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「南風・四月号」を読む。

「南風・四月号」より、好きな句、気になる句。
(句順は掲載順、*=特に好きな句)


村上主宰「道の果」十句より

初晴や灯台を置く道の果*

読初めのすこし戻りてさらふ節

初旅や海を厚しと思ひつつ

同じ靴のひと冬雨に電車待つ

救急車枯木総立ちして通す


津川顧問「小舟」十句より

息継ぎの息も一音枇杷の花*

ほほゑみてマスクの跡を深くせり

初稽古せむと眼鏡を外しけり

灰汁掬ふ杓のゆき来や春隣

浮島につなぐ小舟や日脚伸ぶ


「雪月集」より(敬称略)

恋猫のけものに還る眼の光     井手千二

新しきショールこの色落着かぬ   西野晴子

雪だるまに突き刺してある林檎飴  藤川喜子

ストーブを離れ一気に書く手紙   阪本道子

低い木だつたのね落葉し尽くして  池之小町

山茶花や麻酔ゆつくりほどけゆく  石川恭子

吊るされし外套のやや前屈み*   田村紀子

新玉のマンガ列車が来て止まる   間島律水

総菜の割引シール日脚伸ぶ     前田照子

玄関のはるかと思ふ炬燵かな    樋口千惠子

九十のはじめて屠蘇に酔ひにけり  河田陽子

舞ひ終へて真顔の覗く獅子の口   𠮷村冨恵

釣初めの夫の釣果を煮て焼いて   西浦佳苗

元朝の木食仏とわつはつは     赤川雅彦

煮大根の二日目が好き色がすき*  小野義倫

茶柱のうつむいて立つ日向ぼこ   帯谷麗加

裏返す切干大根雲移る       古谷 静

風花と教えて授業再開す      新治 功

春風にフラミンゴてふ花抱へ*   杉本康子


「風花集」より(敬省略)

夜をそよぐ蕪の一葉となりてゐる*  若林哲哉

掛くるときコートの裾の雪散りぬ*  若林哲哉

背に雪白鳥眠りより覚むる*     岡原美智子

師の横に畏まりつつ初電車      岡辺明代

シャッター街膝の高さを寒鴉とび   桑原規之

農人を五人略して枯野画家      和泉澄雄

道連れの破魔矢の鈴にせかさるる   石井朋子

手袋のオオカミ役の子と帰る*    今泉礼奈

狛犬の阿にも吽にも初鴉       日野久子

自転車の錆の声する冬銀河      東 尚道

水餅をしづかに沈め消す灯り     武藤万喜子

年詰る机の上のくわりんたう     原 隆三郎

がりがりと日向に音の寒鴉      板倉ケンタ

冬の芝闇となるまで歩みゐる*    板倉ケンタ

競りに出す子牛にブラシ梅開く    郡山文惠

初氷舐めてひらひら猫の舌      上田和子

沼氷る朽ちし小枝を咬しまま     近常倫子

七草の三つまで見つけ野に摘めり   只木 都

福寿草にぎやかに笑む母おもふ    森下尚子


「南風集」より(敬省略)

葉の揺れて冬日の鳥になるところ*  菅井香永

作らねば出てこぬ夕餉冬の鵙*    市原みお

湯こぼせば畳が吸ひぬ寒椿      上田圭子

雪達磨だった塊とおり過ぎ*     五月ふみ

ひとり居の蜜柑羊羹トカトントン*  影山 恵

待春の役目終はりし付箋かな     ばんかおり

芙蓉の実寒九の風の過ぎて揺る    延平昌弥

ふるさとに近づく転居冬の虹     堤 あこ

白鳥とネオン浮きたる堀の水     岩本玲子

カーテンをはづして大き春の窓    梅田実代

七種に足らねど刻む音弾む      笹原郁子

差しのべる手に風花の添ひてきし   佐々木依子

弟と名も似てをらずおでん酒     磐田 小

人に落葉に溜まり場といふところ   山本こうし

千年の湧水春のみづとなる      片山 孟

母ひとり氷柱の囲む家に住み     岡田雅喜

朝礼の列の最後に雪達磨       小田毬藻

蕊残し崩れゆく花寒の内       毛利純子

淑気満つ大根抜きし穴の列      島田テルヨ

雪山の一筋の煙父の窯        河田さよ子

ストーブに焚べし林檎の木のにほひ  吉川祥子


「摘星集・兼題、桜貝」から

桜貝あの制服の子はわたし    市原みお

桜貝ストロボに白昼夢焚く    菅井香永

さくら貝厚き手の平さしださる  五月ふみ

球児らの足あと深し桜貝     堤 あこ

桜貝一滴の海残りけり*     ばんかおり

 

     ・・・・・

卯月紫乃 載せていただいた句

「南風集」
裸木の雪蹴散らして鳥遊ぶ
雑煮椀ミニカー横に並びをり
どよめきの渦つぎつぎとどんど焼
すみれ縫ふ糸を選びて日脚伸ぶ

「摘星集・桜貝」
引き波の泡より生まれ桜貝

※原句 引き波の泡に生まるる桜貝
 村上主宰より「より端的に」、とのコメント。


     ・・・・・

「雪月集」の御句はなんて自然なのだろう、といつも思います。日々を生活し、普通に生きていることから生じる句、なのであります。
(「雪月集」は題名のある五句連作でありますので、そのうちの一句を載せること、少し気になりつつです)


先月終わり、私は、板倉ケンタさんの記事👇に、私は正直打ちのめされました。
変わりたい、とも思いました。
その旨を村上主宰に伝えたところ、主宰からは「ひびいてきたところは、じっくりとご自分に取り入れて、糧にしてください」とのお言葉を。

恐らく、すでに、少しずつ変化してきている自分を感じています。ただし、それが、詠む句に現れているかどうかは、まだわかりません。少しずつ、失敗を繰り返しつつであります。


ちなみに、ケンタさんのこちらの記事は、

はたから見れば逆張りの激イタかもわからないが、ここまでやれば句会で点が集まってしまうこともグッと減るように思う。句会で点を集めたい人は実践しないことを強くお勧めする。

「ハイクノミカタ」記事より抜粋

とのことですので、要注意です(笑)


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