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予防接種の問診のコツ(個人的見解)

ワクチン接種において、相変わらず問診医の需要は高い状態です。さまざまな方がバイトなどでも入ることがあるかと存じます。
私も時折担当しますが、隣のブースから聞こえる声などから、色々な問診スタイルがあるものだと感じます。

そこで個人的な見解にはなりますが、ワクチン問診の時の「情報を得やすい」聞き方を、心理学的な面からご紹介したいと思います。

ポイントは
・肯定形を使う
・強調するところを大事に、緩急をつけて
・診療より丁寧に

です。

質問は肯定形で

例えば、内服薬があるのに実は書いていない方がきたとします。
(体感、半数程度が書いておらず、聞き直すと飲んでいることはよくある・・・)

その際に、どの様な聞き方をすると答えやすいでしょうか。
①「内服している薬はありませんね」と念を押す
②「内服している薬はないですか」と聞く
③「内服している薬はありますか」と聞く

私は③だと思います。
些細な違いに聞こえるかもしれませんが、特に①の聞かれ方をした時に、「いや、実は・・・」と答えるのは難しいですね。
逆に、③の「ありますか」という質問には、「ないです」と答える必要があります。あるものを「ないです」と答えるのは心理的ハードルが高い反面、「ないですか」に「はい」と答える方が楽なのです。故にきちんと答えてくれる可能性が高くなります。

これはアレルギー歴でも同じことが言えます。「アナフィラキシーショックを起こしたことはありますか?」と聞いた方が、答えやすいのではないでしょうか。
実は問診票の質問項目を見ると、全部肯定形質問で書いてあります。そのまま聞けば良いのです。

緩急をつけて

特に職域接種などでは1日8時間で400人近くに問診する事もあり、1人1分が指標になります。
そんな中、流れる様に話し続ける先生もおられますが、私はあえてゆっくりする部分があります。
それが、「理解してほしい部分」「指導」です。
聞く項目については流れるように聞いてもいいと思いますが、例えば「本日は激しい運動・飲酒は控えてください」と話す部分。あえて「激しい運動」「飲酒」を気持ちゆっくり言っています。
問診は、聞き流しながら適当に答えている人も多いので、敢えて話の流れを遮ると、パッと気がこっちに向きます。意識に留めて欲しい所はあえてゆっくり言うのは、聞いてもらう上での一つのコツです。
基本的に医者というのは早口だと思うので、我々が普通だと思っているスピードでは聞く側からすると早い、というのはよくある話だと思います。是非要所だけでもゆっくりを心がけてみてください。

ちなみに「今日の体調問題ないですか」しか聞かない方もおられますが、早く進めても次の接種がドン詰まるので、雑になっているだけで意味がないと考えています。流石に内服・アナフィラキシー歴くらいは再度聞く方が良いかと思っています。
先ほども申し上げましたが、特に内服は書いてない方多数です。抗凝固薬などが含まれていることもよくありますので、改めて聞くのが良いと思います。

迷走神経反射の鑑別

問診票の中で直して欲しいと思っている一つに、「これまでに予防接種を受けて具合が悪くなったことがありますか」という質問があります。
会場でも時々見られ、かつアナフィラキシーとの鑑別を要するのが迷走神経反射ですが、これは既往歴が重要な情報になります。
そして迷走神経反射の既往歴を聞くには「採血で気分が悪くなったことがないか」というのが感度の高い質問だと思います。

私は1回目接種の時には必ず「採血やワクチン接種で具合が悪くなった事はないですか」と聞き直しています。「いいえ」になっていても、採血を聞くと「はい」と答える方はいるので、その方は可能なら臥床接種にしています。

丁寧に

CDCも推奨していますから、私は(未成年除き)全員に飲酒しない様に指導していますし、周囲にもその様な方が多い印象です。
しかしその時に、結構「今日飲酒はだめですからね」と仰る先生が多いのです。これは接種看護師にもよく見られると思います。
(もっと上からな方や、言い捨てるような方も少なくありません・・・)

普段、病院で患者を相手にしている時は、患者は必要があって病院に来ており、そのような対応でもあまり問題にならないかもしれません。(問題ですが)
しかしワクチン接種は殆どの方がその日健康で来ています。ある意味普段の医療より「接客業」に近くなっていることを意識すべきだと思っています。
せめて、「今日は飲酒を控えてください」、強く言っても「本日は飲酒しないで下さい」であるべきです。

同じ様な聞き方で、「薬は飲んでない?」もどうかと思っています。「何かお薬を飲まれてますか」くらいの聞き方はしたいものです。
私は最初に挨拶し、質問・指導は全部敬語でする様にはしています。それでも大体2回目接種なら40秒で済みますし、少し急げば30秒になります。

まとめ

細かいことかもしれませんが、問診の一つ一つは私は「リスクヘッジ」だと思っています。
ハインリッヒの法則では、「1つのアクシデントの裏に、29の重大インシデントと、300のインシデントがある」と言われますが、これも同じことではないでしょうか。
抗凝固飲んでいるの気づかなかった、や既往歴フォローできていなかった、による1つのアクシデントをなくすには、インシデントを可能な限り無くしていく努力が大事です。

その為に、少しの質問をケチらずに行う、それだけでも「ちりつも」の効果があると思います。

ぜひ参考にして頂けたら嬉しいです。

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