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僕と運命の赤い糸

はじめまして。わっち・チャットポーキンです。

タイBLドラマ「Until We Meet Again~運命の赤い糸~」(以下UWMAと略します)について、つらつらと書きました。半分以上自分語りになってしまいあまり作品の紹介はできていませんが、興味のある方はご高覧ください。

*以下の画像はすべてUWMA日本公式Twitter(@UWMAJP)のものを使用しています。

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今年に入ってからタイのBLドラマにハマっている。
きっかけは2020年はじめの外出自粛・リモートワークなどにより在宅時間が増えたことだが、ただ作品を見るだけではなくて、出演俳優のSNSをチェックしたりファン同士でやり取りしたり、専用のTwitterアカウントまでつくってしまった。タイドラマにはまることを"タイ沼"と呼んだりするが、まさにタイ沼にハマってしまった感じだ。

「なんでそんなにハマったの?」とよく聞かれる。
僕はもともと映画やドラマや舞台を見るのが大好きだったが、たしかに今までタイのドラマを見たことはなかったし、日本でもBL作品にここまでハマったことはなかった。
 自分自身でも興味が湧いたので、少し書き残しておくことにした。

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 どんなジャンルのファンでも、「この作品がきっかけでハマった!」というものがあると思う。そういう作品のことを愛情をこめて"実家"と呼んだりするタイ沼ファンもいる。僕の場合はUWMAが"実家"だ。

 この作品の前に、僕は2本のタイBLドラマを見た。「2gether」と「Love By Chance(以下LBCと略します)」という作品だ。この2本も素晴らしく、だからこそUWMAを見ることにした。
 では、どうして初めて見た作品ではなく3本目に見たUWMAを実家にしているのか。それはこの作品に僕の心に触れる要素がたくさんあったからだ。

「Until We Meet Again~運命の赤い糸~」日本版公式の予告編


衝撃の主人公

この物語は過去(前世)と現代にわたっていて登場人物が多く、脇役もしっかり描かれているためはっきりと「主人公」という感じではないのだけど、物語の中心になるカップルはディーンとパームの2人だ。

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ディーン(画像中央)は強豪水泳部の部長。誰もが憧れる「かっこいい」人物だ。しかも優しくて頼りになるジェントルマンだ。
対してパームは華奢で得意なのはお菓子作り。世の中が思う「男らしさ」とは遠く離れたキャラクターだ。

 よくある話なら、パームは「男らしくない」ってことでからかわれたり、自分自身で悩んだりする。でも、劇中に彼がそのようになることはない。
さらにすごいのは、パームは自身の性的指向についてはっきり言及はしない。彼はそこを問題としないまま、自然とディーンに惹かれる。
ゲイだからでもなく、ストレートなのに、でもない。周囲もそこを突っ込まずに(多少いじることはあるが、悪意はない)、彼の心の動きを自然に受け入れる。お菓子作りが得意と言ったときも、友人たちは「男なのに?」ではなく「それなら家政学部に入ればよかったのに」とリアクションするのだ。

 僕はまず、この描き方に衝撃を受けた。直前に見たLBCのピートというキャラクターはゲイであることに悩んでいてそこにとても共感したのだけれど、パームはそれを超えた世界にいるように思えた。

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(パームが作るタイの伝統菓子の数々もこの作品の魅力のひとつです。食べたくなるお菓子がたくさんでてきます)

中の人に勇気をもらう

 パームを演じたのはナタット・シリポントーン(Natouch Siripongthon 以下愛称のFlukeと呼びます)という役者だ。彼自身も華奢で話し方も穏やか、いわゆる「かっこいい」とか「男らしい」という要素でアピールするような人ではない。日本の芸能界なら、もしかしたら「おねぇキャラ」なんてよばれてバラエティなどでいじられてしまうようなタイプだ。

 急に個人的な話になるが、僕は小さいころから「女の子っぽい」と言われ続けてきた。見た目もマッチョとは程遠く、声も高いし、インドアだし、スポーツよりミュージカルの方が好きだし、思春期になってからも吹奏楽部で女子に囲まれるような学校生活で、「男らしい」と言われるような要素が全然なかった。そのことでいじられたり、心無い言葉を言われ続けてきた。「男らしさ」に憧れてスポーツのクラブにはいったり、体育会系の男子校に入ったが、リアル「SOTUS」みたいな校風はかえって自分は人とは違うんだということを思い知らされただけで、入学後すぐに短期間不登校になった。(その後出会いに恵まれ、今ではいい思い出です・・・でもSOTUSはなかなか完走できていない)

 その後も「女の子っぽい」と言われないように気をつけながら生きてきた僕にとって、パームの描き方とおなじくらいFlukeの存在は衝撃だった。
 彼は「男らしく」ない。でも、自然体でいる。そして、共演者もファンも彼を悪い意味で特別扱いしていない。Flukeとして扱っている。
 僕は今までの人生で、残念ながらこういう扱いを受けている役者に出会ったことがなかった。日本の芸能界でFlukeみたいな人は、いつも無理に個性的にふるまうか、いじられる対象だった。海外でもいわゆるLGBTQの有名人はいるが、どうしてもその面を強く打ち出さざるを得ない。僕にとってFlukeはどれでもなかった。(彼は自身のセクシャリティについて明言していない。) 
 彼を"推し"と言っていいのか分からないけど、この作品を通してFlukeは僕にとって"大切な存在"になった(勝手に同志みたいに感じている。)

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もちろん演技も素晴らしいです。泣きのシーンは必見!

「好き」を疑わない

 話を作品に戻そう。ディーンとパームは30年前にかなわぬ恋をして自ら命を絶ったコーン(写真左)とイン(写真右)という2人の生まれ変わりという設定だ。コーンとインは、第一話の冒頭でショッキングな最期をむかえる。その後、たびたび回想シーンで登場、出会いや幸せなシーンも出てくる。

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「もし僕たちが死んで生まれ変わるとしたら、もう一度出会えると思う?」
「お前を見つけるまで探し続けるよ」
「たとえば、2人が違う大陸に住んでたら?」
「お前のために飛行機を飛ばすよ」
「金持ちだなぁ・・・僕もあなたを絶対見つけるよ。
約束して、僕たちはお互いを必ず見つけるって」
「うん、約束する」
「もう約束したからね。僕たちはいつもお互いを見つける」

2人のこの約束が、このドラマを貫く芯になっていく。 

 また自分の話になるが、とくに自己肯定感が低かったり同性が好きだったりすると、「(相手が好きだという)自分のこの気持ちは間違いなんじゃないか・・・」と思う瞬間がある。自分の「好き」という気持ち自体を疑ってしまうことが。

 恋愛ドラマでもよく葛藤のきっかけになる「同性への恋心」も、このドラマではハードルにならない。だってこれは「運命の赤い糸」で決められているから。前世で2人はまた見つけるって約束しているから。
 そういう意味で「同性の相手を好きになる」って第一段階で登場人物も視聴者も迷わないのがこのドラマの面白いところだし、ちょっとネタバレになるがその「約束」が後半パームの枷になるところもこの物語の深いところだと思う。最終的に、誰かを好きになるときに結局は決められた運命ではなく自分の気持ちを信じるしかないってことを教えてくれる。

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大切なことは本人たちが「好きだ」って気持ちを疑わないかどうか、自分自身で否定しないかどうか。僕も、まだまだ言える場所は限られるけど全力で「好きだ」と言えるようになりたい。

「脇役」がいない

 先ほど言ったように、この作品は登場人物が多い。メインカップルだけで前世と現代で4人、その家族やきょうだい、友だち、そのカップル(スピンオフが決まっているウィンとティームというカップルもとっても素敵)などなどたくさん出てくる。でも、それぞれが丁寧に描かれているのであまり混乱せず、好きになるキャラクターがたくさん出てくる。

その中でも僕がとくに紹介したいのが、マナウ(写真左)。

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BLドラマに出てくる女性キャラは大きく2つに分けられると思う。
簡単に言うと、主人公カップルの障壁になるか、味方になるか。 
障壁の場合は主人公に片思いしていたり、同性が好きだと認めたくない主人公が無責任に付き合う相手だったり、親が無理やり結婚させようとする相手だったり。
味方の場合は主人公の家族だったり、親友だったり、恋のアドバイスや後押しをしてくれたりする。


マナウはどちらかと言えば後者だ。パームとティーム(写真中央)の仲良し3人組でいつも行動している。
ここまでならよくある設定だが、UWMAでは第1話からマナウが大きく扱われている。化粧室でメイクをし、新生活初日の自分に気合を入れ、部活を選び、友だちの応援に行く。普通なら省かれそうな脇役の生活を時間を割いて描くことで、メインの話に絡まないマナウの存在感は決して「脇役」って感じにはならない。
きちんと友だちもでき、部活の発表もがんばり、しっかり恋愛もする。そういうキャラクターひとりづつを大切にするような描き方も、僕がこの作品を好きなところだ。

(このMVを見てください。出演者みんな仲良しなのが伝わってきますよね)[Official MV] โชคดีแค่ไหน Ost.Until we meet again (ด้ายแดง) - รวมนักแสดงด้ายแดง


「前世」を描く意味

 この作品は「前世でかなわなかった想い」を現代で叶えようとする物語だ。物語を見ていくにつれて、それは主人公のカップルだけではなく2人に関わる人すべての人の想いなんだということに気づく。

 設定はファンタジーだけど、僕はこの作品を見て、今まで想い合いながら一緒にいられなかったたくさんの人たちの悲しみの上に、自分たちの幸せがあるんだってことを忘れないようにしようと思った。

 今自分が悩みつつも自分のセクシャリティのために生きるか死ぬかまで追い詰められたりしていないのは、僕の知らない昔にコーンやインのような人たちが必死に生きて、少しずつ世の中を変えてくれたおかげなんだと思う。
 僕も、今でもまだまだセクシャリティのために生きるか死ぬかまで追い詰められている人のために、何かできないか考え続けたい。自分がこのドラマに救われたように。

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(予告編とこの文を読むと「え・・・なんか重い話」って思うかもしれませんね。たしかにシリアスな場面もあるけど、全体的には大学が舞台の青春ドラマです。いま日本のいろいろな媒体で有料配信していたり、DVDも発売していますのでぜひ気軽に見てみてください。)

見終わったら「ルークチュップ」を食べて「カンチャナブリーのいかだホテル」にいきたくなること間違いなし!

 #タイBL  #タイ沼  #UWMAseries  #海外ドラマ 

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