ドクロピアス男とコミュ力
先日、エアビで部屋を借りて友達と飲み会をした。
「コロナで大変の中、飲み会なんて、けしからん!」とお怒りの自粛警察官の方もいると思うが、そんな些細なイライラはお酒を飲めばすぐに無くなるので、飲み会する事をオススメする。
もっとも、これから僕の書く文章は、そんな心を安らかにさせてくれる飲み会で、抑えきれない激しい怒りが芽生えてしまったと言う話であるのだが。
その飲み会は、男子5人で気を使わずに朝まで無礼講という、僕の一番好きなタイプの飲み会であったが、1人だけ、友達の友達と言うか、顔は知ってるけど喋ったことの無い奴が居た。
その男は身長180くらいの高身長で、強めのパーマを髪に当て、片耳にでっかいドクロのピアスをしている「いかにも」な奴だった。
ハッキリ言えば、僕は見た目からしてもうそいつの事が嫌いだった。こう言う奴で話があった試しがない。
しかし、見た目だけで人を判断するのは良くない。
そんな揺れ動く不安を抱えたまま、飲み会は始まった。
そして、その不安は見事に的中した。
飲み会が始まるやいなや、そいつがまぁ場を回そうとするのだ。僕は静かにしっぽり飲む気でいたのに、話をバンバン回してくる。
しかも、僕が話したら話したで、そいつは「今の話どこが面白いん?みんな分かった?」とか言ってくる。勘弁してくれ。
そんな視聴率0%の踊るさんま御殿みたいな状態に、ぼくはすっかり疲弊してしまい、しばらく黙っていた。
すると話のトピックは、最近の恋愛事情についてになっていた。
そのドクロピアス男は、「しばんには最近どうなん?」と僕に話を振ってきた。
僕は、少し恥ずかしかったが、「ここ数年本当に何もない。」と正直に答えた。
するとドクロピアスはワインを口につけながら、ボソッと呟いた。
「あぁやっぱりね。しばんにがモテる訳ねーかw話つまんねーしw」
ああ、駄目だ。もう我慢の限界だ。
僕は持っていたレモンサワーをそいつの顔面にぶち撒けようと思い腕に強く力を入れた。
しかし、逆に力を入れたことにより怒りが収まっていき、すんでのところで正気に戻って、事なきを得た。危ない危ない。
僕がそんな目まぐるしい葛藤をしている最中、ドクロピアスは悠々とワインを飲み干し、聞いてもないのに喋りだした。
「俺は大学入ってから今まで彼女切らしたこと無いなぁ。ほら、俺って、コミュ力高いから。」
それを聞いたとき、僕は、モテなそうと言われたときよりも、つまらないと言われたときよりも、数段腹が立った。
お前さぁ、コミュニケーションの意味、知ってっか?
コミュニケーションっつうのは、別に自分が言いたい事言って、喋りたいこと喋って気持ち良くなることじゃあねぇんだよ。
相手の表情や発言で感情や考えてることを読み取り、それに応じて適切な返答をする「会話」なんだよ。
お前がやってることは、ただのオナニーだ。
今後2度と、声が人よりでかくて何も考えずにべらべら喋ってるだけでコミュ力高いとか言うなよ。
そういう意味では、空気を壊さないように声を荒らげて怒らなかったり、レモンサワーをぶっ掛けずに黙っていた僕の方がコミュ力高いだろ。調子にのんな。
自慢気に鼻を伸ばしているドクロピアスに対して、僕は、少なくともこいつよりはコミュ力の高い僕は、歯を食いしばりながらこう答えた。
「えーすごい!僕、コミュ力低いから、羨ましいなぁ!」
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