玉翠館HP_001

BGMのチカラ

ホタル観賞会

2019年も梅雨に入り、義父の別宅の近くで行われる「ホタル鑑賞会」への参加が微妙な雰囲気になってきた。雨がこのまま週末も降り続けば、今年はここでホタルを見られない。 この機会を楽しみにしてきた奥さんは不安げだ。ときどき窓から雨を降らせている曇天を眺めながら、「うー」とか「あー」とか言っている。檻の中にいる珍獣のようだ。

不安増幅

アイルランドのロック・バンド、U2の「#ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー(With or Without You)」が流れる部屋の中。切ないバラードに奥さんの不安な気持ちが増幅されているようだ。

実に気の毒な様子で、窓の外を向く後ろ姿はいかにも頼りない。ガゼボの「#雨音はショパンの調べ(原題:I Like Chopin)」を流すと、さらに不安が増すだろうか。BGMのチカラを検証したくなる。

ホタル観賞会については、奥さんほどでないにしても、それなりに期待してきたので雨天には出鼻を挫かれた感はある。ただ、奥さんがガッカリ感を肩代わりしてくれているので、そこまで不安にならない。

それに梅雨入りとはいえ、明日もずっと雨とは限らない。たとえ、ホタル観賞会が雨天中止になったとしても、静かな音楽を聴きながら、のんびり部屋の中で過ごす時間も決して悪くないと思っている。

膨らむ思い

静岡・大川温泉で行われるホタル鑑賞会は、ホタルが生息する地域を通る800mぐらいの坂道を提灯を持って歩くというイベントだ。18年の同じ時期に初めて参加した。

ホタルの光は周囲に目を凝らし、ようやく一つ見つかる程度。ただ提灯一つの暗い夜道で見られる小さな光は実に風情があり、そこに魅せられて今年も参加することになった。

「今年はホタルの光を撮りたい」という奥さん。夜や暗所のわずかな光の撮影に適したアプリをスマートフォンにダウンロードするなど、自分なりに準備を進めていたようだ。

いま部屋の中には英国のロックバンド、オアシス(Oasis)の「#ホワットエヴァー(whatever)」が終わり、「#ドント・ルック・バック・イン・アンガー(Don’t Look Back In Anger)」が流れている。ともに切ない感じの曲。

どうにかホタルの光が見られれば良いのだがー。この日のために準備を進めてきた奥さんの姿、窓の外を眺める背中を思い出し、そんな気持ちがさっきに比べて大きくなっている。

BGMにあてられたのは奥さんだけではないのかもしれない。

(写真〈上から順に〉:静岡・大川温泉の恒例行事「ホタル鑑賞会」=玉翠館HP、ホタルの光=予約プロプラス、U2の「#With or Without You」のジャケット=discogs.com、英国の伝説バンド・オアシス=洋楽ハック!)

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