日常に対位法を取り入れよう!
ごきげんよう。航路志望人です。
皆さんは、演出における「対位法」という技法をご存じでしょうか。
具体例としては、映画「時計じかけのオレンジ」にて主人公アレックスたち一味が暴力をふるう凄惨な場面に、アレックスが口ずさむ「Singin' In The Rain」の陽気なメロディを組み合わせたシーンなどが挙げられます。
他にも、血みどろの残虐な場面に聖歌やクラシックのような美しい音楽を組み合わせる手法もよく見かけるでしょう。
そこで私は考えました。
「映画のみならず日常の色々な場面にも応用できるのではないだろうか?」
要はある場面の持つ感情や雰囲気を掴み、その対比となる音楽を見つけ出せばいいわけです。
これをマスターすれば、変わり映えのしない日常もドラマチックに、色彩豊かなものになるかもしれません。
早速やってみましょう。
パターン1:「喜んでいる場面」
先程引用した説明文では、「悲しい場面」の例が挙げられていました。
そこで反対に、「喜んでいる場面」を用意してその対比となる音楽を見つけてみます。
まずはなるべく様々な日常の場面に対応させられるよう、できるだけシンプルかつ視覚的に感情が分かりやすいものが良いでしょう。
ご覧ください。喜んでいる場面です。
振り上げられた拳、雄叫びを上げているかのように大きく開いた口、この男性がまさに喜びの最中にあることは明白です。
表情から察するに、何かに勝利した、あるいは大成功したことに起因する喜びとも推察できます。
喜んでいる場面を用意できたので、次にここに付ける音楽を探してみます。
対比ということで、悲しい・落ち込んだムードの楽曲が良いでしょう。
〈検索中………〉
見つけました。
The Smithsの「Asleep」です。
ピアノの美しくも寂しげな旋律とダウナーな雰囲気の歌声が醸し出す独特の脱力感、睡眠への渇望、"ここではない、より良い世界"へ行きたいという思い、そして終盤では「Bye」と繰り返されることから、眠りさえ超えた先にある永遠の休息、即ち「死」へのほのかな望みさえ感じ取れます。
これは「喜び」とは対比となる音楽でしょう。
では場面と音楽が揃ったところで、この二つを組み合わせてみましょう。
🌪️🌪️🌪️🌪️🌪️
〜♪
「イェーイ!!勝ったなガッハッハ!!!」
「…ハッハ……
…ところで"勝った"って何だ?俺は一体何と戦い、何に勝ったというのだ…?」
「そもそも、俺が求めていたのは本当に"勝利"だったのだろうか…?」
「…分からない……何も……何も………」
喜びに満ちた表情からは窺い知ることのできない、内に秘められた切実な心情が浮かび上がってきました。
表面と内面との対比、これぞまさに対位法です。
パターン2:「食事の場面」
私たちの日常に欠かせないものの一つといえば、食事です。
生きていくには不可欠、ルーティン的なこの行為にも、対位法を用いることで何か新しい色彩が加わるかもしれません。
食事中の場面です。紛れもなく飯を食っています。
ではこの場面の対比となるような楽曲を探してみます。
〈検索中………〉
INUの「メシ喰うな!」です。
読んで字のごとくです。
では準備ができたところで、場面と音楽を組み合わせてみましょう。
🧙♀✨🥄🍲✨
〜♫
「あ~~!メシうめえなぁ!!うめぇ!うめぇ!!」
「パクパクパク!!ムシャムシャムシャシャ!!」
「ガシャガシャ!!
ぐァつぐァつぐァつ!!!」
どうでしょうか。
歌詞との対比で、食事を夢中で貪る姿に強烈なメッセージ性が生まれました。
何気ない場面にも意味を持たせる、これも対位法の効果の一つですね。
パターン3:「叱られる場面」
親、学校の先生、職場の上司などなど、自分より上の立場の人からの厳しいお叱り……
これは出来ることなら避けたい、もしくはせめてお手柔らかに願いたい場面です。
ここに竹刀を装備しながら何かしらにブチギレている怖い人を用意しました。
この場面の対比となる音楽とはどんなものでしょう。
怒り・叱りの対極ですから、ラブコール、つまり愛の告白といったところでしょうか。
また、このいかついオジサンの反対ということで、可愛い女の子の歌う楽曲が適しているでしょう。
探してみましょう。
〈検索中………〉
せ〜の♫
アニメ「物語シリーズ」に登場するヒロインの一人、千石撫子(cv:花澤香菜)の「恋愛サーキュレーション」です。
想いを寄せる「あなた」への愛を綴りながら、端々にちょっとヤバめの思考も垣間見えるキュートな歌詞を、浮遊感のあるサウンドにマッチした甘い歌声が引き立てる楽曲です。
ちなみに筆者は八九寺真宵が好きです。
ではさっきのブチギレてる人と組み合わせてみましょう。
👨⚡🏭⚡👩🦰
〜♬♬
「テメェ!!フザケてんじゃねェぞコラァ!
そんなんじゃだめだろうがぁ!!そんなんじゃオラァア!!!」
「千里の道も一歩からだろうが!石のように固い意志を持て!死ぬ気でやれや!!」
「___俺は、お前に逢えて良かった」
なんということでしょう。
曲の方に彼の自我が引っ張られてくれたおかげで、キツイお叱りの場面がドラマチックなシーンに姿を変えました。情緒大丈夫か?
対位法は使いよう次第では自分に都合の悪い場面さえコントロールできるようです。
パターン4:「悩む場面」
日常を重ねていく中で、悩み事というのは尽きないものです。
ときには解決の糸口さえ掴めず、考え込んで塞ぎ込んでしまうときだってあることでしょう。
暗い部屋で、一人膝を抱え、見るからに悩んでいる人です。もしかしたら、誰かに相談することさえ憚られるほどに深刻な悩みなのかもしれません。
では、この場面の対比となる音楽を探してやりましょう。
ところで、悩みがあることそのものは決して悪いことではないのです。しかし考え込み過ぎたり、ついには自己否定に走ったり、そうなる前に適度に忘れてしまって、自責の念に囚われすぎないことが肝要だったりするのです多分。
そう、ちょうどそんな楽曲が……
植木等の「スーダラ節」です。
なんとも気の抜けた曲調に乗せて自身の失敗をつらつらと述べながら、まるで気にしている様子も反省の色も見えません。
かくありたいものです。
では先程の場面と組み合わせてみましょう。
👩💭🕺🕺🕺🕺🕺🕺
~♪♪
(はぁ……私、何であんなことしちゃったんだろう…いくら酔っていたとはいえ…)
(あれも…分かってはいるけど…やめられなかったのよ……もうボーナスだって空っぽだわ……)
(…………)
♪ア ホレ スイスイ スーダララッタ
スラスラ スイスイスイ
スイーラ スーダララッタ
スラスラ スイスイスイ♪
「まぁいっか!!!踊ろ!!!!」
悩みが矮小化されました。
しかし悩み事なんか本来こんなもんでいいのです多分。
対位法は精神衛生にまで効果があるとは驚きですね。
まとめ
今回は4つの場面に対位法を用いてみました。
いかがでしょう。意外と汎用性が高いといえるのではないでしょうか。
皆さんも対位法を日常に取り入れて、退屈な日々にオサラバしてみましょう。
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