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全ての汗に喝采を。

著者名 泥人・手紙男

AIを使えば誰でもセミプロ並みの曲を作れる時代になっているらしい。これを読んでいるあなたもAIを使えば好きなミュージシャンの楽曲を新たに作れる。その楽曲が人気を博す。そうなると、あなたはかりそめのミュージシャン気分を味わえるだろう。そこに愛はあるのだろうか?

Q: 今あなたの作っている曲が世界中で聴かれていますね。一部では、本人より本人だ!なんて騒がれています。そう言われると事についてどう思いますか?
A: 恐れ多くもありますが、素直に嬉しく思います。

Q: 最初にAIDPMの曲を作った経緯をお教えください。
A: 当時私は会社勤めをしていました。なんの変哲もない日々を過ごしていました。私は長年DPMのファンで、通勤の時にはいつも曲を聴いて自らを鼓舞していました。時には、Quit My Jobを聴いて、「そんな事出来ないよ。」なんて、センチメンタルになったり。(笑)
これまで何年も既存の曲で満足していたのですが、ファンの心理としては新しい曲聴きたいなぁと思いますよね。でも、彼らの創作のペースはゆっくりって事も把握しているので、忘れた頃にまた出してくれるだろうと思っていました。その後コロナ禍があって、自分としても辛い日々を過ごし、他のミュージシャンがコロナ禍を経ていろいろと活動を再開していくんですけど、彼らは動かない。解散したのかな?って思うくらいに何もしないんです。(笑)そういう状況の中で、こんなに辛い気持ちを吹き飛ばしてくれるような彼らの新しい曲が聴きたくて聴きたくてたまらなくなってしまったんです。
そこで知ったのが、AIで作曲する方法です。私は音楽聴くのは好きですが、演奏はもちろん、作曲なんて今までした事ないですから方法が分からない。けれど、DPMの新しい曲を聴きたいという熱はある。それで、Google検索で1番上にあったものを使って作ってみました。

Q: なるほど。溜め込んでいた想いが爆発した感じなんでしょうかね。初めて出来た曲を聴いてみてどうでした?長年ファンだった人が聴いてみて「これだ!」みたいな感覚はあったのでしょうか?
A: 本当の事を言うと「これだ!」という感じは薄かったですね。やっぱり自分で仕組んでやってるの分かっていますし。
でも、AIに彼らの音源を学習させているので、彼らの曲としてハズレ過ぎていなかったです。感覚的には、録音はしていないけど存在しているレアトラック的な感じかな?ってくらいには捉えられました。それを盗み聴きしているというか。手ぐせのようなものだったり、歌声だったり、歌詞だったりが彼らなので、やっぱり興奮はしましたね。
それでそれがおもしろくなって、その後何曲も作りました。

Q: その楽曲をインターネットにアップする事に踏み切った経緯はどうだったのでしょう?
A: 最初は好奇心ですよね。今はまだAIが作った音楽の黎明期なので、それなりに注目されやすいじゃないですか。有名ミュージシャンの曲ならそれは賛否両論あるだろうし、あげるの怖いじゃないですか。非難されるのを覚悟して言うと、有名じゃないDPMの楽曲として大量にアップしても誰も気が付かないのではないか。また、それによってDPMの名前を世間に知ってもらういいきっかけになるのではないかと思うようになりました。今でも、後悔というより、これは良いことなんだ!と言い聞かせています。

Q: しかし、それは彼らの名前を騙った詐欺のようなものですよね?印税などはどうしているのでしょう?
A: 私は良かれと思いやったんです。その甲斐もあり、彼らの音楽で生きる道も灯しました。今日もどこかで満杯のお客さんの前でライブをしているでしょう。彼らは幸せそうにツアーをしていますよ。
私がやった事は「悪」なのでしょうかね?

Q: しかし、彼らはあなたの曲をライブでは演奏しません。それは彼らからのメッセージなのではないのでしょうか?
A: はい、実際にライブ観に行った事ももちろんあります。でも、彼らのライブは独特のスタイルですから、構成の段階で外れてしまうのではないでしょうか?
実際に彼らと会った時はみんなニコニコして「ありがとう」と言ってくれましたし。それから、彼らは早いペースで曲を作ってくれるようになったから、私はもう彼らの曲を作っていません。

Q: 現在はどのような活動をしているのですか?
A: 今はSwamp Papaというファンクでブルージーなバンドの曲を作っているところです。

Q: それはオリジナルなのですか?それともまたDPMのようなバンドなのでしょうか?
A: それはもちろん既存のバンドですよ。彼らの音楽はきっとDPMよりもたくさんの人達に届くんじゃないでしょうか?私の技術も上がっているのでね。

私が聴いてきた音楽は汗の音が聴こえた。これからどんな世界になるのか、私には分からない。


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