました。

2番ででてくる「星」についての歌詞は後で述べます。


・MVでの星と鳥さん

MVにも星がでてきますが、その星も私は歌詞と同様に思い出と捉えています。

02_パソコンに映る星

なぜMVの最初がパソコンからはじまり、そこに星が映っているかというと、パソコンに思い出が詰まっているからです。

鳥さんは、星を観測したり、女の子に思い出を見せたりしています。
なので、鳥さんは思い出の管理者のような存在、というか思い出そのものだというのが私の解釈です。
(星が1つ1つの思い出で、鳥さんが思い出の総体のイメージ)

また、鳥さんの形状なのは、歌詞にある「あの日見た絵本」の登場人物のイメージが混ざっているからだという予想です。


・Aimerさんにとっての星

前に述べたようにAimerさんの1st、2nd、3rdのアルバムは、夜を表すアルバムでした。
その時期は以下の様に星をテーマにした曲がたくさんでてきます。
・六等星の夜
・冬のダイヤモンド
・ポラリス
・星の消えた夜に
・星屑ビーナス
・7月の翼⇒はくちょう座の話であってる?
・LAST STARDUST

など

星はこの時期のAimerさんの歌の象徴のような存在です。

そして、現在のAimerさんの歌詞には「星」や「星座」が過去の楽曲を示唆する言葉として使われています。(と私は思ってます。)
例:STAND-ALONE

今回においても「星」は思い出と訳して意味がとおるように、過去を示唆するものとして使われています。(と私は思ってます。)


■2番の物語と消える鳥さん

・消える鳥さん

2番のMVでは、鳥さんの顔が消えており、また1番と同じ物語をたどりながらもその画面は少し曇って見ずらいです。

10_顔が消える鳥さん_02

先ほど言いましたが、私の考えでは鳥さんも思い出です。
なので、私はここで表しているものは薄れていく思い出を表しているのではないかと思います。


・思い出が薄れることへの恐れ

2番の歌詞には思い出が薄れる事への恐れが見られます。
「明日になればまたこの空は違って見えるかな? 大人になればただ目を閉じて眠ってしまうかな?」

「明日になればまたこの空は違って見えるかな?」は、現在は思い出(星)が見えている空が、思い出を忘れてしまう事で景色が変わっていくのではないかという恐れを抱いています。

「大人になればただ目を閉じて眠ってしまうかな?」
1番では「Only oneの Lonely night 眠れないまま」という様に悲しみ(思い出)を抱えて眠れていませんが、大人になればそれも忘れて眠れてしまうのではないかと、「君」を忘れる事を恐れています。

「繋がれた鎖やせわしない時計の針が 美しく輝く星屑を連れて行くんだね」

「美しく輝く星屑」が美しい思い出を表しており、それが「繋がれた鎖やせわしない時計の針」によって、失われていく事を意味しいます。

「せわしない時計の針」は時間を表します。

「繋がれた鎖」については、私はその失った存在「君」と会えない事と捉えました。
現世に繋がれて、あの世にいる「君」に会えない事が「繋がれた鎖」であると考えました。

「君」の思い出が、会えない事や時間経過で劣化していく。失った悲しみが薄れるほどにその存在を忘れてしまったのではないかという悲しみ、が語られていると私は捉えました。

蛇足ですが、星の輝きが消える表現は、別の歌「STAND-ALONE」でもでてきます。
「星座すら逃げ出して 一人立ち尽くす星の見えない夜 STAND-ALONE」
こちらでもトリルと似た、過去の輝きが消えていく、そんな悲しみが語られているのだと思われます。

・過行く時間を見つめる「君」

「君は瞬きと共に過ぎてく時間も 遠くから見てると微笑んで」

失った存在「君」は、そんな主人公の想いを感じながらも、遠くから微笑んで見守っているのでした。


■ラスサビと悲しみを愛すること

・悲しみを子守唄に

「揺れるトレモロの夜にきらめく雫が集めた奇跡を音にして」
「ずっと憧れてた夢見ていたおやすみの合図のように」

揺れるトレモロの夜
⇒「君」を思ってトレモロのように「君」の言葉を囁いた夜

きらめく雫
⇒涙の事

揺れるトレモロの夜にきらめく雫
⇒「君」を思って泣いた事
⇒終わらない夜に泣いたこと(六等星の夜の歌詞)

ずっと憧れてた夢見ていたおやすみの合図
⇒この前の歌詞が「集めた奇跡を音にして」と音に関係ある事、また「おやすみ」に関係があり、憧れをいだくものを考え、「子守唄」なのではないかと思いました。

この歌詞から、悲しみの経験をみんな癒す子守唄ような歌にしているAimerさんの姿が垣間見えます。


・トリルとは

「そして思い出は二人の音を結んで 途切れないトリル奏でる」
失った存在「君」と主人公を思い出が結んでくれる。

失った存在「君」の音と、主人公の音、によってトリル(2つの高さの音を相互に反復する)の響きが奏でられる。
そのトリルによって、他の人を癒す「トリル」という子守唄ができている。

自分の悲しみの思い出によって、他の人の悲しみに寄り添う子守唄を歌う、Aimerさんの姿が想起されます。

「君」を失っても、悲しみが薄れても、「君」と主人公(自分)を思い出が繋いでくれ、美しい響きトリルとなって、他者を癒す子守唄となる。
「君」との思い出が主人公(自分)を、他者の悲しみにも寄り添える優しい人にしてくれている事を意味しているのだと思います。

・生と死の循環

また、このトリルはアルバムWalpurgisを通して埋められている思想、ケルトの循環思想(ここでは生と死の循環)でもあります。

トリルという演奏の技法が、2つの高さの音を相互に反復する、2音を行って戻っての繰り返しなのです。つまり2音の循環なのです。

「そして思い出は二人の音を結んで 途切れないトリル奏でる」

は、「君」(死者)の音と、主人公(生者)の音の循環になるので、生と死の循環になります。
先ほど言ったように、「君」との思い出が主人公(自分)を、他者の悲しみにも寄り添える優しい人にしてくれています。
「君」(死者)が主人公(生者)に力をくれているので、ケルトの生と死の循環の思想に合致します。

ケルトの生と死の循環については、一応リンク先の「サウィン」という冬の始まりの死者を供養する行事の欄を見て貰えると、もしかしたらケルトの死生観が伝わるかもしれません。(他は長いので見なくて大丈夫です。)

・鳥さんの正体2

鳥さんの正体は思い出そのものと言いましたが、実は別の正体があります。
それは、成長した主人公自身です。

もう一度MVの最初のパソコンのシーンを見て下さい。
ここには星が映し出されています。

02_パソコンに映る星

そして、次のシーンは星を観測する鳥さん。

01_星を観測する鳥さん

パソコンから見える星は、鳥さんが望遠鏡を覗き込んだ時に見える景色と一致しています。
つまり、パソコンが望遠鏡であり、主人公自身が鳥さんなのです。

思い出(悲しみ)は時を経て劣化したのではなく、自分の優しさの一部になっていく。
悲しみを味わえるようになったた女の子は、過去の自分自身にも、ひいては悲しんでいる他者にも寄り添える、優しい存在(鳥さん)になったのでした。


・失った存在からのメッセージと悲しみを愛すること

「夜がつきつけるその明日も あの日見た絵本のように愛していて」
「君を打ち付けるその涙も 朝を待つ世界のように愛していて」

MVでは、この2つの歌詞は、歌詞内でわざわざかぎかっこがついています。
これは、失った存在「君」から、自分にあてたメッセージにあてたメッセージであり、Aimerさんからのメッセージなのでしょう。

絵本は、以下のような性質が思い出と似ているので、引き合いに出しているのだと思われます。
・子供の時と大人になった時(時間経過)で捉え方が違う
・自分に寄り添ってくれる存在
・自分の優しさをはぐくんでくれる存在


夜(悲しみ)がつきつけるその明日も、自分を優しい人にしてくれるもの、もしくは自分が優しくなれた証拠。
君を打ち付けるその涙も、それを越えた先にある、素敵な世界、素敵な自分になるためのもの。
だからこそ、悲しみを愛していて。

ということなのだと私は受け取りました。

15_愛していて

-おわり-

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