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読書日記#18 すずめとQと賑やかな仲間たちのいる世界線で

11月◆日

土曜日の朝、昨日のことを思い出す。

心を動かされる。
そういうことがまだこの会社にある。

そんなことを考えさせられることがいくつも起きた1日だった。

いくら売り上げを立てたくても会社としての信頼を損なうことに広報は加担してはならない。PRパーソンの資質として、実は1番大切なことなんじゃないかと思う。

他部門からの要請でそういうことをさせられそうになって上司に相談。「そんな会社の品位を損なうような、お客さまを騙すようなことはすべきではないと私も思う」と理解してくれた。
一緒に戦ってくれる心強さ。前の会社で得られなかったもの。

そしてもうひとつは開発者インタビューのラストセッション。製造のメンバーが熱い。

「僕たちはこの製品を自社で組み立てていないからということで、ネガティブな印象を持たれたくない。その分、環境目標や品質を損なわない効率化などにチャレンジしていて、そのことに誇りを持って取り組んでいる。それが伝わるような対外的な発信をしてほしい」
というようなコメントをいただく。

及第点とればいいや、じゃなくてどこが自分たちの目指すラインかを見極めていつもきっちりやる人たち。そんなこと言われたら頑張るしかない。この熱量と想いをどうしたら届けるべき人に届けられるんだろう。

自分の無力さを思い知る失敗とかこれ意味あるの?みたいな仕事とか労力が無になるトラブルとか。
そんな、日常茶飯事の心折れそうな出来事があっても、コアの部分がまた私をとらえ続けている。

睡眠不足を解消できたすっきりした頭でジムへ向かう。電車で「あの子とQ」を読む。

実は吸血鬼だけどごく普通の女子高生のようにふるまう主人公が儀式を前にQというバケモノと出会い、そして思わぬトラブルに見舞われる話。

こういう話かな?という予測を超えてくる意外な展開に魅了される。
著者万城目学さんの作品はデビュー作「鴨川ホルモー」を大学生のころに読んで以来。どちらかというと日本の歴史をベースにトンデモ設定な作品をかいているイメージだったけれど、こういうのもイケるのか。高校生の時に読んでいたらより面白かっただろうなー。

鴨川ホルモーは面白いんだけどどうしても、謎の設定についていけない感があった。その後出た「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」は評判もよくてずっと読みたい本リスト入りしている。こうなってくるとこちらも読みたくなる。

ずっとピンと来ていなかった作家さんの本がハマった!って思う瞬間はすごく好き。

たとえば小川洋子さんなら、「博士の愛した数式」よりも、「猫を抱いて象と泳ぐ」よりも、「妊娠カレンダー」だし、川上未映子さんなら「ヘヴン」よりも「すべて真夜中の恋人たち」よりも断然「あこがれ」。

そんなことを考えていると心が宙を彷徨い始めてふわふわと飛んで行ってしまう。

ぼーっとした状態でジムに到着。上半身強化で二の腕のつらさから現実に引き戻される。背中の筋肉を感じられることが今日もうれしい。

帰宅後、自分のPCでやってみたかったことの一つとして、YouTubeでよく見ていたゲームプラットフォームSteamで「A Castle Full of Cats」を買ってプレイ。
Steamの仕組みがおもしろく、なるほど、こんなふうにライブラリとコミュニティが作られるんだと、ふむふむ。

200匹以上の猫をひたすらに発見するゲーム。実は昨日、レトルトさんがこれの前の作品を実況しているのをみて、ゲームは見る専門の私にしてはめずらしく自分でもやりたくなってしまった。

ほどよい難易度でギリギリ独力で見つけ出せるのと、とにかく猫たちがかわいくて、やめられないとまらない。

結局夜までかけて2時間ちょっとで全実績を解除してしまう。記憶を消してもう1回最初からやりたいくらい楽しかった。動物×もの探しゲームは私の嗜好にぴったりはまる。

11月★日

例によって起き上がれない、動けない朝の時間。
動けるようになるまで昨日みにいった「すずめの戸締まり」の何がよかったのか忘れないうちにメモしておく。

・「全体のために個を犠牲にすることを否定する」現代的な価値観を描きつつもしっかりとハッピーエンドにもっていくストーリーの見せ方(「天気の子」では不完全燃焼だった印象があった)
・新海作品の醍醐味、気候の変化に応じた自然のうつろいを繊細に描くことによる圧倒的なアニメーションの美しさ
・大長編でも中だるみしない緻密なプロット。(しいていえば育ての親であるおばさんの存在が少し冗長だったけど、そこで号泣しているから、結局してやられている)
・「常世の国」をはじめとする日本古来のモチーフの織り交ぜ方が絶妙。
・旅の途中で出会う人々と過ごす時間の1つ1つのディティールが楽しい。そこだけ取り出してきてもいとおしいシーンであふれている。
・ドライブシーンの懐メロ!とんぼ君風の青年、芹澤くん(にしか見えなくなってしまった)が「ルージュの伝言」を歌いだすところ最高。
・ラノベあるある「君と僕と世界の終わり」的世界観を用いながらも、そこに引っ張られすぎないのがちょうどよい。(何しろ彼はずっとおもちゃの椅子だし。)
・ラストに時事的な要素をもってくるのは急に現実とリンクして涙が止まらなくなるからずるい。
・いつもどおり野田洋次郎さんの作曲した音楽とアニメーションの調和が神がかっている。(特に「すずめ」「東京上空」が耳に残る)
・遠慮しあう家族のすれ違いの感じ、わかりみが深い。(過度にひどくしたり、きれいごとすぎたりしない感じにリアリティ)

長い。オタクみたいだ。
いや、そうなのかな。でもオタクほど知識がない。

もちろん、回収しきれてない伏線や説明不足な点などもいろいろあるんだけど、新海作品のこれまでの好きなところもぎゅぎゅっと詰まっているし、よくこの重層的なテーマを持つ作品を1つにまとめたなーと思った。
どこを切り抜いても素敵なアニメーションなので、DVDで細かいところ見直したい。なんならもう一度みにいきたいくらい。

先日読んだ「花鳥風月の科学」の解釈を応用する良い機会にもなった。

実は「すずめの戸締まり」の小説も買ってあるから読んでみようかな。書籍のほうの評価も高いので、どんな文章なのか気になる。

映画監督の方が書く小説は、印象的なシーンとセリフの描き方に、やはり映画的なものを感じる。
そのカテゴリーの小説(そんなカテゴリーはないけど)でイチオシは「永い言い訳」。これは小説がとっても良かったから、映画の方はまだ見れてないけれど。

朝は病院に立ち寄る。定期健診の結果。良くも悪くもなっていない。引き続き身体に火種を抱えている。

そのまま会社にいこうと思ったけれど、午後は晴れそうだったので傘を置きに家に帰る。大好きなセブンのブリトーとつくりおきのごぼうとベーコンの炒め物とゆで卵をランチに。ヘルシー!

午後は仕事へ。
友達のブログを音声コンテンツ化する話を昨日相談されたので、それをどう進めるかを電車の中で考える。本が読めない。
人の協力をする場合は、いかに仕組化しつつ、その人のやりたいことを最大限実現できて、しかも質があげられるか。
仕事ではないけれど、自分が趣味でやるのとは意味合いが変わる。

仕事はたんたんと終わり、夜はフードテック系のスタートアップを経営する前職の知人のもとへ。
移動中の電車ではPodcastの企画とこのあとの予定での参考に、「インタビュー術!」を読み始める。

取材とインタビューの違いについての言及が興味深い。もっとインタビューたくさんかいている時期に読むべきだった。その時は積読していたことを忘れていた。

知人とはこれからPRして事業を盛り上げていきたい、ということだったので、簡単にブレスト。私がリスペクトする先輩を紹介することにしてごはんを食べて近況報告して解散。

おもしろいことしている人がたくさんいて私の周りは賑やかでよい。

そしてひとまず、しばらくまだやりたいことをやって生きていけそう。安心するにはまだ早いけど。

帰ってきたら確定申告の本が届いていた。ぱらぱら読む。眠い。
やりたいことをやって生きていくためにやらなければいけないこともやらなければ。(ずーーん)

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