トートバッグマニアのカナメが今日も行く

 カナメは、ショッピング好きでリテイルセラピー気味であることは前に書いた。そしてその対象は多岐にわたるのであるが、中でも「トートバッグ」が大好きである。そして「トートバッグを買うことはもっと好き」である。

 私もそんなに多くの男の人の買い物動向を見ているわけではないのだが、男の人がトートバッグを好んで持つ印象があまりないので、カナメの嗜好があまりよく理解できない。っていうか、私自身トートバックに偏愛などない。

あんなん、一個あればええやん。

私自身は、香港の九龍にあるインフォメーションセンターで買った「Hong Kong」と書かれたコットンのトートを好んで使っているのだが(めちゃ丈夫)、かれこれ4年くらい使い続けていて次のトートを買う気になどならない。

それなのにカナメときたら。

ソウルに住んでいた時は、梨泰院(イテウォン)を歩くと吸い込まれるように雑貨店に入ってはトートバックの前で色々と物色していたな。かわいい動物さんがプリントされていたりすると、迷わず手をかけては「これ良くない?」と聞く。

「それ、良くない」

と答える。

文字で書くと同じだが、イントネーションが違う。疑問文に対して平叙文で答える。

「オマエ、ほんまにおもろないやっちゃな。これ、めっちゃくちゃかわいいやん。可愛いない?」

「可愛いいけど、いらへんやん。トートバッグ、家にいくつあると思ってるねん。それ買うなら、前に買った『失敗やったな』とか言ってたやつ、捨ててからにしてな」

とニベもなく答えるわたくし。

前に買った「失敗した」というやつは、微妙に大きさが求めているよりも大きかったり、チャックがついていて、かつマチがついていないのでモノの出し入れがしにくかったり、ゴルフのカートに引っ掛けると地面についちゃう丈だったり、素材が意外とちゃっちかったり。プリントがかわいいと思っていたけど自分が持つと「なんか違うな」というヤツだったり、ネット通販で買ってみたらカッコばかりで使いにくかったり。

そんなカナメが最終的に好んで使っているのが、香港の一風堂でもらったトートバッグだったり、スーパーのエコバッグだったりする。めっちゃ安いやつな。

 ところで、いま台湾の高雄(Kaohsiung)というところに来ているのだが、ここでもトートバッグに萌えを感じてしまうカナメは異常行動に出ておる。

三週間ほど滞在するので、衣類はコインランドリーで洗濯する必要があるのだが、その洗濯物入れとして台湾で良く使われているショッピングバッグを一つ購入した(私が、ね)。

こういうやつだ。

画像1

55元(2019年末現在レートで200円ほど)という価格ながらも、そこそこの大きさがあって、メッシュだから超絶軽くて、かつ形も保てる(クシャッとならない)ので、なかなか重宝する代物だ。ただしランドリーバッグとしては使えるけど、日本に帰国後は使い道がないから、最後には申し訳ないけどホテルに捨てて行っちゃおっかなぁ、くらいのテンションだった。

が。

ホテルの部屋の隅にこのバッグを見つけたカナメが

「バンリちゃん!!!!これ、かわいいー。これええやん。もっと買ったら?」

と言い出した。ほどなく彼はネットで色々と検索をかけたりして

「なんか色々な大きさのがあるよ。これもっと買わない?」

「買わない(平叙文)。ってかさ、さんざんリノベで断捨離しまくって、モノに溢れる生活に辟易したって言っていた舌の根も乾かぬうちに、よく言えるね!」

と私は半分キレ気味に答えたのだが。

カナメは懲りない。懲りないどころか、出歩く先々で見つけるトートバッグに手を触れまくっては、「これ良くない?」と私に問いかける。

結婚してもう何年経つのかわからないのだが(数えるの面倒....)、私の言動パターンをまだ理解していないのか?彼がトートバッグ買いたいと言って、私が「きゃー、素敵ね。買ったら?」と言ったことなどないし、本当に買いたいなら勝手に買えばいいのに、なぜ私に問うのか!?

「欲しかったら勝手に買ったらええやん!!なんで私にイチイチ同意を求めるのだ!ってかさ、私とキミで意見の一致を見たことが未だかつて一度でもあったか?いやない。だからさ、もう勝手に買ってね。でもさ、家に置くところないからっ!」

とさらに語気強く言ってみたが。

「オマエなー。オレと何年一緒におるんや。オレがトートバッグ好きなん、わかってるやろ?」

だから何だ。

「オレはな、『わー、カナメくん、素敵なトートバッグね。それ絶対いいと思う。iPadも楽々入るし、何よりも出し入れしやすいし、色だって最高やん!』とかワーワーキャーキャー楽しくショッピングを楽しみたいだけなんやっ」

無理だ。ショッピングに何の興味もない私に、そんな無理ゲー振るなよ。

いや、実は。そんな無限ループの様なやりとりを収束させるために、一度だけ、カナメが好むであろうリアクションをしてみたことがある。

「カナメくん!それいいよ、色もいいし。なんていうかキミのテイストにめっちゃ合ってるっていうか。カタチもね、完璧ちゃう?」

「え、やっぱりオマエもそう思う?そうやと思うてん。買おうかな、やっぱり買っちゃおうかな。でもこの前も似たようなもの買った気がするけど、どうしよっかなー」

............

心にもない薄っぺらい言葉を並べてはみたが、後が続かない私(汗)。今まで見たものと何の代わり映えもしない、どこにでもありそうなトートバッグを褒めちぎるためのボキャブラリーを、私は持ち合わせていない。あかん、アウトや。

「やっぱり、この前買ったばっかしやし。やめとくわ」

ふぅ。セーフやったんか.......。そやけど、なんでこんな場面で手に汗握らなあかんねん!

それにしても、トートバッグってそんなにSpark Joyするような対象かなぁ。わっからへんなぁ......(汗)。


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