映像研には手を出すな!/1話/私の考察

今期からNHKで放送が開始された、アニメ『映像研には手を出すな!』

本作品は、大童澄瞳氏のマンガ『映像研には手を出すな!』を元にして、『マインド・ゲーム』や『四畳半神話大全』などの作品を手がけた 湯浅政明監督 によって監修されたアニメである。

アニメの方は、NHK総合テレビで深夜24:10 〜 放送されているのでそちらの方を見て頂きたい。

今回私が、『映像研には手を出すな!』(以後 映像研)の1話を見て、このアニメの新しさや感想について、一人の視聴者として考察していく。あくまで、一人の視聴者の考察として、読んでほしい。

アニメ版映像研の最も特徴的なところは、アニメの演出において、2次元と3次元を行ったり来たりしている点にある。少し難しい言い方をしたが、要するに、2次元とは奥行きのない絵であり、3次元とは、3Dアニメーションなどで見られる奥行きが変化する絵である。映像研では、この2次元と3次元の絵が、1つの話の中で頻繁に切り替えられるのだ。

まず、この切り替えの多さに私は、驚いた。普通のアニメなら、3次元で表現した方が効率的なシーンを中心にこの手法が用いられるが、映像研は、表現方法として2次元と3次元の手法を切り替えている点が、新しいのだ。

しかし、2次元の絵の中に、3次元の絵を挿入する手法だけなら、他のアニメ作品でも、同様の手法が用いられているシーンを見ることができる。それだけなら、アニメ版映像研は、少し特徴のあるアニメで止まっていたかもしれない。でも、更にアニメ版映像研を革新的な作品にしているのは、本作品の中で、2次元と3次元が1つのシーンの中で混在させられている点にある。

どういうことかというと、浅草氏(主人公)が、脳内で描く冒険のシーンで、最初は2次元だった絵が、カメラワークと共に3次元に変化し、2次元の質感を持ったまま3次元の空間構成が行われているのだ。この手法は、浅草氏が高校生になって、アニメをイメージする際は、もう少しディテールや色彩を書き込まれた上で再度登場する。この映像体験は、今までのアニメにはないものだったのではないだろうか。

この2次元と3次元を混在させる手法によって、「絵が動く」というアニメーションの根源が浮かび上がってくる。これは、アニメーションを制作している人々が、頭の中で思い描いているイメージを、的確に表現している。そして、このシーンは、アニメを制作している素人から玄人まで、大体の人が納得できるイメージだろう。

これは、手描きと3Dアニメーションが混在する日本のアニメ業界をうまく読み取った手法であり、その中間点を見事に描き出している。

そして、アニメ版映像研では、画風だけでなく、パースの取り方、カメラワークなどアニメを構成している多くの要素に対して、同様のコンセプトのもとで制作がなされている。

この2次元と3次元を混在させる手法が、アニメ版映像研の基礎を作っているのだ。

アニメ版映像研はアニメ制作内の1つのテーマである、リアリティの重心の置き所を意図的に演出することに成功している。これは、私が日頃、用いている「仮想」と「現実」の考え方からすると、設定としては「現実」の延長線上にありながら、演出の手法として、「仮想」と「現実」が混在する。

こうして、もう一度映像研を見てみると、このアニメの面白さが見えてくるのではないだろうか。

アニメというリアリティを完成されつつある世界で、リアリティの破壊を行い、再構築させたアニメ版映像研は、新たなアニメの可能性を提示した、素晴らしい作品だと断言できる。

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