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【北健一郎×金子達仁が語るスポーツメディアの未来】第2回「世の中にないものをぶち上げろ!」

スポーツメディアを取り巻く環境はここ数年で激変している。雑誌は次々に廃刊に追い込まれ、スポーツ関連書籍も元気がない。一方で、アスリートがYouTubeやTwitterなど個人で発信する流れも生まれている。これから先、スポーツメディアはどうなっていくのか、何をすべきなのか--。「28年目のハーフタイム」や「決戦前夜」などでスポーツライターの新たな道を切り開いた金子達仁氏と、ホワイトボードスポーツ編集長の北健一郎が語り合った。


「なんやコイツ」が化学反応を起こす

金子 さて、この『ホワイトボードスポーツ』の編集長という立場は何をするんですか?

 「編集長」というのは言い方としては少し古いかもしれないですね。

金子 古いね。紙媒体に縛られてるね。

 はい(笑)。だからといって「プロジェクトマネージャー」とか横文字にしてもと思うので、わかりやすさで「編集長」にしています。金子さんがやられている『KING GEAR』の「発起人」に近いものはあるかもしれません。こういうプロジェクトをやろうよということで、いろいろなスキルを持った人たちが関わってくれているんです。例えば楢﨑さんのオンライン講習会は、西川結城さんという名古屋グランパスとかをずっと担当されていたライターさんが構成役を担当されています。それ以外にも、テクニカルな分野に強い人だったりとか、多くの人に知ってもらうためのPRに長けた人とか、そういう人たちとチームでやっていく中で、みんなに方向性を示すような役割です。

金子 スタッフの年齢層は?

 僕とほぼ同世代ですね。30代半ばくらい。言い方はアレですけど「金子世代」というか、スポーツジャーナリストに夢があった時代を見てきている。だからこそ「何かを変えなきゃいけない」、「他のやり方はないのか」というのを、みんなで模索しています。「金子塾」を開催された当時は金子さんはおいくつくらいだったんですか?

金子 あれをやったのは2000年だから、34歳かな。

 その時点で後進を育てるというか、若い人たちにチャンスを与えるみたいな考えがあったと。

金子 いや、そんな偉そうなことではなくて、仲間が欲しかったというのが一つありますね。当時、業界でだいぶ浮いてしまったなというのを感じていたので。

 陰口を言われたり、バッシングを浴びたりとか……。

金子 はい。それで、悪口を言い返すんじゃなくて、目指すところや志が同じ人たちと何かできないかなという。本当にそれだけですよね。

 その「金子塾」から巣立っていかれたライターさんたちというのは今、各分野にいるじゃないですか。それぞれに強みがあって、個性的な人材が多い。それは金子さんが「自分の強みを持て」と強調されていたからじゃないかと思うんです。

金子 それは言ってましたね。

 僕は金子さんと同じことはできないかもしれないですけども、チームでやることによって、一緒に関わってくれる人たちにもまた新しいチャンスが生まれたり、可能性が広がったりしていけばいいなと思っています。

金子 「なんやコイツ」というのを入れると化学反応が起きますよ。

 「なんやコイツ」ですか(笑)。

金子 どうしても歳を取ってくると、自分と気の合った人と一緒にいたくなるじゃないですか。そこで「なんやコイツ」みたいなのを入れると、全くもって想像もつかないようことが起きる。自分と全然違うタイプがいることで「ほう、そんな見方があるのか」というのが出てくるから。

 確かに。

金子 「スポーツが好き」、「スポーツやっていました」という人ばかりで固めると発想が似通ってくるでしょ?どれだけ異物と出会えるか。「金子塾」にスポーツをやったことがない、大学では理工学部に通っているというのがいた。それが木崎伸也。

 そうだったんですか!ライター志望者には文系が多いので、木崎さんのように理系出身は珍しいですよね。

金子 「データをこいつにとらせてみたら面白くなるんじゃないか」と。当時、サッカーをデータで分析するというスタイルは全くなかったので、ひたすらいろいろなデータをとらせてみたらすごく面白かった。僕も勉強になったし、入れてよかったなと思いましたよね。

 金子さんって異端児好きですよね。

金子 異端児というかマイノリティ?自分がマイノリティだったので。

 それこそ日本代表とかでも中田英寿さんが入ってきて、最初はみんな「なんやコイツ」だったと思うんです。でも、そういう人間が入ることで化学反応が起こった。

金子 確かに。そういうやつが好きなのかもしれないですね、単純に。本当に、北さんも会ったことがないタイプを入れた方がいいと思いますよ。

 そういう人材を呼び込めるようなメディアになりたいです。あいつらは魅力的だと思われないと「一緒にやりたい」とはならないと思うので。

『KING GEAR』のオンリーワン戦略

金子 メディアを立ち上げられて楽しいですか?

 そうですね。ただ、ゼロから作っていかなければいけないので、実際にお金を生み出すところをどうやってやっていけばいいのかとか、いろいろなアクシデントも発生します。ですが、それも含めて楽しいなとは思っています。金子さんは『KING GEAR』をやられている中で大変さはありますか。

金子 お金を全くかけずにやっていたので、そうそう簡単にうまくいかないなと思っていたんです。でも、やってみると思った以上に「オイシイな」と。

 どういうことですか?

金子 いろいろなところからオファーが来るようになったのと、そこから派生した仕事がたくさん出てくる。選手の方から「出たい」と言ってくれる。今後はYouTubeもやっていこうかなと。あとは、僕らで「スポーツギア」の世界一決定戦を日本でやっちゃおうというのを考えています。

 世界一決定戦ですか!金子さんってスケールが大きいアイデアをぶち上げますよね。「スポーツギアのバロンドールをできないか」というところから『KING GEAR』をスタートされていると思うんですけど。今の世の中にないものをいかに生み出していけるかが大事だと思っているんです。そうすればオンリーワンのポジションをとれるじゃないですか。どこかのメーカーがプロモーションをする時に、サッカーメディアやスポーツメディアに広告を出すことがあるとして、ギア専門メディアは『KING GEAR』しかないから、そこに出そうかってなる。

金子 ちょっと遅かったのが、「陸上のシューズもやっておけば、この厚底の大騒ぎでだいぶ稼げたのにな」と(笑)。厚底のシューズを禁止するかどうかって話題が出たら、専門家を求めてみんな右往左往しているわけじゃないですか。

 金子さんはカー・オブ・ザ・イヤーの選考委員をやられていましたよね。

金子 僕は自動車が好きなだけで自動車のレーサーでもなければメカニックでもないですけどね。

 カー・オブ・ザ・イヤーをスポーツライターが決めるってすごいことですよね。

金子 はい。それを『KING GEAR』でやりたいんです。

 ギア・オブ・ザ・イヤーを。

金子 adidasだNIKEだ、世界中のスポーツメーカーが「お願いします。ウチに賞をください」と頭を下げに来るようなイベントを作りたい。

 ぜひ、絡ませてください(笑)。

金子 いやこちらこそ(笑)。

 お互いに絡めるように。

金子 ね。ぜひ、面白いことやりましょうよ。

※JFN系ラジオ番組「FUTURES金子達仁スポーツプラネット」で3月7日に放送された内容を再構成したものです。

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