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日々、本に埋もれて救われて/読書ログ

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公私問わず、常に数冊を並行読みする日々です。読後のレビュー、作者さんへの想い、追いつきませんができるだけUPしていきます
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記事一覧

本と本に関わる人の想いの全て/密やかで凛とした情熱『ミュゲ書房』(伊藤調)

書架にある本との出会いは、文字通り出会いだと思う。ソフトカバーの手に馴染む柔らかな風合い…

「はじまり」はいつも切なく、暖かい【出会いと別れの季節に:春におすすめの絵本3選…

①『こねこのビスケット』野中 柊 作・網中いづる 絵/ポプラ社 夏に生まれた、こねこのビスケ…

寄る辺ない魂が寄り添い、愛を知る時/『えのないえほん』斉藤倫(作)・植田真(絵)

「だいすきな けものさん」 「あさやけや くもや もりや いずみや わたしの しらない …

一瞬を永遠に繋ぎ止める『ラヴァーズ・キス』/吉田秋生 ほか忘れられない少女漫画のご…

自分が目にすることの出来る世界も経験できることも当然ながら限りがある。物語はそれを補完し…

【中田いくみ関連作品】叙情といとしさ溢れる挿絵が伝える、子どもの「ほんとのきもち…

『やましたくんはしゃべらない』をきっかけに、中田いくみ先生の描くこどもたちに出会いました…

繋がり、重なることへの渇望/宇佐見りん『推し、燃ゆ』を読む

第164回芥川賞を受賞した本作。まさにトレンドの真っ只中の作品を直ぐに手に取ってみた。21歳…

女の子と賢さ、冒険と愛の話/『梨の子ペリーナ』イタリアのむかしばなし

酒井駒子さんの挿画が印象的で、発売とともに話題となっている『梨の子ペリーナ』イタリア語翻訳家の関口英子氏が、イタリアを代表する作家であり、全土をめぐって『イタリア民話集』を著したイタロ・カルヴィーノの再話から選び訳された物語です。 イタリア北部に位置する豊かな丘陵地帯につたわる昔話には、梨をはじめ、ブドウやりんごなどの果樹栽培が盛んだということ。中でも、このお話のモチーフとなっている「梨」は特産品であり、さまざまな調理法で古くから人々の食生活に欠かせないものだったそう。『ペ

忘れられていく死と、遺り続ける痛みについて/「かないくん」(谷川俊太郎・松本大洋…

「きょう、となりのかないくんがいない。」 からりと乾いてはおらず、どこか湿り気を感じさせ…

ゴフスタインとの想い出

M.B.ゴフスタインという作者の名前にピンとこなくても、子どもの頃、または読み聞かせで、『ブ…

冬時間にじっくりと触れたい3作品をセレクト。/表紙デザインの偶然の響き合い

①世に潜む「悪意」に、私たちはどう立ち向かうか。『冬のオペラ』北村薫/角川文庫 あなたの…

クリスマス、ドイツ、そして、ケストナー。【児童文学の巨匠がいまに残すこと】

私が最初に触れたケストナーの作品は『点子ちゃんとアントン』。物語に出てくる”コニャック”…

痛いほど、忘れ得ぬ青春小説。

パッチワークのように新旧のたいせつな作品達を並べながら、あの頃感じた痛みについて考える。…

『マルラゲットとオオカミ』子どもと動物の関係が、教えてくれる幸せと辛さ

先日、『マルラゲットとオオカミ』という翻訳絵本に大きな衝撃を受けました。1930年代にフラン…

“自分自身”であることの特別な力/『わたしはオオカミ』アビー・ワンバック(海と月社刊)

女でいるということは、見えない「壁」に阻まれ、違和感を覚えたり疑問を感じる機会が男性よりも多い、それが現実だ。 私自身、出産・子育てを通じ「妻」や「母」として生きていくようになってから、より強く、そのことに気づいていったように思う。 だからといって、それ以前、まったく何も感じなかったわけじゃない。 スカートをはくこと。髪型ひとつにも他人の視線への気づかいを要求されること。「かわいさ」「美しさ」年齢においても勝手にジャッジされること。「賢い」「仕事ができる」が陰口になるこ