一章:福祉に出会う 1:福祉のきっかけ

まえがき
https://note.mu/welfare/n/n8a44a921a426


あなたは、どのような理由から「福祉」を志したのだろう。

私の場合は「学問として面白そう」という理由からだった。
やっとの思いで大学生になった私は、
将来やりたいこともなかったのだけれど、
とりあえず何か見つかるだろうと思って勉強ばかりしていた。

目的もなく勉強するというより、
ただ、したい勉強を思いっきりできる大学生という環境は、
今振り返ってもいい時間だったと思っている。

とはいえ、私が勉強に打ち込んでいた理由の中には、
「逃げ」も入っていたと思う。
「仕事」や「将来」というものは漠然としていて、
自分には自信がなかったから、
「具体的に何をして自分は生きていくのか」という部分を
見たくなかったのかもしれない。

でも、進路選択はしていかなくてはいけなくて、それは学年が上がって
「何を専門的に学ぶか」という選択においても同じだった。

私は人間科学の学部学科にいたから、
2年次に「福祉」「心理」「社会」の3つのコースの中から
専門を選ぶことになっていた。
2年次の始まりに開かれたコース選択の説明会。
すべてのコースの説明を聞き、私は福祉の話に純粋に興味を持った。

そのときの話は、こうだ。
街は人が亡くなることを想定していない。
人が亡くなって、医療関係者が来たときに、
エレベーターがなかったり通路が狭かったり、
死んだ人を運ぶだけの広さが全然考えられていない。
人は住居で亡くなるのではなく、
病院などで亡くなるという前提で生きていて、
「死」は非日常として扱われている。

死が非日常などと考えたこともなかったし、
福祉というのは介護とか虐待とか、
障害などといったものだと思っていたから、
そのときの話は進路とか将来とか難しいことを抜きにして、
純粋に興味深く聞いていた。面白そうだと思ったのだ。

2年次から福祉コースを選んだ後も、
意外にも福祉コースのオリエンテーションの話は深く心に残っていた。

ふと、
「福祉とは
 多くの人が当たり前になっていて気づかないものに切り込んでいく
 学問なのかもしれない」
という考えに至ったとき、心の中の何かが動くのを感じた。

詳しくは後述するけれど、私は幼少期から誰かに理解されなかったり、
生きにくいと感じたりしていた。

その正体が、福祉を学ぶことで紐解けるのかもしれない。

当時は、
まさか自分が社会に出て本当に福祉の道に行くとは思っていなかったが、
今から振り返ると、その可能性はすでに十分あったのだと思う。
その予感は当たっていた。
自分の人生の紐解きと福祉実践は驚くほど密接に絡み合っていた。


2 学童:教科書通りにはいかない
https://note.mu/welfare/n/n1ab915239269



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