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短編集

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探偵討議部の面々を題材にした短編集です。それだけで完結していますので、本編を読むお時間がない方もどうぞ。
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記事一覧

やせっぽちのたかゆき

 僕はたかゆきが嫌いだった。たかゆきはやせっぽちで、おかっぱ頭で、その頭がとにかく悪い。…

WEM
2年前
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「ゆのさと」のサキ

 中型のバスが国道から山手の方に右折すると、ほどなく道は狭くなり、田園風景が広がり始める…

WEM
2年前
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カーネギーでメロンなあの子

 Curriculum vitae: アメリカにおける履歴書をチラつかせながら、ボスはニヤリとして言った。…

WEM
2年前
26

XXXの向こう側

 X X Xの向こう側に何があるのか知りたかった。ここはニューヨーク。真っ昼間のニューヨーク…

WEM
2年前
20

く つ を か つ て く だ さ い

 先輩がなぜ僕を信頼してくれたのかは、よくわからない。こないだいつもと違う女の人の運転す…

WEM
2年前
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走れ! ナルシス!

 奴はたった一人の演劇部員。奴が現れるまで、我が校に演劇部はなかった。男子校だから無理も…

WEM
2年前
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タバコと告白と不器用と

 なぜこの女性用下着メーカーを就職先に選んだのか?面接では言えなかったが、僕なりの理由はある。幼稚園の頃から近所に女の子しか住んでおらず、もっぱら女の子に混じって遊んでいた。と言っても、おママゴトばかりをしてきたわけではない。チャンバラをしたり、庭でビー玉を転がしたり、側溝に笹舟を浮かべてみたり、「探検ごっこ」で大きな段ボール箱の中に隠れてみたり、人並みに男の子らしい遊びもした。ただ、遊ぶ相手が女の子だっただけだ。  隣の子はチイちゃん、向かいはユウコちゃんだったか。その逆

Highly defined facial features.

 「しょうゆ顔の街」、京都にあるハマサキ研究室には濃い顔の大学院生が二人いた。ニシグチと…

WEM
2年前
23

Merry Christmas in Boston.

 ホリデーシーズンの喧騒とはうってかわって、ボストンは静かなクリスマスを迎えていた。早朝…

WEM
2年前
20

花束を抱えて。

 花束を抱えて劇場に向かう。大通りから入った路地にある小さな劇場へ。  「彼女」宛と告げ…

WEM
2年前
35

重層性を有する実存を巡る視覚的表象形成過程に関する考察

<注意> このお話は超絶くだらないばかりか、またしてもオシモの方にシフトしてしまっていま…

WEM
2年前
14

おばあちゃん先生

 寒風の中バス停の前でポケットに手を入れて立っていると、エツロウが降りてきた。小学校時代…

WEM
2年前
22

地獄のロデオ

<注意> このお話は本当にくだらない上に、若干オシモの方にシフトしてしまっています。苦手…

WEM
2年前
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覚えているとも。

 ワキモトは文章の、物語の力を信じていた。それ故、自ら一時は小説家を目指した。夢破れた今もそれは変わらない。  「文鳥は箱から出ながら千代千代と二声鳴いた。」  国語教師として母校で教壇に立つワキモトの朗読は、怒っているかのような大音声で響く。それは若く青き生徒たちに「文章の力」よ届け、という願いの現れであった。今まさに巣立たんとしている彼らには前途多くの苦難があるだろう。膝折れ、背中は屈し、一歩も動けぬその時にこそ、今、この壇上で読み上げた一文一文が骨となり、筋肉となっ