なぜカナメは蘊蓄(ウンチク)を語りたがるのか

 私にはテレビを見る趣味がない。

 テレビの前で座って視聴しなくなったのは、ちょうど2003年頃で、それから十数年テレビはほぼ見ない生活を送っていた。常に仕事をしているか、はたまた何かを勉強しているか、そして家事をしているか.........という生活だった。テレビを見る時間があれば寝たい、と思うほど忙しかったのだ。テレビに何らかの映像が流れていることは多々あったけど、見ているのはカナメなので、その間も私はパタパタと部屋を忙しなく動いたり、仕事部屋にこもりきりだったりした。

とはいえ、時々テレビから聞こえてくる音は拾っていたので、少し聞こえたセリフについて、私が少しでも反応しようもんなら

「え、バンリちゃん、なんだ見てたの。こっち来て一緒に見ようよ!最初から見る?これめっちゃおもろいで、オレ、解説してあげるからさー」

などとまくし立てて大喜びで私の方を見る。シッポ振ってるのが丸見えの子犬さんのように無邪気に私にキャンキャン言ってくる。

ふっ........。その術中にはまるわけにはいかない。私は忙しい。キミのウンチクを聞いている時間などなーい。ないのだ。

ちなみに、カナメが見ているのはテレビ番組ではなくて、NetFlixであったり、Amazonプライムビデオだったり、DVDだったりと色々なのだが、シリーズを一気に数日かけて見るので、「ああ、カナメのマイブームは◯◯なのね」ということはわかる。

それは、具体的には「攻殻機動隊のなにか」だったり、「昭和元禄落語心中」だったり、そこからの「立川志の輔落語」だったり、「BONES」だったり「CSI」だったり。「有田と週刊プロレス」だったこともあったな........。ちなみに今現在これを書いている横でカナメが見ているのかは何巡目かわからない「アカギ」である。何度横から内容にツッコミ入れようと思ったか......。主人公の年齢がおかしすぎるし、設定もアレだし、もう血を抜くことと麻雀に何の関係があるのか謎すぎるが、うっかりと「でさ、なんで血抜くのよ」とでもカナメに尋ねようものなら、一から延々とご丁寧に説明してくれちゃうので、絶対に聞かないことにする。

それだけではない。寝る前にもiPad Proで動画を延々と再生しながらカナメは眠りに落ちる。しかも彼はその音声を外部スピーカーに飛ばして大音響で聞いている。それを横目で見て、タブレット画面をタッチして動画を止めるのだが、「志の輔さんの落語」の時には、うっかりとそのまま最後まで再生してしまい、私の方が涙をボロボロと流して寝るに寝られないことも多々あった。落語って怖いで。凄まじいクオリティでな。音声だけでなんで私は夜な夜な涙で枕を濡らしてしまうのかっ!!

いや、ただ単に見るだけならいいのよね。中には面白いものもあるし。でもカナメがウンチクを語ってしまうのである。ストーリーを説明してくれるだけならいいのだけれど、それに彼自身の評価と解釈がつく。でもさ。それって見た人が勝手に感じとるものだよね。私が見たら、私なりの解釈があってもいいやん。でも一緒に見て解釈が違うと「オマエは分かってない!」と言って自説を延々と述べるのはやめてくれい。

なので、私はいまだに攻殻機動隊を見ることができない。これこそ、彼のウンチクりたい欲求がマックスになるやつや。しかもカナメによると、映画とアニメがまた別で、パラレルワールドだとか、押井守さん流石だとか、オマエが見るなら、まずこの映画を見ろだとか順番まで指定してくるので、彼の土俵に乗っかったら負けだ、みたいな感覚に陥っている。

私もさー、時々大人になって、カナメくんに延々とウンチクを語らせてあげて、「へー」「ほー」「でさ、でさ、それってさー」と話題に乗っかってあげたらいいとは思うのよね。でもカナメは私が勧める本を読んだりはしないし、読めと言った記事もタイトルしか読まないし(汗)。

なので、今日も私とカナメの攻防は続く。

ちなみに昨日は「サイコパス」見てたな........orz


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