渦になる

故障気味で何度もエラーを提示する洗濯機。世話を焼いたが、到頭うんともすんとも言わない。酒も煙草もやめて貯金が楽しくなってきた途端にこれだ、一人旅を企てていたところだったのに。中古なら少しは安く買えるだろうけれど、中古家具で揃えた築三十年超えの賃貸の狭い一部屋は、大して長く住んでいないのに何処となくセピア色をしている。まるで自分自身も使い古しの様だ。

地図アプリで調べると、コインランドリーは自転車で二十分。熱帯夜を往復することを考えて、萎えた身体を冷や汗が伝っていく。衛生観念を失うと人は容易に死に至るものだ。飲んだくれのヘビースモーカーだった親父は早々に亡くなり、見事な反面教師となった。服を、洗わなければ。

既に一昨日から溜まった洗濯物を適当な袋に詰め込み、自転車の前の籠に無造作に放り込んだ。十時を過ぎた静けさを蝉の音が裂いて、またそれをかき消す様なチェーンの回転音が鼓膜に届く。夏の匂いがする。辿り着いた店では二人ほどが椅子に腰掛けていて、イヤホンで音楽を聴いたり本を読んでいる。私も早速衣類を放り込み稼働させ、ポケットの中のイヤホンと携帯を取り出す。

ぐるぐるぐるぐる回っている。記憶の中でループしている。染みを探して泡立ってもう夢の中。

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