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不妊について考える時

不妊や妊活に関してのご相談をたくさんお受けしています。不妊と妊活に関しては不思議とご縁があり、また、幸い結果も出しているので口コミで広がり、消化器の問題と同じくらい件数としては多いです。

一般的に不妊の原因で、女性に関するものは以下の通りです;

  • 排卵障害の原因となる多嚢胞卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症や甲状腺機能の低下によるもの

  • 卵管や子宮の組織の状態やホルモンに影響を与える子宮内膜症や子宮筋腫

  • 老化などの原因による卵子の質の低下

  • 器質的な問題(子宮、卵巣、卵管などの器官に異常がある場合)

  • 原因不明

不妊に関しては正確な統計を取るのが難しいですが、男女合わせて考えると、男女それぞれの原因が半々と言われています。また、原因不明なこともとても多いです。

原因が明確ならば西洋医学でも対処できるものの、原因を除去したとしてもなお妊娠に至らない、ホルモン剤の治療が合わない、そもそも男女共に何の問題もないのになかなか妊娠に至らない、何度か流産を繰り返したので一度身体を整えたい、タイミング法・人工授精では妊娠に至らずこれから行うIVFに向けて身体を整えたい、など様々な理由でご相談にこられます。

ナチュロパシーで不妊を考える際は、何が妊娠を阻害しているのか、排卵・受精・着床を妨げている根本原因を考え、阻害要因を取り除き、栄養を補充し、妊娠に適した身体に整えていきます。

ホルモンバランスに関係のあるPCOS、高プロラクチン血症、子宮内膜症、子宮筋腫は婦人科系疾患にもあたりますが、性ホルモンや甲状腺ホルモンなど様々な機能のバランス調整に優れたハーブを扱うナチュロパシーでは、これら内分泌系の調整は特に得意とする分野です。

エストロゲンが過多なのか、不足しているのか、プロゲステロンがしっかり出ていないのか、甲状腺ホルモンが作れていないのか、ホルモン代謝に関わる肝臓の働きが悪いのか、を考え、健康なホルモン生成に必要な栄養素やハーブを補充していき、自然に正しいサイクルに戻せるようにしていきます。病気の診断は下っていなくても、生理不順、PMS、生理痛などがひどい場合など、ホルモンのバランスを整えるだけでも大きく変わってくることがあります。

子宮内膜症や子宮筋腫の程度がひどかったり、それらが明らかに妊娠の阻害要因である場合、手術が必要になると思いますが、その場合は術後の回復をサポートして、早く組織を妊娠に最適な状態に整えます。器質的な問題も、西洋医学の力がないとどうにもならないので同様に術後の回復に向けてサポートします。

また、問題の箇所を手術で取り除いたとしても、子宮内膜症や子宮筋腫ができていたということは、子宮周りの環境は炎症を起こしやすく免疫が乱れている状態なわけです。そこを正してあげないと、妊娠がしずらいままになります。

第一関門の排卵、第二関門の受精がされたとしても、第三関門の着床が行われないと妊娠に至りません。

着床というのは、卵子と精子が合体した受精卵が子宮の内膜に取り込まれしっかりとそこに根付くことですが、受精卵は女性にとって自分の体ではない別の生き物です。通常の人の体では、自分の体の中に入ってくる異物は免疫によって片っ端から攻撃されます。なのになぜ受精卵を取り込めることができるのか?

それには子宮内膜の免疫が一瞬オフになって受精卵を受け入れ、胎盤を形成して受精卵とつながり、ホルモンの力で妊娠を維持していく、複雑で精密な化学プロセスが発生する必要があります。

受精卵自体の生きる力が弱い場合だけでなく、受精卵のベッドになる内膜が炎症を起こしやすくなっていたり、子宮の中の細菌叢のバランスが悪かったり、免疫の状態が不安定だと、当然この複雑で精密な化学プロセスを全うすることができません。

また、子宮内膜は生理周期と同じ30日、卵子は成長して排卵するまでに約120日、また、精子は約70日かかるので、その間、よりよい卵子と精子および環境を作れるように栄養サポートを行います。

その妊娠に向けた体つくりをする妊娠準備期間をプレコンセプションと呼びます。

プレコンセプションでは、妊娠ができる状態、またはより良い妊娠につながるよう、組織とその環境を整えます。「整う」とは;

  • 生殖器の組織が健康な細胞で構成されている

  • ホルモンバランスが整っている

  • 免疫が整っている

  • 炎症がない

  • 酸化ストレスがない

  • 細菌叢が適正化されている

ということです。

この点をサポートするのにナチュロパシーで行うことを簡単に説明すると以下の通りです。

  • 阻害要因となる砂糖やグルテンや乳製品や動物性脂質の多い食品やタバコや飲酒などの生活要因を控える

  • ホールフーズで細胞を作る元となる栄養を摂り、足りない部分は栄養素で補給する

  • 必要に応じてハーブや栄養素でホルモンを整える

  • 必要に応じてビタミンEやDなど免疫を整える栄養素を摂る

  • 炎症を改善するEPAなどの抗炎症の栄養素を摂る

  • 赤・黄・緑などの色を持つ野菜や果物、ハーブのポリフェノールなどの抗酸化成分を摂る

  • 子宮の細菌叢のバランスを整えるプロバイオティクスを摂取する

  • 利用できない可能性のある葉酸(Folic acid)ではなく、活性型・自然型(メチル化された)葉酸を摂る

プレコンセプションは、不妊の問題がない男女でも当然行えます。海外では特に都市部でその意識は高まってきています。現在、妊娠前後の状態や卵子だけでなく精子の質などが、子供が成長した際の病気のリスクにつながることがわかっています。

ただ「妊娠する」のではなくて、「生まれてくる子供の将来の健康のために両親となる男女の体を整える」のがプレコンセプションです。海外では、より良い妊娠と出産、また、子供の健康を実現しようとプレコンセプションに取り組む若い世代も多いです。

日本においては若年女性の痩せが低体重児の出生につながるとして問題になっています。低体重児は大人になった際に病気にかかるリスクが高くなることがわかっています。肥満と同様に、低体重(BMI 18.5以下)も不妊の要因の1つですが、さらに子供の将来にも影響します。2、3キロ増やすことで改善するのでぜひ意識してみてもらうとよいです。

また、男性の場合は、一般の精子検査で数や運動性に問題がなくても、DNA損傷などを確認する高度な検査を行わない限り、ほんとうに精子に問題がないかわかりません。外からは質が見えない精子の頭の先体や細胞核の質により、授精できるか、また、流産せずにしっかり着床して受精卵として健やかに成長できるかどうかが決まります。

ところが、男性の精子は非常に熱や酸化ストレスに弱く、成長する70日の間の、ストレス、食、生活習慣がダイレクトに影響します。

女性の方が妊娠に関わる臓器が多いため、女性に目が向きがちですが、女性の方に何か弱さがあったとしても、男性の精子を最適でより健康な状態にすることで、弱さを補うことも可能です。

精子のDNA損傷を最小限にするには、ただやみくもに亜鉛だけ摂取すればいいのではなく、食・生活習慣を整えて、極力酸化ストレスを抑えないといけません。

女性の場合、産後は筋肉も裂け、ホルモンも異常な状態になっているにも関わらず3時間おきの授乳で眠れず、食べるのもままならない。妊娠前から授乳が終わるまで約3年近く好きなものを食べれず健康に気を使わなくてはいけない。それと比べたらプレコンセプション期間の短い数ヶ月間だけ食事や生活習慣を整えるなんて楽なものです。

生まれた子供の将来の病気のリスクは、当然お父さんとお母さんの半々からきます。流産のリスクや子供の将来の病気のリスク要因をちょっとでも減らせるよう、男性にもぜひ積極的にプレコンセプションには関わって欲しいところです。

また、不妊や妊活に関して重要なのが時間。

卵子や精子の質、子宮内膜の質などは改善することはできても、AMHという検査でわかる卵巣に残った卵子の数だけは変えることができません。

不妊と診断されるまでに2年、その後検査などをして原因をさぐるのに1年、もし上述の疾患などがあったらそれを治療するのに1年、不妊治療を開始してタイミング法や人工授精などそれぞれをトライするのに各1年かけているだけでも、あっというまに5、6年がすぎてしまいます。そこから初めて体外受精(IVF)をトライして、IVFのデッドラインと言われている43歳に間に合うか。IVFも始めの数回はうまくいかず、何回か重ねてというケースを考えるとIVFだけでも数年かかります。

遡って計算すると、35歳から妊活を開始しても間に合わないかも。将来いつかは子供がほしいと思っているのであれば、できることならば20代後半、遅くとも30代前半には動き始めてほしい。その時に相手がいなかったとしても、いつでもスタートが切れるように、既存の婦人科系疾患や生理不順などはピルに頼るばかりでなく整えておきたいところです。

本当に時間との戦いです。時間の余裕さえあれば、妊娠に向けた体作りに半年ほどの時間をかけて、デトックスや栄養補充やホルモン調整を行なっていきますが、クライアントさんの年齢次第では、デトックスをする時間もありません。私が初めて成功したケースでは、デトックスをしただけで妊娠に成功しました。そんな機会もなくなってしまいます。

現在様々な統計からわかっていることはたくさんあるので、我々世代がしてきた失敗を繰り返さないように、若い世代にはより良い人生計画を立ててほしいと願います。

そして、30歳で妊活を考えないといけない女性は、社会でこれからキャリアを築くという最良の時期を、妊活とキャリアの両立で考えないといけないチャレンジを迎えます。

早く、社会全体と男性がしっかりと若い女性たちを支えられるようになることを祈りますが、女性のみなさん、自分のための人生を賢くしなやかに悔いのないように生きてください。



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