見出し画像

ヘヴィーメタル。ギャグとシリアスは紙一重なのだ

冒頭  茶番パート。

今は亡き大好きなじいちゃんの思い出を思い出すたびに、あの蒸し返す真夏の日の出来事を考えている。
家は両親ともに共働きなもので、家に帰っても直ぐに職場に連れて行かれるのだが
祖母と祖父が遊びに来たときだけは安心して家にいられるとのことで一緒に過ごせる唯一の幸福の時間だった。

とある真夏の昼下がり
あまりの暑さに耐えきれなくなった僕は

「じいちゃん、アイス食べたい」

とせがんだ。

孫大好きじいちゃんはすぐに買いに行こうと提案してくれた。

買い物は近所のローカルスーパー「サンカイ」に母親と行っていたので、道は覚えていた。

じいちゃんと僕と妹
僕らにとって最も幸せなひとときだった。

無事にアイスを買ってもらい、少し涼んだ後に
家路へと向かっていた。

照り返す日光は幸運にも木陰に隠れ、暑さも少しだけ和らいでいた帰りの道中で、僕はとあるとんでもないルールをじいちゃんに告げることとなる

「じいちゃんあのね…」
「さっきのお店サンカイって名前でしょ?」
「実はね、一日に3回行くと幸運なことが起きるんだって!」

まさか溺愛する孫から放たれる悪魔のワード
僕たちの目はキラキラと光り輝いていたのだが
明らかにじいちゃんの顔は、真夏にも関わらず青白くなっていた。どう聞いてもそんなジンクスなどあるはずもないのは一目瞭然だ。
しかし可愛い孫が願うのならば世界中何処へでも連れて行ってあげたい!と思うのが祖父の愛情と言うものなのだろう…

家に着くなり暫しの休憩を取る
そして僕たちが出発の準備の取り掛かる横で
明らかに表情が重いじいちゃん

結局一日に3度も同じスーパーに通わされる羽目になったじいちゃんは、明らかに疲労困憊になり
早めに床についていたのだ。

お風呂に入り、じいちゃんの布団に潜り込むと
僕の背中を優しくさすってくれた
明日も明後日もじいちゃんと過ごせる喜びに満ちた僕たち。可愛い孫の寝顔を眺められる喜びに満ちたじいちゃんとばあちゃんの顔。

「じいちゃん大好き!」

「マタアシタモサンカイニイコウネ」

その日は祖父はとんでもない悪夢にうなされたのだそうだ。

僕もいい大人になった頃には
祖父は決まってあの時の事を話してくれた

「うちから〇〇くんの家に行くまで片道4時間はかかるけども」
「おんなじスーパーに一日で3度も通わされた時の方が断ぜんキツかった」

と笑いながら話してくれたが、本当にあのときは申し訳ない事をしてしまったと大きく反省しているw

ふとした時にこの光景を思い出すんだけれど
僕はある一定の条件が揃うと決まって多い出すトリガーの様な物が実はあるんですよ。

先ずはクソ暑い真夏の昼下がり

2つ目は祖父の被っていた野球帽を見た時(そのキャップはしっかりと形見として僕が受け継いだ)

3つ目はヘヴィーメタルを聴いたときだ

何故ヘヴィーメタルを聴いたときなのかというと
実は道中やけに小うるさい音楽が一軒家の住宅から漏れていたのが気になっていた。
よく目を凝らして窓ガラスを見てみると、ロン毛の男三人が音楽には合わせて髪を振り乱していたのが見えたからだ。
手には木製のほうきを構え、まるでロックスターのようにポーズを取って見せたりしていた
しかもそれらはいつ通って見ても休まる事を知らなかった。

サンカイヘ向かう3回
そして帰り道を合わせて6回通り過ぎるまでに
彼らは取り憑かれた様に身体を動かしていた。
その表情は幸せそうに笑っていた様にも見えた

「なんとも馬鹿な連中だ…」

幼い僕にもそれらは非常に滑稽に映った。

それから僕は歳を重ね
いつしかヘヴィーメタルに魅了される事になっていしまったのだけれど。
正直僕のスキの裏側に張り付いているものは、いつまでもあのときに目撃した馬鹿な連中の姿なのである。


「元気ですか〜!?」
でお馴染みのアントニオ猪木氏。
彼の行動や言動、その一挙手一投足を忠実に再現し真似をするものまね師はお茶の間で大人気になっていた。
馬鹿にしているように敢えて顎をしゃくらせて
若干誇張した喋り声や、動きを見せては笑いを誘う芸風。
決して馬鹿にしているわけではなく、誰よりも強い愛とリスペクトがあるからこその芸風なわけで
馬鹿にしている様で馬鹿にしていないというスタンスを貫いている。

というかプロレスラー自体がそういった笑いの対象になるケースが多い。

僕も日常生活において
ついレスラーの珍発言をもじって、面白おかしく言ってしまうことも多い。
周りからしてみれば相当馬鹿にしている様にも映るだろうが、僕からすればリスペクトの裏にある愛情なのだ…。


そもそもヘヴィーメタル
特に白塗りのコープスペイントとは
実際旗から見れば面白おかしい存在なのは間違いないのである。
現にお茶の間で聖飢魔IIが出てきたときは笑いを誘った。
急に目の前に変なコスプレをし真っ白な男たちが登場すれば笑わないはずがない。

それこそブラック・メタルファンを公言しているが、ぶっちゃけた話しコープスペイントに関してはコメントに困ってしまうのである。
もし僕がバンドを組もう持ちかけられたとしても
絶対にコープスペイントだけは施したくないと誓っている。

もし自分の親が僕の輝かしい活躍を目にしたとして、一体どんな風に映るのだろうと思ってしまう
小さいときから可愛がっていた我が子が、いつの日にか悪魔に魅了されたとか戯言をほざき、白塗りのペイントで血を吐きながら楽器を演奏している。

僕なんてやっとこさ立ち上がった頃の年齢では
教育テレビか流れてくる太鼓の音に合わせて
おしりをリズミカルに振っていたらしいのだが
何が悲しいのか、今度は邪悪なリズムに合わせて頭を振っているのだから…真っ白い顔で…
親からすればそれ以上に悲しい現実はないだろうなと思うんだ。

多くのヘヴィーメタルファンは
いかにメタルという音楽が恰好よくて刺激的で素晴らしい音楽なのかいくらでも話せるのだがそれと同時に、いかにアホで、ダサくて、下品なものなのかもいくらでも説明が出来るんだ。
現に80年代、メタルがイケイケな時代へと突入し
ケバいメイクに逆だった髪の毛。
セックス、ドラッグ、ロッケンロールこそが一番熱くてカッコ良かった時代。

言ってしまえばモトリー・クルーやスキッド・ロウ等。イケイケな兄ちゃんたちがイケイケな
音楽をプレイしている時代
それが最も恰好いい男たちの象徴だったのだが
今現在そんな事をしていれば飯吹きものなのである。

そんな時代遅れな死後連発な時代を敢えて現在の令和という時代にやっている男たちが

「Steel Panther」というバンドだ


敢えて言おう、これはダサいと。
クソほどにダサい。本人たちも痛いほどわかっている。だからこそこの時代にやっているのだ。

これは完全に80sのリバイバルというよりは、パロディー入ってるんだと感じる。
深すぎるヘアーメタルへの愛がこうやってパロディーへの道に進ませたんだなと思うんだ。

アントニオ猪木のモノマネを全力でやってた春一番の様に

いかに格好良くていかにダサかったかを知っている彼らだからこそ、Steel Pantherで演奏するたび
彼らはそのダサカッコイイものを世の中に伝えている。MVなんて酷いもんだもんwでもこれはフィクションではなく、当時はカッコ良かったことだったんだ。


結論から言うと
もしメタルを知らない人達が
僕の聴いている音楽をクソダサいとかカッコ悪いとか後ろ指刺されたとしても僕は否定できない。
何故ならばそれは重々理解した上で聞いていることだからだ。
いくら悪魔に取り憑かれた様な姿で、世の中を憎み嫌った表情をしたとしても
きちんとギターを構えて内心ミスらないかドキドキしながら演奏しているんだし。
イヤーモニターからはカッチカッチというクリックが常になっていて、テンポがずれない様に慎重に慎重に演奏をするメタラー達。

カッコ悪いけどカッコいい
それがメタルという音楽なんだ。
Abbathさんを見てご覧よ?
コープスペイントでおどけてちゃ、他のブラックメタルバンドは為す術なしってやつだ。
ダサさを全面に出しまくっている。
ライブ中観客席から全力疾走して、派手にすっ転ぶ彼を見てれば
悪魔に取り憑かれたと言おうが
憎悪に満ちた顔をしようが
すべてがギャグになっちまうんだからさ


メタラーよ!もう早いとこ認めちまおうぜ!?

ヘビーメタル。ギャグとシリアスは紙一重だという事実をな!

そうすれば全てがスッキリとするはずなんだ。

話しはそれからだ!
そう思わないかい?





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?