「立憲的改憲」を通じて同志的な活動をしてきた山尾志桜里さんと伊勢崎賢治さんが、ウクライナ問題については対照的意見を発信している。その対立点は、きのう投稿した「櫻井よしこ氏vs橋下徹氏」と相似形、同じ根源的対立なのである。保守かリベラルより、もっと根源的な問いに関する対立なのである。

 伊勢崎賢治さんと菅野志桜里(山尾志桜里)さんは、山尾さん著書『立憲的改憲』の対談で意見の一致度は割と高く、二人でそのテーマでのイベントなどの交流も盛んにしていたが、今回のウクライナについては、立場、意見が異なる。


伊勢崎さんツイッターで

「「自由と民主主義より命が大事」というウクライナ市民がいるはずです。”一億玉砕”の悲劇を味わった日本人だからこその共感ではないでしょうか。現地で頑張っている日本のメディアの方々。ぜひ、そういう声を拾ってください。ものすごい同調圧力の下ですから、発言する人々も命がけでしょうが。
停戦=喧嘩両成敗ではありません。停戦は市民の犠牲を一刻も早く無くすための戦況の凍結。主権や帰属問題などの決着は、その後の和平交渉です。いずれも両者の主張の妥協点を探す試みです。悪魔と妥協するのか!という非難は、ウクライナ危機に限らず、いつでも仲介者に向けられます。」


という意見。


一方の菅野志桜里さんはFacebookで

「ウクライナの徹底抗戦を尊重するのは、日本とは全く違う厳しい条件で歴史を生き抜いてきた人々に、命の個人主義を押し付けることは不遜だと感じるから。
さらには、降伏しても殺戮蹂躙されるかもしれない状況で、国民が団結して国を守り家族を守り尊厳を守ると決めたその選択に対しては、最大限尊重する以外の選択肢がないから。
さらに私自身は、ウクライナが軍事的にはたった一国でプーチンに抗い、私たちの自由と民主主義の防波堤になっていることに心が痛み、尊重にとどまらない最大限の支持を届けたいと思っています。
ただ、ウクライナの選択を支持するか、どのように支持するのかは、国によって人によって違いがあるのは致し方ない。
でも、ロシアよりNATOを罵り続けたり、ましてやウクライナに責任転嫁したりして、独裁者お得意の「お前も悪い」理論に乗っかり、プーチンの侵略戦争の正当化に加担するのはやめてほしい。」


と投稿。


政治的立場は正反対の二人、橋下徹氏と櫻井よしこ氏の対立も、
「市民の命を大切と考え、とにかく停戦を優先する」(橋下氏と伊勢崎氏) 

「ウクライナ人の、命をかけても祖国を守るという決意を尊重する」(櫻井氏と菅野氏)
という対立は相似形である。


 もちろん、橋下氏と伊勢崎氏、櫻井氏と菅野氏の政治的立ち位置も、専門領域や経験も、個別的具体的に想定提唱している解決策も全然違うことは当然。ここに挙げた四名の方はそれぞれ「一緒にされてはたまらない」という気持ちであろうことは想像に難くない。申し訳ない。

 違いはよく承知しているが、問題の根源に着目すれば、この対立こそが、ウクライナ問題が突きつけるいちばんラジカル(根源的)な問いなのだと思う。

 本当に根源的なところでの「命を何より尊重して、ひとまず停戦を優先した後に、停戦後の和平交渉で紛争原因となった事態を解決しましょう」という立場と「ウクライナの人が命をかけて戦うという意志は最大限尊重する」という立場の対立は、リベラルと保守の対立とは別軸で、本気で、真剣にこのことに向き合うならば、どうしても自分につきつけられる問題だ、と言うことなのだよね。


 そこまでつきつめて考えない人の言うことは、聞くに値しないと思う。僕は、多くのリベラル野党の政治家に、心からがっかりしている。あなたたちが護憲を言ってきたことはなんだったのかと思う。


 この四人は、立場は全然違うけれど、ことの本質はそこだ、というところまで考えた上で、発言をしている。そのことを、今、発言するリスクまで理解した上で、覚悟を決めて発言している。


 僕は伊勢崎さんの立場と意見に賛成です。

昨日も紹介した、伊勢崎さんが、自身のNHKに登場した過去動画を紹介するツイート
「「自由と民主主義は命より大事」という国民の意思は、外力の支援を得て意図的につくられます。17年前に、僕が実際に経験したことから、これを語る貴重な記録です。この頃のNHKは大したものでした。繰り返しの掲載ですいません。」

というのが、真実だと思うから。

17年前の、伊勢崎さん出演、必見の動画はこちらから



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