学級会のバンリちゃん

 オーストラリアのTAFE(職業訓練専門学校)併設の語学学校にいた時に、課題のライティングをタイプしていた時のことだった。突然、小学校の学級会で発言する幼い私の姿が見えたような気がした。

 英語がキライで鬼門だった私も、英語圏に住むようになったため逃げられない状態になった。子供を抱えている以上、英語圏に住み、英語を話せないのは死活問題。ここは踏ん張らねばと決意し、保育園併設の語学学校に通うようになった。

 そこでArgumentative Essayライティングの基本についての授業があった。

 その先生は、いつもはジョーク好きで豪快で明るいタイプであったが、その授業だけは目が笑っておらず、「今日のこれからの2時間は、最も大事な授業だから、真剣に聞くように」と前置きをして、黒板に黙々と何かを書き始めた。

 それが、エッセイライティングの書き方についての授業であった。

 大卒のはずの私にとっても、初めて聞く内容だった。が、実にその2時間程度のレクチャーで、私は英語のエッセイのフレームを理解し、書けるようになった。もちろん語彙や表現のナチュラルさまでは教えてくれない。それについては日々鍛錬をして、ネイティブにチェックしてもらい、できるだけ多くの良い文章を読み込まないと身にはつかない。

 レクチャーの内容については、ネットで調べるとすぐに見つかるものなので見てみてほしい。例えばこういうフレームを学ぶのである。

Learn How To Write An Argumentative Essay Outline

英語のcontroversial issue(賛否両論あるような問題)についての小論文(エッセイ)を書く際には、まずブレインストーミングをしたり、ネットの情報を元にして、その問題に対して持ち上がっている議論が何かをざっくり調べ、そのうちのどれをエッセイに組み込むかを考え、自分の立場(賛成なのか反対なのか)を表明し、その判断をするに値する論点を展開し、その具体例を上げて説得力を上げていく。

パタパタと自分の論点をまとめて、サポーティングアイデアもうまいこと整えて。そんな渦中に、なぜか私は、小学生の頃の学級会で発言する私、そう学級会のバンリちゃんのイメージが浮かんだのだ。

バンリちゃんは、司会をしている学級委員長さんに名指しされて、自信なさそうに立ち上がり、今にも消え入りそうな声でこう発言する。

バンリ「私は反対です。なぜなら、なんとなく嫌だからです。」

は?

はい?

大人の私、脳内のバンリちゃんに全力でツッコミを入れる。

なんなの、キミのその発言。論拠示せよ論拠。ってかそれで許すなよ委員長!なんとなくとか、キミのお気持ちを聞いてんじゃねぇよ!!

でも、当時はそれで良かった。特に何も言われずに自分の発言の順番を、うまくやり過ごせたと思っていた。賛成か反対かを言って、とりあえず何でもいいから理由を言えばいい。

日本の教育、完全に間違ってるよね(汗)。

英文のエッセイスタイルを、小学校の頃から毎回毎回飽きるほど書かされるような環境に育っていない日本人は、自分の意見を述べるのに、

好きとか嫌いだとか、
なんとなくおかしいとか、
常識がないとか、
違和感を感じるとか、

そういう表現でも、自分の立場表明をしたと見なされる。

それでは、大事な人生の岐路に置いても、判断を間違えませんかね。

(今の世界の状況を分かっていない)親がこう言ったからとか、
(自分の人生に何の関係もない)周囲がそう言っているからとか、
(学校以外での仕事経験のない)先生が言ってるから、
(専門家でもない)大好きな人がそう言ってるからとか

なんの論拠にもなってないのに、それで判断しちゃうことがある。色々な人の意見を聞いてみるのは良いことだろうけれど、自分で判断する時に、専門家でもない誰かが言ったことを、無批判に取り入れるのは、リスキーだと思うよ。

自分の意見を表明する前に、賛成意見と反対意見を吟味し、その個々の意見も、それなりの論拠を示さないと説得力を欠くのだということを、骨身にしみて理解している人たちと、議論して勝てるわけないよね。

学校教育で鍛えて欲しいのは、この辺りなのだが、日本の学校教育でそれを子供たちに教えるのは至難の業だ。なぜかというと、教師側がそういう教育を受けていないからだ。

危機感を抱いた方は、ぜひぜひ英語圏での教育スタイルをチラ見するといいよ。英語ができると、Couseraの講座もフリーで受講できるしね。

さてさて、私が豪州で使っていた文法の問題集は、こちら。

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最も使ったのは、English Grammar In Use。英語が得意な方には簡単に見えるレベルだけれど、とにかく英語鬼門だった過去の私にとっては、これさえもヒーヒー状態だったよ。

Advancedになると、こういう似たような表現の、微妙なニュアンスの違いについての解説もあり、リファレンスとして使うことが多かった。英語が得意な方は、あえて買う必要があるものではない。

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Essentialは、基本中の基本で、この本は子供たちが使っていた。意外とネイティブの子供達も、こういう文法は分かっていないので、外国人が驚くような間違いをする場合もある。文法は大事よね。

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個人的に、このvocabulary編は不要だと思う。日本人の英語語彙力を増やすための書籍は、日本にいっぱいあると思うので、わざわざ英語で読まなくて良いし、収録されている単語も特に難しくはなく、大卒の日本人の英語力なら不要なレベル。英語圏の子供たちの語彙力を増やすには良い教材だと思う。


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