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食事の準備が面倒だから、ホームに入ろうかなと思うシニアな方へ

 先日、こんな記事を読んだ。

身内のホーム探しで、あちこちのホームの見学をしたことがある。年齢だけ言えば相当な高齢ではあるのだけれど、本人はいたってシッカリしているように見える。

特に明確な病名がついているわけではないが、長年の一人暮らしに飽きたのか、毎日の食事準備が面倒になってきたらしい。「そろそろホームに入りたいから、良い場所を探してほしい」というミッションが私に与えられた。

ちなみに本人の介護度は「要介護1」。なぜ要介護になっているかというと、一時的に(実は薬害だったのだが)ガクッと弱ったことがあり、その時以来、シャキシャキと外出ができなくなったためだ。調子が良い時は、どこまででも歩けるのだが(汗)。

以前にも何度かホームに入りたいと口走ったことがあり、資料を大量に請求し、一時帰国の際にバタバタとホームを見学してまわったことがあった。その時に比べると、本人の意志は固そうに見えた。

前回からすでに数年が経っているので、介護施設の状況も変わっていると思い、今回は本人も連れて3つほど見学してみた。

個人的には、そのどれもが「うわぁ、新しくてキレイ!こんなところで3食昼寝付き?私が入りたいくらいw」と思ったりもした。本人もそこそこ乗り気で、本人の希望と諸事情を考慮して、そのうちの一つに絞ったのだが。

翌日、連絡が入り、

「やっぱりホームには入りたくない」

ということで、入居計画は振り出しに戻ってしまった。

その理由が、読んだ記事そのまんまだった。

1、自由がない。自由に出歩けないし、外食も外泊も不可。

外食や外泊OKのところは、ケアのレベルが低い。

2、入浴が週2回しかない。

今のところ毎日一人で入浴ができているので、これはかなりキツいと思う。

3、ケアのレベルに対して割高な固定費がヒラヒラと出ていく。

3LDKの分譲マンション一人暮らしでは、固定資産税、管理費や修繕積立金と光熱費だけで住めるのに、と思うとコスト高だなぁと思った(私が、だけど)。本人もそう思って不思議ではないというか。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の基本料金に含まれているものは、住居と食事。それにプラスして、介護認定度に応じてデイサービスを利用するというシステムで、入浴介助も介護保険システムを利用する形になる。それ以外の部分は実費になる。光熱費が定額制のところも実費のところもあった。本当に「ご飯のことは心配しなくていいし、何かあった時に安心」というだけのように見えた。

ところが、これが本当にヒトによる介護が必要なレベルになると、その存在意義が圧倒的に高くなる。素人ではそんなケアは到底無理というレベルのケアが受けられる。自宅介護の選択肢が吹っ飛ぶレベルの手厚さである。

つまり、老人介護施設は、「他者のヘルプなしには移動もままならない」レベルの高齢者や、認知症など疾病を抱える方のためにあるもので、自分で動けるけれど、食事の準備が面倒だし、ちょっと孤独だなと思う程度の人には、あまりお勧めできるものではないという結論を得た。

施設の方もおっしゃっていたけれど、「自分で動けるうちは、デイサービスをめいっぱい利用することで対応できるかも」とのことだったので、その方向で進める予定である。それで孤独感も多少は緩和されるかな。

ちなみに食事であるが、冷凍の配送弁当は利用しているし、周囲の親戚から、高級なお惣菜(デパ地下グルメ)を時々届けてもらっている。なので、ふわっと「毎回作りたての温かい食事がしたい」程度のニーズでは、ホームへのお引越し動機にはならなかったということかも知れない。

身内としてはもう一つ考えなければいけないことがある。経済的な問題である。現時点では十分な預貯金があるが、ホーム入居が長期化する未来もゼロではない。介護保険の支払額も負担額も増え、年金額も減額される可能性がある。預貯金が尽きる前に、不動産を現金化しておく必要があるのだろうが、その手続き諸々が実に面倒である。

そして、もしその時点で認知症になっていたり、寝たきりの状態になっていたならば、不動産を動かすことが非常に難しくなってくる。成年後見人制度があるのだが、これが実にデメリットの多いシステムで利用がためらわれる。

つまり、

ホーム入居後、生活が安定した頃のタイミングと、不動産の売却のタイミング、そして本人の認知能力の兼ね合いを見据えて、意思決定をしていく必要があるということだ。むずかしー。

一つ大きな知見を得たのは、ホームの価値そのものは、実はハードよりもソフトが重要だということ!

ホームを見学すると、食堂などに集まっている入居者の方とご挨拶することになる。ホームによって、入居者の肌ツヤと笑顔の度合いが露骨に異なることに気づき、心の底から驚いてしまった。

そして、最終的に本人が「あそこに入居したい」と言ったのは、キラキラのワンルームマンションでもなく、施設長さんがお優しくて(スタッフさんに対しても優しくて)、食堂にたむろしていた入居者さんが実に楽しそうで、本人にもお声をかけてくれたところだったのだ。

「ここならば、すぐにお友達ができそうだ」と思ったのかもしれない。

ハードよりもソフトよねぇ。

施設長さんとも色々とお話したのだが、慢性的なスタッフ不足というのはもちろんなんだけど、「良い介護士さん」の確保が本当に難しいらしい。単なる人材というわけでもなく、プロの介護士さんとしてのスキルが高い人が本当に獲れないらしい。

その話をカナメにしたところ、

カナメ「お金でしょ?要は。出せるなら高いお金を出して獲得すればいいけれど、安いお金で良い人材に来てほしいというのは、虫のいい話だよね。」

まぁ、最終的にはそういう話になるだろうなとは思う。

また、全国で展開しているところは、システム的にも確立されているのだが、深夜に常駐している人が一人(数十人入居しているのに!)で、介護士も看護師も不在、室内のコールボタンを押すとALSOKにつながると聞いてびっくりしてしまった。

深夜に看護師資格を持つ介護士さんが常駐している施設では、日中の介護士は女性が多く、家庭の事情で夜勤ができない人がほとんどだそう。ということで、夜勤対応なのは男性介護士に限定されるらしく、そうなってくるだろうなとも思う。

カナメ「これから先、人材難はより進むんだから、警備会社と契約しているところは、ある意味先見の明あり、システムとして確立されてるんじゃないの?」

自動化ロボット化、遠隔地対応できる部分は、そうならざるを得ない。それはそうなんだけどさ。

 ところで、ホームという場所は、常にウェイティングをかけて何年も待たないと入居できないものだと思っていたが、そんなことはないみたい。民営のところは、常に空きがあって、営業さんがビシバシ働いているし、本社からハッパかけられて、テコ入れのためにグループ内の別業種のやり手営業マンが送り込まれたりするらしい。

そして、その紹介業もすごいのである。サ高住との契約というのは、つまり不動産の賃貸契約をするのとほぼ同じ扱いなので、仲介業者さんも存在していて、紹介料も発生する。

仲介業者さんからのコールもすごいし、施設からのフォローアップもすごい。

で、ここで得た知見はもう一つある。

自立して自宅で過ごせる高齢者が、その孤独を解消するための何か、孤独死を心配する必要のない何かのサービスが必要だということ。

それがないから、介護が必要のない高齢者であっても、ホーム入居を考えてしまうのだ。

でも食事については、コンビニもあるし、スーパーのお惣菜もあるし、冷凍宅配弁当もある。

必要なのは、ただ一つ。楽しく一日を過ごせる何か。ラスベガスが近くにあったらなぁ。

考えるべきことがたくさんある。脳内が今日も騒がしいわい。

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