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第2回つながり∞イベント報告レポート

はじめに

7月11日(土)第2回つながり∞「誰もが楽しめるまち 〜今できることを考える〜」をテーマにて、参加者のみなさんと一緒に「まちのバリアフリー」の知識を深めたい、新しい気づきを共有したいという思いを込め、車椅子ユーザーが行きなれない場所へ訪れる際の不安と、それらを緩和させる実践事例などを紹介したオンラインイベントを開催いたしました。

イベント参加者は、登壇者と運営スタッフを含めて46名、懇親会は、32名でした。

参加者からの声

1.各地域を盛り上げようとする熱意と取り組みの成果が素晴らしかった。
2.様々な立場の方が、出来ることから地域とつながっていることをたくさん学べました。
3.我がまち自慢のお話にワクワクしました。やりたいことへの様々な障壁をハード面やハートで乗り越えて活動を知れることができて、とても嬉しくなりました。
4.WheeLogの活用法などを聞かせて頂けたので良かった。
5.グループセッションからのつながりもできました。

以上のような嬉しい声をいただきました。ありがとうございました。不慣れなことで不行き届きの点が多々ございましたこと、心よりお詫び申し上げるとともに、皆様のお声は、今後のイベント企画などに役立たせていただきます。

イベント内で取り上げました以下3つの内容を一部ご紹介いたします。
1)地元愛に満ちた我がまち自慢
 ・田村達彦さん
 ・林 瑞恵さん
 ・能勢 光さん
2)今できることに挑戦した相模原での実践事例
 ・安西 祐太さん
3)車椅子ユーザーの声
 ・岩城 一美さん
 ・安田 恭子さん

1)地元愛に満ちた我がまち自慢

まずは、ニコモビリティ代表/戸隠観光協会ユニバーサルツーリズム担当職員 田村達彦 氏より「地域の事業者と進めるユニバーサルフィールドづくり」についてご紹介いただきました。

田村さん

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戸隠はどんなところ?
戸隠高原は標高1000mから1300mに森や池などの豊かな自然が広がっています。
戸隠神社を中心にした歴史観光や有名な戸隠そば、竹細工などの山里文化が楽しめる山岳観光地です。
でも、車椅子では、山岳観光地である戸隠での観光は楽しめるのでしょうか?
今までは難しかったです。
素晴らしい自然と歴史文化の里、戸隠をどなたにでも楽しんで頂けるようにしたい!
こんな想いから、戸隠ユニバーサルツーリズム(以下UT)推進プロジェクトが2年前から始まりました。

田村3


今までに行ってきた事業をご紹介します。

田村4 (1)

<UTを担う人材の育成・地域事業者との交流> 
・ユニバーサルフィールドコンシェルジュの養成
・地域事業者向けUT研修会の開催
・地域トラベルサポーターの育成・研修会
・デュアルスキーパイロット養成講習の開催
・ユニバーサルフェスの開催
・デュアルスキー体験会の開催

田村5

専門の旅行案内やコーディネートを行えるコンシェルジュを観光協会やキャンプ場に配置しています。
地域トラベルサポーターは、医療や介護の資格を持ったサポーターが、お一人やご家族での旅行が難しい方のサポートを24時間体制で行うことができます。
フェスや体験会で沢山の車椅子ユーザーと地域事業者との交流を行っています。
<UTに関する情報の集約と発信>
・ユニバーサルツーリズムデスクの設置
・地区内施設のアンケート・現地調査
・地区内の遊歩道調査
・協会HPにUT専用ページ開設
・ユニバーサルマップの製作
観光情報センターにUTデスクを設置して、地域のUTに関する情報を一元的に管理して発信しています。
ホームページには戸隠UTのページがあり、ユニバーサルマップやレンタル品、地域のお店や施設のバリアフリー情報を発信しています。

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<必要な設備の設置や機材の導入>
・福祉用品のレンタル(デュアルスキー・アウトドア用車椅子、福祉用品12種)
・車椅子用駐車場・トイレ案内板の設置(地区内10カ所新設)
未舗装の遊歩道やキャンプ場などで楽しめるアウトドア用車椅子用やJINRIKIの導入で、車椅子で楽しめるエリアが飛躍的にひろがりました。爽快なスキー滑走を楽しめるデュアルスキーで、戸隠の冬の絶景をご覧いただけます。また、シャワーチェアやシャワーキャリー、簡易スロープ、簡易ベッドなどの福祉用品も含めて、レンタルを無料で行っています。
車椅子対応トイレや駐車場を分かりやすくするための案内板の設置を進めています。

田村7


この様に、戸隠では、車椅子でトレッキングやスキー、キャンプなど、様々な自然のバリアをも楽しんで頂けるように体制を整えております。
どなたでも安心して訪れていただける観光地を目指して、地域全体でユニバーサルツーリズムを推進してまいりますので、皆様のお越しをお待ちしております。

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次に、市民活動団体act634府中メンバーの林瑞恵 氏より「府中市いいとこ!私の街のここがおすすめ!」という視点で東京都府中市をご紹介いただきました。

林さん

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<府中市・府中人について>
府中市は、東京都の中央にある人口約26万人の東京都の中で4番目に人口が多い街です。府中市を語る上で欠かせないのが「お祭り」。府中の人は本当にお祭りが大好き。生活の中心にお祭りがあるので、市民活動で何か相談があって、自治会長さんに連絡を取っても、「今、お祭りの準備で忙しいからあとにしてくれる?」と言われてしまうほどです(笑)府中市観光協会のビデオを見ていただきましたが、大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)、東京競馬場、サントリー武蔵野ビール工場、多摩川の豊かな自然など、府中には見どころがたくさん。Wheelogのまち歩きイベントでもたくさんの方に訪れていただきました。

林4

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 府中は、歴史がある街なので、府中生まれ、府中育ちという方もたくさんいますが、その反面、新しく引っ越してくる新住民(私も府中在住22年のひよっこです)も多く、新旧住民の意識のズレなども問題になるときもあります。

<市民活動>
府中市は市民活動が盛んです。今の市長が平成26年に市民協働都市宣言というものを出し、市民協働のまちづくりを進めています。自ら積極的に関わろうという市民が多く、とても勇気づけられます。3年前には、府中駅前に「府中市市民活動センター プラッツ」が開所し、私達の市民活動のサポートをしてくれています。


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<みんなで作ろうバリアフリーマップ>
府中市との市民協働事業で2年間かけて、バリアフリーマップの更新作業を新しい視点を入れて行っています。協働事業が始まる前には、Wheelogまち歩きも府中リハビリテーション協議会さん主催で実施された際に、私達の団体も協力をさせていただきました。そこで得られた知見なども生かして、昨年度は市内3箇所のまち歩きや、タウンミーティング、バリアフリーマップの試作品を作成しました。

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私達が大事にしている視点としては、バリアフリーマップの作成はあくまでも手段であり、目的は、市民の「心のバリアフリー」力の向上です。それも教えられることではなく、自らが体験し、体感することで気付き、自分ごととして捉えるということが大切だと考えており、そこがぶれないように進めていきたいと思っています。

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<私のおすすめのお店>
府中には美味しいお店もたくさんありますが、こちらの「府中テラス」さんは、運営者の方が市民活動のメンバーとしても参加してくださっており、バリアフリーにも意識した作りにしてくださっています。大國魂神社を眺める参道沿いの緑あふれるテラスは開放感抜群、車椅子ユーザーの方の利用もよく見られます。何よりトイレが多目的トイレで広いです。ぜひぜひ、府中にお越しの際は、ご利用ください。

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<誰もが暮らしやすいまちづくりに向けて>
何より、府中市には、前向きで協力的な当事者、当事者団体の方々が多く、毎回まち歩きに参加してくださる方もいます。「私達は伝道師だから」という言葉が深く心に響いた会がありました。そのような方の思いを無駄にしないように、同じ市民としてできることはやっていきたいと思っています。今年度もコロナの影響はありますが、店舗等へのアンケート調査、まち歩き(残り3エリア)、普及啓発イベント、完成版のMAP作成を行う予定です。
すぐには当事者の方の意識も、市民の意識も変わらないと思っています。焦らず地道に進めていくことが大切だと感じています。
府中は、いいとこ!です。ぜひ遊びに来てください♪♪

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まち自慢最後は、株式会社アイペック所属リハビリデイサービスnagomi町田木曽西店 施設長 能勢 光 氏からの町田市をご紹介いただきました。

能勢さん

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町田市では以前より「認知症のひとにやさしい街づくり」を、行政・民間・市民が一丸となって取り組んでいます。今回はWheeLog!のイベントという事ですが「外出」というテーマは「認知症・高齢者」に関わる我々(能勢は介護施設管理者)にとっても重要なワードです。今回はその「外出」において大きなポイントである「トイレ」に関わる活動を紹介いたします。

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「認知症の妻と外出をする際に、介助のためにトイレへ一緒に入る必要があるが、公共トイレやコンビニのトイレに一緒に入ることが後ろめたい。不審な目で見られているのではないか、非常に恥ずかしく感じる。」これは、とある男性介護者のお話。さらに男性は「やっとの思いで散歩に連れ出しても、トイレの不安があると家へ帰らなくてはいけない。だんだんと、外出することがおっくうになり、最近ではめっきりひきこもり気味だ」とも話されました。外出時の「トイレ」に関するハードルが、意欲低下に直結した事例です。環境因子による意欲低下に関しては、WheeLog!に携わる皆さんの方が、より多く経験されていることと思います。

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 そこで「介護事業所で何かできないか」と地域包括支援センターの方との立ち話から「Dトイレ(ディートイレ)」という活動をスタートしました。当事者の皆様と共に、オレンジ色のステッカーを作成し案内文と共に事業所の入り口に貼る、という活動です。当初は3か所でスタートしたDトイレの活動ですが、わずか3か月で37か所もの福祉施設、地域包括支援センター、病院、不動産会社など)様々な業態の皆さんが賛同くださいました。私は、Dトイレの数を増やすことは、つまりは安心の数を増やすことだと思っています。公共トイレと異なり、Dトイレのある場所には「困りごとに寄り添う思いのある人」が必ず居るのです。

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「自分にも何かできるかも・・・」で行動できる方が本当に多い町なのです。
 福祉事業所や病院といっても全てのDトイレが、ユニバーサルデザインで作られている訳ではなく、車椅子ユーザーの方々のお困りごとに手が届かないかもしれません。ハード面を完璧に整えるのは限界があるかもしれませんが、ハートのある「人」が町中に溢れています。町田の自慢は「Dトイレ」と「人」でした。

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2)今できることに挑戦した相模原での実践事例

理学療法士/株式会社ファイブスター代表であり、WheeLog運営委員の安西祐太氏より相模原市での実践事例をご紹介いただきました。

安西

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今更だけどバリアフリーって何?
バリアフリーを直訳すると、『障壁の除去』です。障壁を大きく分けると『物理的』『文化・情報的』『制度的』『意識上』のバリアを指します。
上記のようにバリアフリーという言葉はとても大きく多様な意味を持っていて、自分がいる立場や環境によって変わってきます。
例えば、まちの商店の人がイメージするバリアフリーは
『段差をなくす』『手すりをつける』『障害者用のトイレがある』など物理的なバリアをイメージします。『誰もが楽しめるまちを作ろう!』と思ってもまちの人の協力が必ず必要です。
まちの人は、バリアフリーに興味があっても『そんなお金がないからできない』。と思っている事が多く、何もできないと思っている人が多い状況です。

安西3


<さがみはらで行うバリアフリー>
さがみはらでは『みんなが楽しめるまちをみんなで作る』をテーマにお店の人と双方向の『対話』でバリアフリーを考えています。
具体的には『お店にできる事』をお店の人と一緒に考えています。一緒にできることを考えることで双方に発見があり、行動につながります。1つの事例をご紹介します。

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さがみはらにある『そばや池乃家』ではホームページ上にお手伝いについてというページがあります。そこをクリックすると、駐車場や玄関、階段、机の高さやトイレなどの情報が写真つきで紹介されています。また、アイドルタイム(14時〜17時)の貸し切り利用も勧めています。これは小さな子供がいる人や、周囲に気を使ってしまう人に思いっきり蕎麦を楽しんでもらいたいという店主の考えです。

安西7

安西8

上記全て店主が自分で行ったことで、僕は『ホームページ変えたんだけどどうかな?』と言われただけです。
大盛りの優しさと、みんなのそばにいる池乃家です。

安西6


優しさが作るこれからの社会、これからの社会は双方向のコミュニケーションが作ると思っています。
今までは大きな検索サイトで食べたいものを検索して食べる事が当たり前でしたが、これからは心の距離が近いまちやお店に人は行くと思っています。検索方法はサイトから『そのまちを知ってる人に聞く』事が増え、『食事でお腹を満たす』事のほかに、応援するという『心も満たす』優しさの社会となってきます。
どこにも負けない美味しい物を出す事と、誰かのためにできることをやる事は同じくらい重要になってくると思っています。

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3)車椅子ユーザーの声

そして、WheeLog運営委員 岩城一美 氏と安田恭子 氏から、車椅子ユーザーとしての体験や、WheeLog!アプリの利用事例をご紹介していただきました。


まずは、岩城一美さんです。

岩城

私の友人が経営するお店は、入り口に階段4段ありますが、私が車椅子ユーザーになってからはスロープ持参でお邪魔しています。
トイレに関しては狭く、利用が難しいので近くにあるコンビニに友人がコンタクトを取り、友人のお店で買い物をすることを条件に、車椅子ユーザーが来たら買い物をしなくても利用できるように交渉をしてくれたお陰で利用できるようになりました。
また、私が車いすユーザーになりお店に行くようになってからはどんなふうにお手伝いをし、どうしたらいいのか…と一緒に考えてくれています。 これから自分達が歳を取ることも視野に入れて、やはり階段ではなく、緩やかな坂道にした方がいいのか、健常者であっても、酔ってからの階段は同じように危険があるのかなど、対話をしてきました。それにより今まで関心が無かったし、聞く機会もなかったけれど、車いすユーザーが来た時の対応はどうしたらいいのか友人は考えてくれて、当事者に聞かないと分からないのですごく助かると言ってくれています。
私は宮城から他県に出てきた時、WheeLog!アプリを利用し、走行ログを見て、この道は通る事ができると確認します。知らない道なので誰かの足跡が私の助けになっています。 私がログに助けられたように、私も誰かの役に立てたら嬉しいなと思い、なるべく自分が自走した場所はログを取るようになりました。

次に、安田恭子さんです。

安田

私たち車いすユーザーにとって、目的地までのルート、トイレの場所、エレベーターの位置、出かける時は様々な不安材料があります。特に初めて訪れる場所は、事前に調べて、出かけています。
調べる時は、ネットを使うことが多いですが、3年前にリリースされたWheeLog!を使うことも多くなりました。実際に訪れた方のコメントだったり、写真はとても参考になります。
去年、友人と広島に行ったのですが、どうしても厳島神社に行きたくて、でもあそこは島なので船に乗らないと行けないのかなぁと思いながら、調べたら、WheeLog!に投稿されていました。車いす席が何カ所もあるフェリーの情報があって、安心して行くことができました。友理子さんが投稿されていたお好み焼き屋さんにも行ってきました。後から、こうやって友理子さんに報告できたりするのもWheeLog!アプリの楽しいところです。
普段の休みの日は、都内に出ることが多いのですが、車いすで行き馴れている場所でも、毎回、お昼ごはんをどこで食べようかと悩むので、新しい投稿情報がないかチェックしたりします。逆に自分で新しいレストランを開拓した場合は、投稿する楽しみもあります。
どこに行ってもバリアフリーが整っていると、やはり気持ち的にも楽になります。物理的なバリアが解消されることで、持ち上げたりといったサポートして下さる方の身体的負担を軽減できます。それから、当事者がどうしても感じてしまう「周りに迷惑をかけてしまって申し訳ない」という気持ちも軽減できるのかなとも思います。
バリアの解消のためには、全てが大掛かりな工事が必要だったりお金がかかるとは考えていません。例えば、“ここのテーブルの位置を少し変えたら車いすで動きやすい”とか、意外と簡単で良かったりすることもあるのです。バリアフリーの設備が逆に他の当事者にとってはバリアになることもあります。当事者によって、バリアの感じ方も違いますし、サポートの内容も違います。本人に聞けば、「なんだ、こんなことでいいんだ」と思うこともきっとあります。聞いてみないと分からないことって、車いす関係なく、誰にでも共通することだと思います。気にかけてくれる、一緒に考えてくれるというだけでもバリアの解消につながります。私たちも当事者側も無理難題を言うのではなくて、相手が今出来る範囲というのを考慮したうえで、一緒に考えてもらうという姿勢が大事かなと思います。
私は多くのサポートが必要な重度の障害がありますが、自分の体のことは自分が一番分かっています。その場所、その時の状況に合わせて、“こういうサポートをお願いしたい”と具体的に伝えていきたいと常に心がけています。

まちの中にある物理的なバリアを100%解消することは不可能です。車いすユーザーは、多くの不安を感じながら外出しております。ただし、「行ってみたい」という高いモチベーションや、訪れた先で出会える人の心などに触れることで、不安が安心や楽しさへ変わっていきます。
今回のイベントで、いくつかのバリアは、工夫によって超えることができることを、登壇者の活動事例を通して知ることができました。しかし、いきなり場や空気感をつくることは難しいと思います。まずは、当事者や関係者の皆さんと話すことからはじめることが、今、できることの第一歩だと思います。

◎主催:一般社団法人WheeLog

◎登壇者
一般社団法人WheeLog代表/CEO 
 織田友理子
理学療法士/株式会社ファイブスター代表、WheeLog運営委員
安西祐太
車椅子ユーザー/WheeLog運営委員
岩城一美
安田恭子
◎我がまち自慢者
ニコモビリティ代表/戸隠観光協会ユニバーサルツーリズム担当職員
田村達彦
市民活動団体act634府中メンバー
林 瑞恵
株式会社アイペック所属リハビリテーションサービスnagomi町田木曽西店施設長 
能勢 光
◎イベントイベント進行:WheeLog運営委員
荒井雅代
◎機器オペレーション:WheeLog運営委員
阿部学、鳥越勝、中田美生、渡辺多陽地、吉田雄一
◎報告レポート編集:荒井雅代


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