『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』 柳川 範之 (著), 為末 大 (著) ハウトゥ本をバカにして読まない、というのも、僕の思考のクセなのだ、と思って、今回は敢えて読んでみた。生き方の話だとヘビーすぎる課題なので、スポーツ・武道の話としてとりあえず受け止める。


為末大さんと東大経済学部教授 柳川範之さんの共著『Unlearn』という本、Amazonで買っていたのが、さっき届いた。本文、初めの方から。

アンラーンをわかりやすく言い換えるとすれば「これまで身につけた思考のクセをとり除く」です。


思考のクセがひどくなっているという自覚はあるので、普通はこういうノウハウ本的なものは読まないのだけれど、ノウハウ本をバカにして読まないのも思考のクセだと思うので、えいやと買ったのでした。

Amazon内容紹介

過去の学びや蓄積を最大限に活かす
新しい成長の技術
アンラーンとは、「学ばない」ことではありません。過去の学びから、クセやパターン、思い込みをなくすことで、新たに成長し続けられる状態に自分を整える技術です。
以下の項目に1つでも当てはまる人は、アンラーンで「学びの効率」が上がります。
□何かをしない言い訳に「(仕事が)忙しくて」とつい言ってしまう
□自己紹介では会社名や肩書を入れるのが当たり前
□最近、ワクワクすることが減った
□「疲れた」などの、ネガティブな口グセがある
□周囲の人との会話が、毎日同じような話題ばかり
□仕事とは別の分野の「学び」をしていない
□この1か月で、仕事関係者以外の人と会った人数が3人以下
□「以前はこうだった」「こういうときはこうするものだよ」と前例で説明したくなる
「新しいインプット」の前に絶対不可欠な
「学び、成長し続けられる自分」の整え方

これを買うちょっと前に書いた、Facebook投稿。

3月4日 23:03 ·
さっき、昔、現役時代に、とある会社の社長さんの話し相手という仕事をしていたとき、その社長さんが、自分の会社のトイレの掃除をしているのに出くわしたことがあるっていう投稿をしたけれど。
 あれを書いていて思ったのだが、「大会社の社長の話し相手」という不思議な仕事を、けっこうたくさんやったんだよな。
 二時間ほど、社長のあれやこれやの悩みを聞いて、その場で思いつくことを答えて、次の回までに、今日話したこと、軽くメモにしておきますね、みたいな仕事。広告やマーケティングという僕の専門だけじゃなく、全然、専門外の、事業戦略とか、人事や組織の話とか、そんなことも話題になった。なんで僕に聞くんだろうと思いつつ、専門ではないですが、と思いつくまま話していた。それで、なんだか喜んでもらっていたようだ。
 思い出すに、30代から40代前半までだったんだよね。あれ、50代後半から60代の社長さんが、「若い奴の意見を聞きたい。自社社員だとびびったり忖度したりして本音が出ない感じがするから、社外の若いやつの意見を聞いてみたい」っていうニーズがあって、そういう相談を電通の営業局の部長さんとか局長さんが聞いてきて、適当なのおらんか、といって「ああ、原なんかどうだ」って連れて行かれていたんだよな。
 あれ、「若い奴」っていうのが大事だったから、社長から見て「若い奴」感がなくなった40代後半になると、ぱったり無くなった。そういう仕事。
 そして、僕が話を聞きたくなるような、優秀な電通の若い人っていうのが出てきて、そういう人たちに、その種の仕事は回るようになった。なるほどなあって思ったわけでした。
 そういう経験をしてきたから、齢をとったら、はやいとこ隠居するのがいいなと思うようになったのだよな。そして、無理して決断しなくても、自然に仕事がなくなって隠居することになりました。めでたしめでたし。

 ここでは問題を、「若さ」と「若くなくなったから」って書いているけれど、これ、単に年齢や見た目の若さだけじゃなく、古い思考の型が固まっちゃった人間の話は、社長さんにとって価値がなくなった、ということが本当のことなんだよね。仕事をし続けようとするとアンラーンするしかなかったのだけれど、「ええい、面倒だ」と隠居することにしたわけだ。隠居じいさんになれば、頑固じじいで頭が固くて古くて昔の自慢話しかしないのは、それは隠居ジジイの特権だからさ。

 この本の中でも、かつてパソコンが普及していくとき、当時の50代は若手に任せて、やらずに済まそうとした。それを見てバカにしてきた当時の30代が今の50代なわけだが、彼らもプログラミングからは逃げようとしている、ことが書いてあって(話の本筋ではないが、「アンラーンを阻む壁①「このままでいいんじゃないか」の一例として取り上げられている)、ああ、それは本当に、プログラミングの本、何冊か買って「ええい、無理」と投げ出したのは、私です。はい。

 仕事とか生き方のことと考えると、「わかっているけれど、ええい、じじいを責めても、嫌なもんは嫌だ」になるので、ここは、スポーツや武道のこととして考えることにする。

 為末さんはアンラーンのことを理解させるために、スポーツのの話、例をすごくたくさんしてくれていて、それをそのまんま、スポーツや武道の話として、たとえ話じゃなく考える。(深刻な問題から逃避する。)

 本書の中の例で分かりやすいのが、ウインドサーフィンを初心者に教えているコーチから聞いた話が紹介されている。

ウインドサーフィンには典型的な「二大へたくそ」のパターンがあるそうで(中略)それは運動神経の良し悪しではなく、「ウィンドサーフィンと似たようなスポーツの経験がある人」と「体力に自信がある人」です。(中略)似たようなことをやってきたという自信があるからか、過去に学んだ力の使い方や技術で何とかしようとするの手、新しいやり方を受け付けることができず、結果的に、うまくいかない。なかなか上達できないことが多いそうです。

 さて、武道、格闘技の世界では、今、いろいろな達人がYouTubeチャンネルを持っていて、その異なる格闘技の達人同士が交流して、お互いに学び合うという、いまだかつてないムーブメントが起きている。

 各競技で世界チャンピオンになった人、世界のトップの総合格闘技で戦ってきた人から、スポーツ化していない「秘儀」のように受け継がれてきた古武道や合気道の達人までが、本当に競技や流派の違いを超えて、和気あいあいと交流するという、不思議な世界が展開している。

 で、私はそういうYouTubeを見る。(そして、実はマネしてやってみる)というのが、趣味のひとつなのですね。

 以前にもいくつか紹介してnoteを書いたことがありますが、その中でもすごいなあと思う、交流の中心人物が何人かいて

極真空手の世界大会3連覇にして100人組手完遂者 纐纈卓真先生
合気「やわらぎ道」の石森義夫先生  
ジークンドー ワンインチパンチで衝撃を与えた 石井東吾先生
躰道という、非常に独特な動き(カポエイラのような蹴りを自在に繰り出すの武道の中野哲爾先生
ロシア軍の格闘術システマ北川貴英先生
●合気道 白川竜次先生

という達人の方々が相互交流する。ここに格闘技界の有名人がまじって、交流、体験をする。みなさんご存じのところでは

●ボクシングの伝説 具志堅用高さん、竹原慎二さん
●キックボクシングの、小比類巻貴之さん、那須川天心さん、吉成名高さん、城戸康裕さん
●総合格闘技の朝倉海、朝倉未来兄弟、矢地祐介選手

など、伝説のレジェンドから現役のチャンピォンまでが、体験しては技術交流をする、そういう動画が毎日のように新作が上がってくるのですね。

 で、この達人の方々、それぞれお互いの武道・競技から学ぼうという気持ちはすごく強い。

 のですが、お互いの技術を身に着ける、その能力において「ものすごくすぐに身に着けられる人」「なかなかできない人」に分かれる。

 為末大さんの言う通り、多くの達人が「自分のやってきたことと似ている体の使い方や技術」にひきつけて理解しようとする。

 それが、為末さんの言う通り、うまくいかない原因になる場合と、うまくいく場合がある。本当に似た動きが自分の技術の手持ちにあれば、すぐにできる。そうでないと、なかなかできるようにならない。。

 こういう武道、武術の中でも、いちばん、他の武道スポーツの方が習得しにくいのが、やわらぎ道、合気の石森先生の技術。これ、為末さんのいう「引き算」の度合いが、いちばん極端だから。からだの動きだけではなくて、「攻撃しよう」という気持ち自体を捨てないといけない。相手に強く触ってもいけないし、えいって力を入れても体重をかけてもいけない。

「床に落ちている一万円札を拾うつもりで」「髪をかき上げるつもりで」と、意識の作り方と動作とを完璧に「引き算」しきらないと、できない。

 これを、唯一、すぐにこの「やわらき道の合気」を身に着けたのが、

菊野克紀先生。 沖縄古流空手をベースに世界最高峰の総合格闘技UFCにも参戦、本当になんでもありの「巌流島」で優勝し、今は武道としての独自の道を追及した道場を開いている。何歳になっても強くなれる武道のあり方を求めて、あらゆる武道を研究して取り入れているのだな。

 菊野先生の場合、「意識も身体操作も、どうやったら引き算できるか」という、武道におけるUnlearnの方法を、完全に会得しているかんじなのである。

初めて石森さんに合気を習いに来たところの動画がこれで


それを、もう、極真の纐纈先生に教えている動画がこれ。自分でできるようになるだけでなく、教えられるようになっているところが凄い。

ということで、アンラーン、明らかにスポーツや武道では大切です。

これが、仕事とか、生き方全体になると、アンラーンするの、難しいよなあ。

そもそも、こうやって、やたら大量に本を読んだり動画を見たりする、というインプット過多の学び方自体が、アンラーンに反すると書いてあるのだからなあ。

はてさて、どうしたものでしょうかね。

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