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日野巌と小倉栄嗣の邂逅

『日向郷土志資料』の第一輯のオリジナルは、宮崎県立図書館へレファレンスしたところ、延岡市立図書館に所蔵しているとのことで、所用のついでに複写してきた。その情報は下記にアップしておいた。

この本は、宮崎県立図書館延岡分館の印があった。九州保健福祉大学の山内利秋先生から宮崎県立図書館は火災に遭っているので、延岡市立図書館には宮崎県立図書館に所蔵されていない貴重書が多くあるとのことをうかがった。

さて、『日向郷土志資料』第1輯の原本を見てみると謄写版である。ダウンロードしていただくと分かるように文字が不鮮明で、なおかつ最終ページは破損している。第2輯・第3輯は延岡市立図書館も所蔵しておらず、今後、個人所蔵資料を調査してみたい。

さて、『日向郷土志資料』は、第4輯から小倉栄嗣の文華堂で印刷されることになる。第四輯の編輯後記には、

本誌もこの輯から本印刷にすることになり、口絵もつけ得るやうになつたのは本会としてもまことに嬉しく存じます。一人でも多くの読者を得て、経済的にも実質的にも向上して行きたいと思つて居ります。読者を御紹介下さる様御願ひいたします。

とあり、本誌購買等の問い合わせ先が文華堂書店になっている。この号の奥付の次頁には、第一輯から第三輯までの目次が掲載され、残部があり、その販売も文華堂が窓口となって販売している。更に第一輯から第三輯までを復刻することになる。さらに民俗学関連の雑誌、書籍の広告が掲載されている。なかには自社の刊行物も混ざっている。

昭和八年二月に創刊輯再刊の「再版のことば」には、小倉栄嗣について触れている。

前掲の後記は初版謄写版刷のものに記した記事である。その折の事情と現在とを考へれば今昔の感にたえぬが、それにつけても本誌の印刷発行を引き受けて呉れた文華堂主人の好意を感謝する。宮崎県のことを思へばこそ、私も小誌を発行したのであるが、文華堂主人も亦その意味で利害を超越して引き受けられたものと思ふ。

小倉栄嗣は、昭和4年から出版も始めており、昭和6年9月30日、『日向郷土志資料』第4輯を文華堂書店から刊行するが、この後、日野巌と組んで、昭和14年の第20輯まで続く。おそらく、この第4輯の刊行から日野と小倉の関係が続いたと考えられる。

昭和14年に日野巌『日向郷土読本』が文華堂から刊行されるが、雑誌『日向郷土志資料』の第18~20輯との位置づけである。

 日向郷土読本を以て、一先づ雑誌「日向」を廃刊したいと思ふ。明年は紀元二千六百年であり、諸事すべて一新の気運である。「日向」も昭和六年一月創刊以来、既に八年を経過した。その間、日向の文化に多少とも貢献し得たことを喜んでいるが、この頃は少しく疲れが見えた。この際潔く廃刊したいと思ふ。小倉文華堂主人が経済的にも精神的にも八年余の長い間「日向」を育んで下さったことを読者とともに感謝せねばならない。(中略)
 日向のよさは日向にゐてはじめて知り得る。日向をよく見、よく究めて呉れた人々は、日向に無限の愛着を持つ。日向は幸福な国である。よき友人を多数に持ち得る日向は恵まれてゐる。 昭和14年9月9日


このような研究者の影響を受け、書店が出版、特に民俗学を初めとした郷土研究に進出した例として、鹿児島県の金海堂がある。

今後、この二人の関係も視野に入れ、資料を調査していきたい。

日野巌については、黒岩康博氏が日野の資料を入手しており、今後、公開することを表明しているので、大変期待している。

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/repository/metadata/4672/SBN002302.pdf

一方、小倉栄嗣の関係の資料は保存されていないのか大変興味がある。



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