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そして歩き出す








ようやく読むことができた1冊。







プロデビューと同時期に急性白血病と診断されたアルビレックス新潟所属のJリーガー。3年7カ月を経て公式戦に戻ってきた一人の人間の、ありのままを綴った珠玉の一冊。













短時間ではありますが、同じ空間で共にボールを追いかけたことのある自分にとって、当時このニュースは衝撃的すぎて何度も目を疑いました。

出会いは中学2年生の3月。高知県春野町で行われたキャンプ。その頃からどのポジションでも対応力、戦術理解度、フィジカル的にレベル高くプレーができる本当にオールラウンダーな選手だなぁという印象でした。

その後、彼は94JAPAN世代の代表メンバーに常に名を連ね続けてU-17W杯に出場。チームキャプテンとして3得点を挙げる活躍、準々決勝ではブラジルに惜しくも敗れ幕を閉じました。当時僕はこの大会をテレビの前で見つめていました…

高校2年時にはトップチームに2種登録され、トップ昇格するんだなぁと思っていました。しかし、彼の中でプロサッカー選手と同じくらい幼い頃からの憧れであった教師・指導者という道を将来的に見据え、トップ昇格ではなく筑波大学への進学を選択。

そして大学サッカー最高峰リーグである関東大学サッカーリーグで1年時から中心選手として活躍。2部に降格したチームを主将として率い1部への返り咲きを果たした。さらには4年間で教員免許も取得。卒業後には大学経由で正式にアルビレックス新潟とプロ契約。いきなりリーグ開幕戦から大卒ルーキーとしてスタメン出場、、、







本当に凄すぎます。こんなにも常にブレない軸を持ち続けて目標に対して自分の進むべきを道を決断し有言実行できるって。








誰もが羨むような順風満帆なサッカー人生…

そんな彼に突然襲ってきた病魔。


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この本を読ませていただいて

時に悩みながらも地道にコツコツと夢を叶え、家族や彼女、友達に囲まれた日々…

伝わってくるあまりにも過酷すぎる治療との闘い、そして退院後に待っていた壮絶な現実…

必死に這い上がり、移植手術を行い、闘病、リハビリ、トレーニングを続け、トップチームに復帰するまでの軌跡…







白血病には「完治」という定義は存在しません。常に再発の恐怖と闘い、自分の体と向き合いながら日常生活を送っていくことになります。

その苦しみだったり葛藤だったりがリアルに伝わってきました。本人の努力と強い意志、周りの根強い協力があったからこそで、本人は運が良かったと話していましたが、決して奇跡ではないことが文章から伝わり、彼の人間性を垣間見れた気がします。

闘病中に同じ無菌室で白血病と闘う中学生の女の子との出会い。彼女との繋がりを大切にしている様子や同じアスリートいう立場から池江璃花子さんへ贈ったメッセージなどは彼のパーソナリティの素晴らしさとして受け取ることができました。

あくまでもプロサッカー選手としてピッチに戻るために計り知れない努力をしてきた様子もひしひしと伝わってきました。







急性白血病という病気は非常に難しい病気であることは私も知っていましたが、想像以上に辛いことが多く読み進めるのも辛いものでした。

そんな闘病中の心の苦悩、葛藤といった様々な想いを彼はこの本で「自分の言葉」で綴ってくれています。ただここまで弱い部分をさらけ出し、辛い苦しい事の方が多かったであろう闘病生活を思い出す作業は本当に強い意志がなければできなかったんじゃないかと思います。その時の自分の気持ちを克明に記し、不特定多数の人々に発信するというのは並々ならぬ勇気が必要だったはずです。相当な覚悟を持って共同制作者であるライターと何度も何度も真剣勝負を繰り広げたとありました。そのうえで1冊の本として世に出ているということを考えると本当に1人の人間として尊敬しますし、このようなエピソードを知ることができてよかったです。








白血病の恐ろしさというよりは、病気に立ち向かっていく中で「人との繋がりの重要性」について多く触れられていました。1人のサッカーファンとしてこれからもより一層彼を応援していきたいです。








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