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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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2023年 最高の相棒に出逢えた歓び−音楽劇『ダ・ポンテ』プレビュー公演感想1/2 (第一幕)

はじめに

 大好きな海宝さんが、新作音楽劇に出るーー!!!題材は18世紀〜19世紀イタリア・オーストリアだけど、日本オリジナル=はじめから日本語で書かれた歌が聴けるー!!!
 ということで大変楽しみにしていたプレビュー公演。
 公演紹介を読むにつれて、え、プレイボーイ?の??詐欺師???を???海宝さんが??????
と、新世界(!)に期待は膨らみ、事前インタビューで垣間見える「新作ならではの」産みの苦しみエピソードに触れれば触れるほどドキドキが増し、歌唱披露の動画を何度もリピートしてはわくわくし。順調に不安を期待が宥めていき、6/23(金)にmy初日。
 
 どハマりして帰ってきました。

 私が毎年末密かにリスト化していた「今後観たい海宝さんのお芝居・場面・キャラクター特集」が片っ端から叶えてもらえた夢のような公演で、たった2時間50分で供給過多でぜーはーする勢いでした。
 引き続き一昨年に比べたらスケジュール調整難しい時期でしたが、いろいろ話して準備して、初見の二日後に静かにリピート観劇に向かってしまったほど。 
 
 ここからは、公演プログラムと舞台稽古ダイジェスト動画(これがまた大盤振る舞いに10分もある大作で、そうそうこの曲!!!と記憶の糸をたぐるのに重宝する)とをお供に、公演を振り返って反芻する備忘録です。無謀にも曲順に沿って振り返る。。。30曲超えで若干尻込みしてるけど(体力的に/苦笑)。。書けるかな、、書けるところまでとにかく書きたい。。。他の方の感想を読むのが大好きな一方、割と影響を受けやすいので、自分の感想を一通り書くまでは他の方のblogやふせったーを貪り読むの禁止ルールを課しており、書くまでは他所に読みに行けない。ので、とにかく早く書き上げたい。早く書いて早く「それだー!!」「確かにー!!!」をしに行きたい。

歴史もの=予習が要るか?問題

 公式以外の予習なしで観に行った組ですが、今回楽しむにあたっては予習全然要らない、と思いました。プログラムによれば、案の定フィクションにしたところも多々あるみたいだし、何らか聞き取りにくい重要語句が投入される話でもないし、登場人物もかなり絞られているので、「時代背景調べてなかったからついていけなかったー」みたいな現象はほぼ起きないんじゃないかなぁ、と。。。私の目からは。

このnoteは本編のあらすじ、演出に言及(=ネタバレ)します

 毎度ながら、この場面のここに泣いた、このシーンはうけた/ツボった、と具体的な台詞や演出に言及しながら反芻して書いていくので、これからご覧になる方で先入観を持ちたくない方は、以降はどうか読むのをお控えください。
 記憶を頼りに、なので、「そのシーンが出てくるのはもっと先だよ」とか、そこ台詞違うよ、とか少なからず出てくると思うので、そこはどうか心の中で突っ込んでください。。。

M1 この静かな夜に

 緞帳が開いた状態での客入り。
 舞台後方に一筋流れる流れ星に続いて、上手から上品な老紳士がゆっくりと登場。記憶の糸を手繰り寄せるような、かつて焦がれた何かを瞼の裏に蘇らせるような表情で、作品のテーマ曲となる「この静かな夜に」を繊細な美しい声で歌い上げ、客席の上にきらきら輝く美しい旋律を広げて去っていく。「ことば」「音楽」「火花」が降りてくる、という歌詞と(プログラム参照)、金色に煌めく音符やイタリア語(?)が背面に映し出されて幻想的。
 あぁ、こんなに美しい声を響かせるベテラン俳優さんがいたなんて知らなかった。。。ネタバレ防止にプログラムすら開かずに開演迎えちゃったけど、チラシに載ってたどの方だこれは。。高音がすごい。。この美しい柔らかさと澄んだ響き、まるで海宝さんみたいだな、、、ってまさか海宝さん本人?!!!!
 実はこれ晩年のダ・ポンテで、お髭を付けた海宝さん自らが演じているのだけど、きっちりネタバレ回避していた方なら高音部分聞くまで解らなかったんじゃなかろうか、って程見事な老紳士だった。十分な時を重ねていると確信させる声、立ち姿、足を運ぶ際にこわばって見える関節(独特の、かばうように足が付け根からしか動かせない様子とか)。これは次の場面で、だけど、笑うと歯が全部見えちゃう笑い方まですっかり老紳士そのものだった。

 私はというと、せっかくの新作だし!と全力でネタバレ回避に努め、Twitterも薄目、カテコ画像と公式以外すっ飛ばすようにしていたのに、まさかの開演30分前に海宝さんご自身のアカウントで「行ってきます(^-^)」と舞台袖に向かう老紳士姿の動画に触れてしまい、びっくりし損なった勢でした(泣き笑い)。。や、めちゃくちゃ素敵で、「あ、40年経ってもますます好きだわ私」と確信が深まるばかりだったのだけど、出来れば客席で「うそーこれ海宝さんじゃん?!!!」とびっくりしてみたかったなー。。。

M2 来たぞ、ニューヨーク

 アンサンブルさん達が明るく1820年代のニューヨークの街並みを表すナンバー。オペラのポスターを街中に貼って歩き、ビラ配りも試みるもののなかなかうまくいかず、妻の待つ本屋でも、熱弁しすぎて久しぶりのお客さんに逃げられてしまう老ダ・ポンテ(ちょっと『スマイル・セッション』の愛希さんゲスト回で降臨した「うみたから氏」を思い出した/笑)。女性にばっかり話しかけてたのが、なんか若い時の癖が残ってるのかなとか思いつつ(笑)、失敗する度に彼がさり気なく口にするのが「コジ・ファン・トゥッテ(女なんてみんなそんなもの/彼の作品のタイトルの一つ)」。
 妻のナンシーとの空気がとっても柔らかくてあたたかくて、あぁ、いい時間を重ねてきた夫婦なんだなぁ、とすぐに伝わる。刷り上がったばかりの回顧録に目を通した妻にせがまれて、モーツァルトとの日々を思い返すダ・ポンテ。
 背景の年号がページを捲るように巻き戻されていき、一気に40年遡り、上手からモーツァルト登場。

 権威に屈して自分の芸術を曲げるのなんかまっぴらごめんですー!!もう不本意な演奏にはぐったりですー!!が手に取るように伝わり、「やめまぁーーす!!」と叫んで退場しちゃう平間壮一さん(以降、敬意と親しみを込めて壮ちゃんさん)演じるモーツァルトが嫌味なくとっても可愛くて奔放。

 ウィーンの宮廷に場面移って、イタリアオペラ劇場設立を語るヨーゼフ2世(八十田勇一さん)と弟陛下、宮廷音楽チーム。
 相葉裕樹さん(以降、敬意と親しみを込めてばっちさん)演じるサリエリの衣装がめっっっっちゃくちゃ素敵で(コートもなんだけど、個人的大ヒットは中に着ていらしたベスト!!思わずオペラグラス発動)、お顔立ちの華やかさに負けない美しさ。宝塚じゃなくてもこんな華やかで美しい宮廷服や白髪鬘をすっと着こなせちゃう人っているんだぁ、、と、記念すべき初の生ばっちさんにビジュアル面でまずしみじみ。そして、陛下の言葉にやきもきそわそわするサリエリ先生の表情と声の明朗さに「あ、私好きですこのテイスト。。。!!」と早くも良い意味でつぼる。
 どこかにいいイタリア詩人はいないものか、でベーシックに上手に「ぽ」と光が当たり、青年ダ・ポンテ登場。

M3 思い出して、アンジョレッタ

 人妻と姦通した罪を問われて裁判(?)にかけられているダ・ポンテ。言葉巧みに無実を主張しながら、原告側の奥さんといちゃいちゃしながら「あの夜を思い出して」と歌うのがこの曲。1月にアテプリで爽やかにキザる海宝さんをバンバン浴びて、うわぁぁぁぁ!!!!!!とかっこよさに心の中でじたばたするのは経験済みだったけど、まさかそんな、艶かしい系直球(あの美しい手が色々這う/言い方/笑)の場面を観る日がこんなにすぐ来るとは!!!公演案内でそれなりに覚悟というか期待()はしてたけど、全然上回ってて、歌詞も振付もこれでもか!!ってくらいにこてこてに艶かしい系で(振付が際どいのにご本人の触り方が大胆じゃなく繊細なので余計動悸が触発される感じにやばかった)、2回観たうち2回とも心の中が大変だった。。。
 これダ・ポンテが奥様抱えて歌って踊ってる間周りはストップモーションなんだけど、後ろにいる諮問官(小原和彦さん)が手に持った板から二人を覗いているような姿勢=「見ちゃいけないものを見せられてるような気がするけどガン見〜」になってるせいで、「客席の我々と一緒(笑)」と親近感で腹筋が辛かった(笑)。
 次々現れる"ダ・ポンテ被害者の会"の皆様のテンポがめちゃくちゃ良く、笑いが起きまくる客席(笑)。追放され、文字通り場外に引き摺られていく姿が漫画みたいに往生際が悪くて(笑)、こういう海宝さんを舞台で観られるの待ってた〜!!!と楽しさにガッツポーズだった♪♪

M4 始めよう、本当の人生を

 冒頭の喧嘩別れその後のモーツァルトと父上。意に沿わぬ仕事はできない!と主張し、「アテはない、ツテもない」と歌うモーツァルト。この状況で「むしろ自由だー☆きっと(素敵な人に)出会えるー☆」ってスーパー前向き思考になれる楽天的で根アカなモーツァルトが眩しくて、ぴょんぴょん弾むリズムと心が夜空を踊っているような歌声がとってもしっくり来る。天真爛漫が可愛い赤と白の服着て舞っている、という感じ。このまっすぐ素直で裏のない純粋なモーツァルト像は、この作品通して最後までブレず、清々しく救いになる姿で、元々自分の中に蓄積されてたイメージと少し違う新鮮さから最初はちょっと意外だったものの、大好きになってしまった。

M5 コンスタンツェのプロポーズ

 僕お仕事辞めちゃったー!!でコンスタンツェのところに転がり込むモーツァルトを、「あなたと、あなたの音楽があればいい」と受け止めるコンスタンツェ。これまたコンスタンツェもモーツァルト同様、「あれ、なんか(他で)聞いてたイメージとだいぶ違うような?」という、「個性は強いけど全然毒々しくない」描かれ方。青野紗穂さんも私は初見だったけど、声に心地よい芯があって、セクシーさはありつつもくどくない(←大切)潔さを感じさせる役作りで、あ、この俳優さん好きになれそう!と嬉しい発見だった。
 食い気味に叫ぶ「その言葉(=プロポーズ)をずっと待ってたの〜〜(>▽<)!!」が可笑しくて、でもなんだか微笑ましくて、客席のあちこちからくすっという笑い。

M6 この静かな夜に

 追放され、鞄を手にひとり夜空の下を歩いていくダ・ポンテ。モーツァルトと同じく「アテはない、ツテもない」のだけど、「縛られるものがないってことは、自由ってことだよね☆わーい自由だ自由だーーー!!」と(←雰囲気であって、こういう台詞じゃないけど)ぴょんぴょこ明るく歌ってたモーツァルトとは対照的に、こちらは「この静かな夜に僕はひとり」、「崖に根を張る花のように」、「誰も知らない僕の心」と何やら表に出さない繊細な秘めたる部分を感じさせる静かな曲調で、星灯りが似合う。ダ・ポンテもなんだかんだ楽観的な人なんだろうけど(じゃなきゃあんな波乱万丈に自分から飛び込んでいかないよね…)、なんとなく根っこのところにあるトーンが、この作品に描かれるモーツァルトのそれとは違うんだなぁと。二幕でこの印象がどんどん強まる。  
 すぐに「や、僕の才能を理解できる人がきっといる!!」とめらめら燃える野心がほのかな星灯りをかき消し、一気に成り上がり作戦スタート。

M7 言葉の媚薬

 ダ・ポンテの操る言葉が、次々と金や人脈に形を変えて彼をウィーンの宮廷に導いていく過程を描く一曲。稽古場動画として公開されてたのはこれか〜〜!!とわくわく。調子に乗りまくり&自分の言葉の力を信じて疑わない驕り全開。
 この曲で描かれている彼の詩の才能は、もっぱら「身を立てるための手段」で、芸術が、とか、表現せずにはいられない、とかよりも圧倒的に「相手が望む言葉を与えて、金や人脈に変える作業」であり、「相手を思い通りに動かすための発語(賭けのシーンとかまさに)」なんだよね。渡り歩いてやる、僕を導いていけ、みたいな歌詞や、「言葉の媚薬」というタイトルにもあるように、他人をその気にさせるための「色」をつけた言葉。

 実際に言葉を選ぶセンスもとてもあったのだろうけど、お芝居から受けた印象だと、天賦の才100%というよりは、恐ろしく観察眼が鋭くて、どういう人がどんな言葉に惹き込まれるのか、どんな属性の人がどんなフレーズに弱いのかを物凄い吸収力で「学習」、すなわち観察と実験を繰り返すことで検証して確立していった、って感じに見えた。ダ・ポンテ本人は無意識だったのかもしれないけど。
 誰もが共通に持っている言葉なのに、組み合わせをデザインしてタイミングや演出を変えるだけで有り難がられ、金もツテも呼んでくるんだから、ダ・ポンテにとっては面白くてしょうがなかっただろうな。音楽がここだけ中東風な音階なのも、言葉を駆使した成り上がりを彼が錬金術みたいなもの、または練り上げられた秘薬みたいなものと捉えてたんじゃないかな、という印象を強めて面白かった。
 ちなみにここ、下手ブロックに途中でサラリと美しい指を添えた投げキッス(!!!!)やらウィンクやらが放り込まれていて、初見の時ちょうど射程範囲の座席でオペラグラス越しに直撃してうわぁぁぁぁぁでした。。。プレビュー公演だったしなんらか振付変わっちゃうかもしれないけど、とりあえず心の準備という名の期待を。。。アテプリでもきらきらキザってたけど、他の方角に向けてやってるのを横から見るだけでもどきどきするのに、まともにくらうと大変でした。

 上の段の舞台も使いながら、文字通り人から人へと渡り歩き、質素でぼろきれのようだったマントがきちんとした外套に変わり、目に見えてどんどん成り上がっていき。この描写をちょうど巻き戻すように二幕で転落、放浪していく演出がついていて、二回目観た時うわぁ、と辛かった。。

 ついにサリエリに会うところまで漕ぎ着けたダ・ポンテが、「先生と同じ北イタリアの出身です!」「私たちは同胞じゃないですか!」「同郷のよしみで(お願いしますよ)」という場面は特に、「この単語を並べりゃ動いてくれんだろ?」という打算が透けて見えるようで、「本当かどうかはどうでもいい」、懐に飛び込めさえすれば!というスタンスがよく伝わってくる。
 「ふむ、同胞ねぇ。。。」とサリエリ先生も流されてしまい(まぁ様子を見てみるか、だったのかな)、とうとうヨーゼフ2世に謁見するまでに。
 不安がるサリエリ先生達をよそに、オペラの脚本を任される。

M8 ヴィヴァ、イタリア!

 サリエリ先生からのオペラの手ほどきタイムで初めに歌われるのがこの曲。歌唱披露でも見どころとしてみんなに挙げられてたVIVA\(^o^)/!!!! 直訳すると「イタリア万歳!!」。
 イタリア語って素晴らしいよね、話すだけで音楽になるよね、讃えようイタリアの音楽〜〜〜♪♪という内容で、ただでさえ華やかでなんかライト多めにすら感じられるばっちさんがさらに発光して見え、「どうしようこういうキャラ大好きなんだけど!!!!似合いすぎるんだけど!!!!!!」ともう清々しく拝んでた。ぱぁぁぁぁぁぁと発光して明るい歌を始めるキャラ大好き。しかもなんか心地よい声量がある。声がまた明るい系のかっこよさ。 
 そんなサリエリ先生の後ろで、突然はじまったイタリア讃歌にややびっくりしながら「サ、サリエリ先生〜?」と声をかけてるダ・ポンテに気づき、2回目観劇でまたツボって苦しかった(笑)。「わぁ、、スイッチ入っちゃった。。いいや、僕はどんどん書きますね。」という感じで黙々と上手側のオルガン(?)机(?)で脚本を書いていくダ・ポンテ。
 愛はアモーレ♪をどんどんオペラ歌手が歌い上げていき、確かここでフェラレーゼも登場。
 
 サリエリ指南のもとで書き上げたダ・ポンテの処女公演の幕が降り、「近年稀にみるつまらなさ。。。」を繰り返しながら観客が去っていく。「君に曲を書くくらいなら、全ての指を切り落とす!!」ってダ・ポンテに言ってやりました〜と宮廷音楽チームと笑うサリエリ先生。

M9 共同作業は地獄の始まり

 「言われた通りに書いただけなのに!!僕の言葉がひとっつも残らないんじゃないかってくらいに差し替えられたのに!!失敗した途端に手のひら返しやがってーーー!!」と酒場で荒れるダ・ポンテ。「先生悪くない、先生、全っ然悪くない」と膝枕で泣くダ・ポンテの頭をぽんぽんする女将さん(鈴木結加里さん)の包容力と間が良かった。。。二幕でも夜遅くまでこの酒場で居残り執筆をするんだけど、さりげない台詞からも、ダ・ポンテを程よく気遣い支える空気が滲み出てて、先生良かったね、、、とその度に思った。
 
 オペラ作りの、というか、ひとりで完結できないジャンルにおける制作の苦労を、やけ酒でへべれけになったダ・ポンテと、同じくやけ酒中だったモーツァルトがそれぞれ愚痴り、意気投合する歌。せっかくのメロディ/言葉も、ダサい言葉/メロディが付いたら台無し!!と憤り、「難しくて弾けません!!」と悲鳴をあげるオケ、歌手の都合で増やされたり削られたりする台詞、終わらない見当違いのダメ出し、と列挙して、「自分についてこれない周り」や「理解せず注文をつけてくる外野」を呪う。
 回想として出てくるサリエリ先生が、先ほどのVIVA!!の明るく朗らかな美声と華やかさで「全部書き直しておいたぞ!!(^-^)」「順番にアリアを!!」って報告しにきたり提案したりする度に、前方でダ・ポンテがぐったり「えええ…!!!」「それじゃ単なる発表会です(げっそり)」ってツッコんでいくリズムも良くて面白くて、その悲哀がほんと今に通じる普遍的なジレンマで、悲しいやらおかしいやらで笑いまくってた。サリエリ先生と懇意のオペラ歌手からの注文だったか、別のシーンだったかで、「ふぁーっふぁっふぁっふぁっ」と高笑いしてたのが似合いすぎで面白くてツボって、そこ思い出すだけでも、なんかまだ元気が出る(笑)。
 
 この酒場でモーツァルトと出会い、以降ここが二人のアトリエというか作戦会議の場所になる。

M10 何かが始まる 何かが生まれる

 「僕と組まないか?!」と差し出されたダ・ポンテの手をガシッと掴み、「乗った!!!」と叫ぶモーツァルト。折角書くなら好きな題材で!!と上演禁止中のフィガロの結婚を提案し、酒場のみんなが囲む中であらすじを説明。
 平民が貴族に、女が男をとっちめる逆転劇なんだ!!という提案に、面白そう!!と湧き、「革命でも起こすつもりですか?!」という言葉にきらり、と瞳が輝く。ここのダ・ポンテ海宝さんの「きらっ」と輝く瞳と挑戦的な表情がまたとっても良くて、思わず釣られてこっちも口がむひむひにやけてしまった♪

M11 恋とはどんなものかしら

 「できたよ!」とダ・ポンテの脚本に音楽を提供するモーツァルト。この、最初の一節を聞いたときの海宝さんのお芝居が!!!!!!!!!!台詞はとっても絞ってあるんだけど、手に取るように、それこそ音楽が流れて自然と耳に入るようにダ・ポンテの興奮と歓びとが伝わってきて、一緒にもらい泣きだった。。
 "なんて美しいメロディだろう、こんな繊細に輝くような旋律をこんなにピッタリ考えつくなんて。。。これこそ僕が表現したかったことだ!!彼には僕の頭の中に描いていることが「ちゃんと」伝わる!!"という、旋律の美しさや「伝わったこと」自体に対する興奮はもちろん、ダ・ポンテ自身の、過去の記憶の美しい部分が鮮やかに呼び覚まされて、そこにも心動かされた
んじゃないかなぁ。。。
 この場面、決して大袈裟に咽び泣くとかじゃなく、静かに海宝さんが溢れる涙を手で拭いながらしっかり台詞もお芝居も流れを止めず乱さずに続けていくところは流石プロ(泣いてお芝居止めちゃう人が私本当に無理なんです。。プロでもいるよねなんかこう感極まっちゃう系の…悪いとは言わないけど、台詞飛んだり流れ止めたりするレベルになると「頼む、戻ってくれ…!」ってなるので、海宝さんのいつだって失われない冷静さと表現の両立が本当に大好き)。
 ここ、壮ちゃんさんモーツァルトが「え、ちょっと違うなら違うってちゃんと言って、って…え?」とダ・ポンテのリアクションが予想以上でびっくり、という場面でもあるのだけど、まともに海宝さんと目を合わせた壮ちゃんさんが引き込まれて、つられてもらい泣きしそうになっちゃってるのもリアルでとっても好きだった。そんな、そんなにピッタリだったの?!そんなに気に入ったの?!!!っていうのが。。。ダ・ポンテと対照的に、拍手よりも自分の表現、飯の種よりも自分の音楽、な比重で描かれている今回のモーツァルトだけど、やっぱりこんだけ自分の作品で喜んでくれたら嬉しいよねぇ。。
 互いにインスピレーションを与え合い、どんどん進む制作。
 

M12 あなたの詩を聞かせて

 ダ・ポンテの生い立ちや家族についてモーツァルトが訪ね、ここで初めて語られ始めるダ・ポンテの過去。貧しい職人の家に生まれ、母を早くに亡くし、14歳の時に父が連れてきた4歳上の後妻オルスラと出会う。結婚と同時にカトリックに一家で改宗し(確かオルスラがカトリックだったから、ユダヤ教徒だったダ・ポンテの父は改宗しないと結婚できない)、カトリックの神学校に入るダ・ポンテ。
 「屋根裏部屋で見つけたあなたの詩、とっても素敵」とオルスラに(おそらくは)こっそり書いていた作品を褒められ、毎日が辛くても、あなたの目を通してみた世界の美しさが救いになる、的に言われる。朝露のように清らかなオルスラに笑顔で告げられる、「あなたと会えて良かった」。

 野暮だと分かっていても初見からずっと気になってしまってたのが「なんでオルスラは詩が読めたんだろう」で、当時の識字率、特にカトリック圏の女性の識字率を考えると「オルスラは没落貴族の娘で、ギリギリ読み書きだけは習ってたのかな?え、でも富豪でもないのに職人のお父さんと結婚できる、、のか?」とか「修道院に預けられてたとか??」とか色々考えてしまった。「貧しくて、なかなか結婚できなくて。。。あなたのお父様に感謝しなくちゃね」という台詞があったし、持参金用意できなくてお嫁に出してもらえなかったってことだよね(確かルネッサンス終わってもかなり長い間イタリア含むあのエリアって嫁側の持参金がないと結婚無理だったはず)。
 元々センスはあったんだろうけど、最初に詩を褒めてくれたのが初恋の人だった、ってところに意味があるのかもなので、オルスラが読めないと話が進まないし、口に出して語る言葉じゃなく「心ひそかに書いていた詩」を認めてもらえたってところが肝なのだろうから、深追いしちゃだめだ〜と思い、とりあえず「よくわからんが読み書きだけは習わせてもらえた信心深い娘だった」と割り切って観ることに。
 田村芽実さんのオルスラの、純粋そうな姿と清らかな透明感がまたとっても良くて、あぁ、これはダ・ポンテじゃなくても惚れる…と説得力大だった。振れ幅が広い役者さん大好きなので、「え、冒頭のナンシーと一緒?!」と終演後に気づいて、すごーーーー!!!と快い驚きと興奮。

M13 最高の相棒

 ヨーゼフ2世に直談判して上演許可を賜った『フィガロの結婚』が、「まるで嵐みたいな」拍手を得て大成功のもと初日の幕を下ろす。あれ、当時って作曲者本人が指揮振らなくていいんだっけか??と若干気になりつつも、音楽を聞いてると手が動いちゃう姿がリアルなモーツァルトと、固唾を飲んで観客のリアクションを見守っていたダ・ポンテが、二人一緒に拍手の大雨に幸せそうにずぶ濡れになる姿に、観ているこちらも胸がいっぱいで一緒に涙x2だった。。

 やった!!とうとう認められた!!認めさせてやった!!!!やっぱり良いものは良いんだ!!!!!!!という興奮。
 「君の音楽を聴いていると言葉がどんどん降りてくる」「君の書いた言葉を読んでいると、音楽がどんどん降りてくる」!!「この静かな夜に」にある歌詞(プログラム参照)の一部と重なる台詞が確かここで語られ、「翼もがれて」とM9で嘆いていた二人が「翼広げて」「作ろう、未来を!!」と歌う曲。

 祝いの酒で酩酊したダ・ポンテがふらふら歩く帰り道、酔い潰れてオルスラの出る悪夢にうなされる。「ロレンツォ、私たち地獄に堕ちるわ!」。ここで一幕終わり。
 初見で「えええええ唐突な?!!!」でちょっとびっくりだったけど、まぁ「ダ・ポンテにはまだ語っていない苦しい過去があったのです」「どんなに勝利しても彼を縛る辛さは続いていたのです」「ここからどうなるの」にするにはここで切るのがベストだったのか、、、と思いながら休憩へ。一方で、「やっぱり…14歳の時にあんな素敵な同世代の女の子がうちに来たら、いくら神学校行ったってそうなるよね…」と、ずーんと色々想像し。


 まさかの長さになったので、一旦ここで切ります。
 
 大切なお時間でここまで読んでくださった方、ありがとうございました!!
 てにをははこれからちょっとずつ直していきます。。。 

参考にしたもの

公演プログラム
ゲネプロ動画

https://m.youtube.com/watch?v=O1KU8mDxvgk

アルテス 電子版 ロレンツォ・ダ・ポンテ『回想録』訳●西本晃二
http://magazine.artespublishing.com/web/ロレンツォ・ダ・ポンテ『回想録』

https://m.youtube.com/watch?v=Ljr7mjtScpc


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