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なぜ勉強しなければいけないのか?プロ家庭教師が真剣に考えてみた結論。

こんばんは、家庭教師の佐野湧樹です。

私は中学生になった時、親からこう言われました。

「うちには継がせてやれるものが無い。俺は公務員だから仕事を継がせてやれない。会社をやっているわけではないし、畑も家畜もない。だから湧樹は大人になったら自分の力で飯を食っていきなさい。」

その時に私は、

あぁそうか。自分にはまだ何にも無いんだ。とりあえず勉強頑張れば良いのかな?

と思いました。この場面は今でもよく覚えていて、急に頭の中が冷やされて、何も用意されていない将来に漠然とした不安を感じました。とはいえ次の瞬間には、

待てよ?継ぐものがないということは、ある意味自由なんだな。何しても止められないわけだ。何か思いついたら一発やってやろう。

と思っていたわけですが。

ともあれこの時に私は勉強に対して、何と無くやらされるものから、自分の将来のために頑張らないといけないもの、と思うようになりました。とはいえそこから毎日しっかり頑張ったというわけではないのですが。でも少なくとも、勉強に対する認識は変わりました。

今日のテーマは、

『なぜ勉強しなければいけないのか?』

です。誰でも一度は思ったことがあるでしょう。そう思った理由は、勉強したくないな〜という発想ではありませんでしたか?

私自身もなんで勉強しないといけないの?と思ったことはありますし、家庭教師になってからは生徒から聞かれるようになりました。

とはいえ私自身は、嫌いでも勉強は当たり前にするものだと思っていましたし、テストや受験のために頑張るのが当然だと思っていました。

しかし生徒に「勉強は当たり前に頑張るもんだ」とは言いません。というか真正面から聞く必要はあまり無くて、雑談ネタの一つのように考えてコミュニケーションを取るのがちょうど良いです。

勉強を頑張って得られるものは何だろう?

あなたにとって、勉強を頑張って得られるもの、もしくは得られたものは何でしたか?

高校や大学受験での合格、親の期待に応えた、ご褒美に欲しいものを買ってもらえた、資格取得、なりたいものになる…色々あるでしょう。

そう、勉強を頑張って得られる(と期待している)ものは一人一人違うのです。だから、あなたに目標や夢があって、そのために勉強が必要だと思うなら、必要なだけの勉強をすれば良いのです。あなたが勉強を頑張る理由は、それだけです。

私は家庭教師として、勉強や受験というよりはあなたの目標や夢と向き合っているつもりです。その目標や夢を叶えるために、多かれ少なかれ勉強が必要であり、一緒に頑張っている。このように思っています。

なぜ大人は勉強を頑張らせるのか?

日本には義務教育があります。親も基本的には「勉強しなさい」と言うでしょう。なぜ大人は子どもに、勉強をさせたがるのでしょう?

私が半年考えて出した結論は、

「国民が平均的にそれなりに賢くなってくれないと日本全体が困ったことになるから」

です。

次のような国を想像してみてください。

『あなたの家の周りには広大な畑が広がっていて、毎年たくさんの食料を収穫できる。災害も無く天候も安定している。食べるものには困らず、どうしても足りないものは収穫物の一部を誰かと交換すれば良い。』

それか、こんな国はどうでしょう。

『世界中の人が欲しがる資源が眠った山(海でも良い)がいくつもあり、それを掘りさえすればいくらでもお金が手に入る。しかもその資源は今後数百年は尽きないと言われている。』

こんな国に暮らしていれば、勉強に重要性を感じる人は限られるでしょう。勉強するより手っ取り早く、安定したそれなりの額の収入を得られるからです。私たちが住む日本に、災害の無い広大な畑や、資源が眠った山はありますか?

どちらもありません。それがあった時代もありましたが今はありませんし、現在残ってるものは日本の人口を十分にカバーするには程遠い。

少し話は変わりますが、日本国内で1年間に作り出される付加価値のことをGDPと言います。あなたが50円で仕入れたお菓子を100円で売ったら50円の利益があります。日本中で生まれるそういう利益を、1年分全部足したものがGDPです。

つまり、日本という国は何で稼いでいるんだろう?という話です。調べてみると、畑を耕したり資源を掘り出すような仕事(第一次産業と言います)で生み出されるGDPは1.0%と、ごくわずかです。GDPのほとんどを占めているのは、第二次産業と第三次産業です。第二次産業は、機械や車を作るなどの製造業や建設業など、そして第三次産業は一次や二次に含まれない産業です。ちなみに、第二次産業のシェアは26.1%。第三次産業のシェアは72.9%です。日本の稼ぎのうち7割近くは、第三次産業なのです。

このデータは、内閣府から出ている「2021年度(令和3年度)国民経済計算年次推計 (フロー編) ポイント」の中の「令和3暦年の経済活動別(産業別)のGDP構成比(名目)」という項目で確認できます。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/2021/sankou/pdf/point_flow20221223.pdf

第三次産業は、基本的に頭脳労働です。形の無いものが多く含まれ、頭を使って何らかのサービスを生み出そうとするものです。日本のGDPの構成がこのようになっているなら、必然的に国民が平均的にある程度の賢さを保つ必要があるのです。

これは日本全体で見た大きな話でしたが、そのままあなた自身に直結する話でもあります。

日本国民がどんな職業に就いているのか調べてみると、第一次産業にあたる農林漁業は199万人で3.0%、第二次産業に当たる建設・採掘は276万人で4.1%です。それ以外は第三次産業に当たりますから、日本国民の92.9%は少なからず頭脳労働を要する第三次産業についていることになります。

このデータは、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「職業別就業者数(男女計、就業者数計=6,723万人、2022年平均)」という項目で確認できます。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/chart/html/g0006.html

さらに、働き方でも見てみます。働き方は大きく分けて、自分で何らかの商売をする自営業者と企業や自治体に雇われて働く雇用者に分類することができます。2023年4月の労働力人口は6930万人です。そのうち自営業主・家族従業者は652万人で9.4%。雇用者は6057万人で87.4%です。残りは失業者等です。このデータは、総務省統計局の「労働力調査 (基本集計)  2023年(令和5年)4月分」で確認できます。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

つまり、日本国民の9割近くは自分で何かを作って売っているわけではないのです。作ったものは自分のものではなく、企業のものだからです。

作ったものは自分のものにならず、雇用者という立場は自分の子どもに継がせられるものではありません。

もしこのような国に住む国民が、勉強なんかいらねー!と言い出して放棄したら、どうなるでしょうか?

私は、そんな未来は来てほしくないなと思っています。

教育は制度なので、なぜ勉強が必要なのか?一人一人にその答えは与えてくれません。あなたがどのくらい賢くなるか?それはあなた自身や親に任されています。あなたが学校で学んだことをどう活かすかも、自由です。でも、日本の現在の仕組みや世界の中での立場を考えれば、それなりに賢くなってから社会に出てもらわないと困る、ということなのだと思います。

教育や勉強は、何も持たない者に対して、社会に出て生きていけるだけの最低限の責任と知恵を身につけさせるものとも言えます。万能ではないかもしれませんが、とりあえず全員に与えられるのだから、大なり小なり誰でも生きるための武器を手に入れられる可能性はあるのです。

いわゆる教育を受けた人と、そうでない人が多い国のそれぞれの違いを調べても、きっと色々とわかるでしょう。

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