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進む顧客体験型店舗の現状とオムニチャネル化の可能性

 こんにちは、マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。

ここ数年大型店舗の出店が相次いでいます。
例えばUNIQLO。世界最大級のグローバル旗艦店「UNIQLO TOKYO」が2020年6銀座にオープンしましたが、今年4月にも福岡天神と群馬前橋で2店舗同時にオープンするなど、フラッグシップとなる大型店舗の出店に力を入れています。他にも様々な業種で従来的なモノ売りの場としてではなく、顧客体験を生む場としての店舗づくりを進めているブランドが国内外でいくつもあります。

その背景には、「商品はネットでも買える。それでは、お店に来てくれる(来てもらえる)理由とは何か」を突き詰める企業が多くなっているのではないかと感じますが、今回はそのような店舗事例を踏まえつつ、今やリテールマーケテイング課題として欠かせないオムニチャネル戦略の可能性について考えていきたいと思います。
 

▪️ユニクロが注力する大型店舗とは?

ここでまずご紹介したいのが、冒頭でも触れた「UNIQLO TOKYO」。
「〇〇店」ではなく、「TOKYO」と名付けるあたり、他の店舗との格の違いが感じられます。

この6月で3周年を迎えたので、東京近郊にお住まいの方であればすでに訪れた人も多いと思いますが、「LifeWear」の全てを集積した体験型店舗というだけあって、ワクワクがたくさん盛り込まれています。

UNIQLO TOKYO

例えば1階では様々なコラボレーション商品を多く陳列していますが、その中でもこの店舗だけの限定商品として、地域(銀座)の人気店とコラボしたTシャツやトートバッグなどが販売されています。さらにこれらの商品はオリジナルのデザインを施せるアプリ「UTme!」を使ったものになっており、「UTme!」は別フロアの専門コーナーで注文することができます。

その他にも、1階入り口には季節の生花が10種類以上用意された「UNIQLO TOKYO Flower Shop」が置かれていたり、着こなしアプリ「StyleHint」と連動した売り場が導入され、「StyleHint」に投稿されたコーディネート画像にタッチすると、そのアイテムの色展開やサイズ・在庫・売り場を確認することができるなど、ネットとリアルを融合した売り場もあります。

StyleHint
StyleHint

また他にも、先行販売商品の充実や2000通りを超えるオーダーメイド感覚のジャストサイズシリーズをその場で試着できるコーナーの設置、オンラインで品薄の人気商品の唯一の展示販売など、他の店舗にはないサービスが多く詰まった店舗となっています。
 
このような取り組みを地域別に進めているのもUNIQLOの特徴です。
例えばユニクロPARK横浜ベイサイド店の公園のような店舗は「PLAY」をコンセプトにプロデュースされ、地上から直接上ることのできる斜めの屋根部分がすべて公園となっている独特な構造で、知育玩具で知られるボーネルンドと連携して子どもが安全に楽しめる遊具がたくさん設置されています。

ユニクロPARK横浜ベイサイド店


そして今年4月にオープンした佐藤可士和氏プロデュースの前橋南インター店では、「UNIQLO LOGO STORE」という名前と「圧倒的に楽しいユニクロ」というコンセプトを打ち出しています。

ユニクロ前橋南インター店

外観ではその名前が示す通り、巨大なロゴ看板が大きく目を引く存在となり、室内には国内店舗では最も広いカフェスペースを確保。さらに、滑り台や絵本が用意されたキッズスペースやリペアやリメイクなどのカスタマイズサービスを提供するRE.UNIQLO STUDIOなども展開されています。

カフェスペース
RE.UNIQLO STUDIO

加えて「UNIQLO LOGO STOREラッピングカー」などもあり、全体的に可愛らしさと遊び心のある店舗になっています。
まさにアートディレクターの佐藤可士和氏らしいですね。

UNIQLO LOGO STOREラッピングカー


ユニクロの各大型店舗では、新しい買い物の場として従来店舗やネットではできない各種サービスを提供しつつ、店舗に応じて地域密着型の商品の提供やカフェやキッズスペースの設置、公園一体型店舗などが展開され、「LIFE」を軸とした体験型施設を体現していると言えます。
 

▪️様々な業種で進む体験型店舗

ユニクロのような体験型店舗は、他のブランドでも多く見受けられるようになっており、その一部をご紹介します。

1.    無印良品 銀座

https://haveagood.holiday/articles/843

無印良品 銀座もとても有名な商業施設ですのでご存知の方も多いと思いますが、無印良品の世界旗艦店である「無印良品 銀座」が1~5階に、レストラン「MUJI Diner」が地下1階に、UDSが内装設計/運営を担当する「MUJI HOTEL GINZA」などが6~10階に入居する、衣食住が一体となって無印良品の世界観が体現されている商業施設です。

従来の無印商品の物販やホテル、レストランの他にも、自分の好みの創作・カスタマイズができるデザイン工房やブレンドティ工房、無印が厳選した書籍が並ぶ「MUJI BOOKS」、デザインカルチャーの発信基地として展開されている「ATELIER MUJI GINZA」、無印らしい文化的要素を多く含んだ体験施設になっています。

MUJI HOTEL
MUJI DINNER
デザイン工房


2.    バーミキュラビレッジ

https://www.aichi-now.jp/spots/detail/3132/

バーミキュラは愛知県の老舗メーカーが開発した鋳物ホーローブランド。
そのバーミキュラが展開するバーミキュラビレッジ(名古屋市)は、「最高のバーミキュラ体験」をテーマに、“バーミキュラの料理の美味しさ”、 “バーミキュラブランドの世界観”、“メイド・イン・ジャパンのものづくり”を様々なかたちで体験できるブランドの発信拠点になっています。

飲食業態の「DINE AREA(ダインエリア)」と物販・体験業態の「STUDIO AREA(スタジオエリア)」の二つのエリアで構成され、レストラン・ベーカリーカフェ・フラッグシップショップなどを集約。さらにはバーミキュラ コンシェルジュ・専属シェフによる、バーミキュラを使用した料理教室の開催やバーミキュラの本や世界各国の食に関する3,000冊の本を備えるライブラリーの設置、バーミキュラを実際に試してみることができる体験型ショップにもなっています。

DINE AREA(ダインエリア)
STUDIO AREA(スタジオエリア)


3.    米国の人気アウトドアショップREI

https://takahirosuzuki.com/2010/0912105042

REIは、1938年創業のシアトル発祥で歴史あるアウトドアショップです。もともとは仲良しの登山家たちが始めたクライミング・ギアのお店でしたが、現在はアウトドア全般を扱いアメリカとカナダで150店を店舗展開を行っています。

REIがアメリカで人気の理由は「価格」「品揃え」「スタッフ知識の深さ」「サービスの良さ」といったリテイルサービスとしての優秀さがありますが、それ以外にも店舗の作りや顧客サービスもユニークで充実しています。

例えば店内に子供が遊ぶために設置されたキッズスペースはかなり広く、本格的なアスレチックの様相も呈している他、店内で実際に販売商品が試せるようにインドアクライミングまで出来るようになっており、その規模は店舗というよりもはやスポーツ施設といった方がわかりやすいかもしれません。アメリカらしいです。

キッズスペース
インドアクライミング

またそうしたハード的なサービスだけでなく、REIでは有料メンバー向けにワークショップやイベントなども活発に行われています。
<ワークショップ例>

  • 女性向けバックカントリーでのコンロと水の使い方

  • ハイキングでバックパックを軽くする方法

  • グルメ・キャンプクッキング

また、REIスタッフと会員メンバーが一緒にキャンプしたり、遠征をしてハイキングやバイクツーリング、ロッククライミングといったアウトドア・アクティビティを楽しむイベントも開催されています。

このようなワークショップやイベントは、アウトドアを楽しみたい顧客にとって嬉しいサービスであり、ブランドにとってはブランドやREIスタッフへの親しみ、愛着につながる施策になっています。

このようにREIではハードとソフトを組み合わせたブランド体験を提供しており、ハード主体の体験型店舗を施行する企業にとっては1つのベンチマークとなる企業だと思います。
 

今回ご紹介したような体験型店舗は、他にもいろいろ出てきています。

  • 様々な商品を試用・利用体験できる家電量販店の「EDION」

  • スポーツ体験エリアが一体となった「スーパースポーツゼビオ」

  • カフェ・ガーデン・ドッグランなども楽しめる「カインズ」

  • 遊べる駅前商業施設「LINKS UMEDA」

  • マイナス20度の北極圏の寒さが体験できる「CANADA GOOSE」

ご覧のように、このような動きは様々な業種や専門店にも広がってきており、今回の記事だけではご紹介し切れませんので、ご興味のある方はネットで検索してみてください。
 
 

▪️体験型店舗を活かすオムニチャネル戦略

これまでご紹介してきましたユニクロ、無印良品、バーミキュラ、REI、またご紹介し切れなかったそのほかの事例に当てはまる共通項として、「物販*体験=リテールテイメント」という思想があると思います。

さまざまな角度からアクションを捉えるカメラが全周に設置されたミニバスケットボールコート(NIKE STORE NewYork)

「リテールテイメント」とは小売とエンターテイメントを合わせた造語ですが、消費者がエンターテイメント要素のあるユニークな体験をすることができる店舗のことを指し、ECとの差異化が求められる実店舗やモノ消費よりコト消費が重視される社会背景の中でより注目を集められるようになってきた概念です。
 
ですが、このような思想や取り組みを何もリアル店舗だけに当てはめる必要は全くないように思います。ECと店舗を差異化しなければならないなど、全く消費者には関係のないことです。
リアルはドキドキさせるけど、ネットではそれはしないといったブランデイングの仕方に、何の合理性もありません。
 
大事なことはドキドキやワクワクを提供するブランド性を持ち、それを店舗で実現しようとするなら、ネットでも同じ思想でできることをやるべきです。それが効果的なブランディングにも通じる、体験型店舗のオムニチャネル戦略の方向性だと考えます。
 
例えばその一例として、REIでは現在様々なワークショップを店舗で開催していますが、それはネットでも展開可能なはずです。バーミキュラが行っている専属シェフによる料理教室も同様です。

もちろん店舗で参加する場合には、より印象的な体験が得られたり、参加者同士が仲良くなったりなどリアルならではのメリットがあると思いますが、時間や距離の関係で参加が難しい顧客にもオンラインでの参加機会を提供することで、より多くの人にワクワクやドキドキの体験を感じてもらうことができるはずです。

逆に場に左右されないネットだからこそやりやすい企画などの場合にはネットだけで展開し、リアルとネットを合わせて総合的にリテールテイメントを進めていくことができれば、それは結果として強いブランドファンづくりとなり、店舗・ネットなどに関係なく、継続的な購買や利用につながるはずです。
 
「商品はECで買うことができるから、店舗は何かするか」と個別に考えること自体に意味はなく、大事なのはブランド性でありいかに体現するか。

顧客を楽しませる「リテールテイメント」的思想をブランド感にもつのであれば、それを店舗でもネットでも体現していく、それがあるべきオムニチャネル戦略だと考えます。顧客データをどう統合するかは後から考えれば良いですし、仮に統合されていなかったとしてもオムニチャネル戦略が目指す成果は十分に得ることができると思います。
 
 

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